うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

20年の完全独走

仮面ライダークウガ

episode.1「復活」

(監督:石田秀範 脚本:荒川稔久

 

冒頭、謎の怪人たち相手に、体色を変えながら一人で立ち向かう戦士のビジョンでスタート。

ビジョンの中で戦士は役目を終えたのか、自ら棺の中に入り封印されたような描写。

 

「こんなものが、まさか日本に出るとはなぁ…」

長野県・九郎ヶ岳遺跡で発見されたまるでエジプトのミイラのような発掘物。

「先生、これ、勝手に触ったら呪うぞ、とか書いてないですよね?」

「もう触っちゃったよ、くだらんこと言ってないで、手動かせ」

そう言った矢先に、ミイラの手がピクリと動きます…。

 

その頃、夕方の新東京国際空港にて、一人の青年が泣いている少年に声を掛けていました。

「ちなみにだけど俺さ、辛い時笑顔でいられる男って、カッコイイなって思ってる」

8歳の時のネパールでの経験を引き合いに出し、少年を泣き止ませようとする青年・五代雄介は実力行使とジャグリングで少年の笑顔を取り戻します。

リアルタイム当時は違和感なく見ていた光景ですが、今見るとバリバリ不審者ですね。

子どもとはぐれていた両親が駆けつけ、無事お礼を言われ別れる辺りは、本作の特徴を暗示しているようにも感じます。

 

夜中の東京・城南大学考古学研究室では、沢渡桜子が九郎ヶ岳遺跡から発掘された棺に記載されてあった文字を解読しておりました。

その背後に、窓から侵入してきた謎の影が迫るのですが…

「久しぶりで言いたくないけど、窓から来ないで五代君」

スキル:不法侵入を、しっかりと見破られていた五代だったのです。

桜子さんがちょうどジャーナリストのマコトなる人物と、呪いについての電話をしていたため、雰囲気を読み取った五代と、そのマイペースさと不法侵入を受け入れている桜子さんの関係性がすんなりと入ってきて良いシーンです。

 

呪いを否定していた桜子さんですが、解析された幅からは"死、警告"といったメッセージが出ます。

それを調査団に報告しようとしますが電話は繋がらず、五代は九郎ヶ岳に急ぎ向かいます。

その途中で、五代は謎の稲妻を目撃。

調査団を襲った謎の天パーが、大地から何者かを蘇らせます…。

この場面はやたら古典的なシーンに見えましたが、"悪の復活"を描くには必要だったという判断なのでしょうか。

 

翌朝、遺跡入口で謎の破壊痕跡を調査する長野県警

そしてそこに、グラサンをかけ臨場する刑事・一条薫。

現場に着いた五代は、死の警告のことを伝えるのですが、名を聞かれ、"夢を追う男"と書かれた名刺を渡します。

「亀山(県警の若い警察官)、この方をパトカーまで」

そりゃそうだ。

しかし「あーあれはなんだー」と警察官の注意を逸らした五代は、遺跡に侵入しようとするのですが、一条に阻まれ、1999の特技の一つ・不法侵入を早速封じられてしまいます。

ここで後ろにいる人のリアクションを見せるような演出は、石田監督の味が出てて好きな部分です。

 

公務執行妨害で逮捕するぞ!!」

初回から、逮捕の危機に見舞われた五代は大人しく引き下がるのですが、運び込まれる出土品を見たことにより、戦士のビジョンを見ることに。

 

遅れて到着した桜子さんと合流した五代は、タイミング良く現れた一条と再会し、遺跡で起こったことが収められたビデオテープを鑑賞。

そこには、謎の天パーによって襲われる調査団が写されており、その衝撃映像に2人は絶句。

関係者とはいえ、一般人に何を見せてるんだ。

 

「あの謎の影の正体は不明です。しかし、やつは最後にまるで誇示するかのように、ベルト状の装飾品を叩きつけた。それが私には、漠然と気になるんです。」

本来、手続きが必要な証拠品の鑑定依頼を事後報告で済ませようとする一条さんは事件が起きたことにより、そのベルト状の装飾品を桜子さんに預けます。

 

一条さんに伝わった事件は南長野で発生しており、そこには巨大なクモの巣が張られていました。

そこから現れるクモのような怪人。

銃弾の効かないクモ怪人・グムンは駆けつけた警察官を蹂躙し、パトカーで逃げようとした警察官の首に糸を巻き付けしつこく追跡します。

グムンに襲われた警官は流血・目を開けて倒れているなどやはり死亡シーンが印象的。

先程調査団全員が亡くなったことも明言されていた場面から見ても、"死"という要素に向き合う本作の方向性が見て取れます。

 

ベルトを預けられ、そこに書いてある文字を解読しようと警察署を出ようとした五代たちの前に、警察署に突っ込んでくるパトカー。

ドアが開き、降りてきたのは警察官ではなくグムン。

ドア下部だけを写し、足が降りてきたと思ったら四足歩行の都合で、手が先に来てその後足が降りてくるという見せ方が、人間とは違う怪人が登場したと思わせる演出として秀逸。

余談ですが、さっきの南長野でのシーンと合わせてJAC(現JAE)のアクションスタッフが身体を張っております。

大林勝、伊藤慎、横山一敏、富永研司(敬称略)は確認できました。

 

グムンの登場に反応したのか、ベルトからまた戦士のビジョンを見た五代は、警察官を襲うグムンに対してベルトを腰に回そうとするのですが、なんとベルトは、五代の身体の中に吸い込まれてしまいます。

服は破れ、火傷のように真っ赤になった腹部に苦痛の声を上げる五代に、追い討ちをかけるようにグムンの猛攻が迫ります。

五代を襲うグムンの容赦なさと、演じるオダギリ氏の演技が相まって、大変、真に迫った場面です。

「やられる…このままじゃ……死ぬ…!!

死を間近に感じた五代は、グムンに左拳を当てたことによって左腕が変化。

「ハァハァ……変わった…!?うわぁ!!!」

更に殴り、蹴りを連続で叩き込むことによって、ついに全身が変化。

五代はビジョンで見た戦士…ではなく、白くどこか弱々しい戦士の姿に変わります。

 

変化した自らの姿に戸惑いながらも、力を得た五代はグムンに立ち向かいます。

しかし、戦闘経験の不足からかグムンに終始押され気味の白五代。

ビルの屋上に飛び移り、白五代を踏みつけ雄叫びを上げるグムンでしたが(天パーの行動を「誇示するように」と見ていた意見もあるので、同じ種族として強さの証明的な意図を持ってたとも考えられます)、そこを突かれ、文字通り足元を掬われてしまいます。

 

そこにヘリで駆けつけ、拳銃を構える刑事・一条薫。

このヘリも急に出せるものではないと思うので、これも事後報告で済ませるつもりなのかと、大変ドキドキします。

逆にグムンのヘリ侵入を許した一条さんに危機が迫るのですが、そこに白い戦士がジャンプで参戦。

ヘリ下部にぶら下がりながらのアクションを、実際の映像と合成を組み合わせ、気合の入った演出で見せてきます。

運転手さん、本当にお疲れ様です。

 

下を回られたことで、背後を取られた一条さんを助けようと足を抑える白い戦士。

一条さんのヒロインゲージがグングン上がってきます。

ヘリ上での戦いは白い戦士に軍配が上がり、ヘリから落下したグムンは建物の天井に叩きつけられました。

「俺を、助けた…?」

ヘリ内部で白い戦士と見つめ合い、ヒロイン力が上昇しまくる一条さん。

白い戦士はサムズアップを向け、名乗る前にその場から立ち去ります。

サムズアップ、それは今朝目撃した"夢を追う男"が見せていたそれと同じであった、でつづく。

 

 

昨日、20周年記念ということで配信開始された本作。

前回見たのが10年近く前なので、改めて見たいなと思っていたのですが、なかなか手を付けられていなかったので、いい機会となりました。

 

改めて見て思ったことが、主人公の初変身を描く場面や、(番組上の)ヒーローが得体の知れない存在として扱われる点は、どこかウルトラシリーズに近い空気を感じました。

脚本が東映特撮において現在でも活躍を見せ、ウルトラシリーズのファンでもある荒川稔久氏の手癖が出たといったようなイメージ。

戦隊シリーズで柱として活躍していた荒川氏が、初めてメインライターを務めた作品としても印象的です。

 

また初メインといえば、1991年の「特急指令ソルブレイン」で監督デビューし、その後のメタルヒーローシリーズと「燃えろ!ロボコン」を手掛けた石田秀範監督がパイロットに。

後になって見れば、平成ライダーて多くの演出を担当した方ですが、復活作の本作を堅実かつ緩急のある演出で見せていたのは、初メインとして大変良い仕事でした。

 

本作第1.2話は、特別編としてカットされた場面が追加されたバージョンもあります。

なので、放送された本編はあっさり一条と再会する五代や、戦闘終了後サラッと次回につづくになるなど、若干唐突な場面も見受けられました。

まあ本作はわざわざテロップで場所を明確にしたりと、ロケーションにも気を遣っているので、色々と余裕が無かったとも思われます。

 

第2話とまとめて書こうと思ったのですが、思ったより長くなったので今回はここまで。

過去作の視聴感想に関しても、上手く出来るようペース配分を見極めていきたいと思います。

 

次回、変身。