いきなりで申し訳ないのですが、
セイバーの毎回感想は切りました。
視聴は続けるので、また気が向いたら何か書きます。
episode.2「変身」
(監督:石田秀範 脚本:荒川稔久)
夜の教会、電話を掛ける女性、教会の上に立つ影…。
朝日が差す長野市の某レストランでは、ソファで寝ていた五代が目を覚ましていました。
一緒にいた桜子さんによると、11時間も眠っていたそうですが、桜子さんは桜子さんでその間ずっとパソコンとにらめっこしてたのか。
「好きになれないから、あの感触は…」
初めて体力を消耗したと言う五代は、その手に残る戦いの感触を思い出し下を向いていました。
そこに現れたのは、ストーカー…ではなく移動中に偶然、五代を見つけた一条さん。
前回ラストで抱いた疑問を本人にぶつけるのですが、その本人はあっさり白状。
「やはり君が未確認生命体第2号か!?」
「俺そんな名前になってるんですか?ちょっと言いにくいなぁ…」
姿の変わった自分の呼称に戸惑いながらも、力を得たことで、自分は戦うべきなんだと言い出す五代に対して、一条さんはお前にはもう関係ないと切り捨てます。
現場に急いでため、東京に戻って身体の精密検査を受けるべきだと、椿秀一という医師を紹介してその場を去ります。
口論してる2人の周りを、カメラがグルグル回る撮り方はすごく石田監督です。
パトカーの中での一条と亀山の会話で、先日出現した怪人を"未確認生命体"と呼称されていることが分かります。
仮面ライダーシリーズの原点とも言えますが、ヒーローと怪人が同じ括りにされて呼称されているのは、当時としては驚きの要素でした。
一条さんの後をストーキングした五代は、昨晩何者かに襲われた被害現場の近くを通った親子の会話から、ある教会の神父が人前に出てこなくなったことを聞き出します。
桜子さんを放置して教会に向かった五代は、1999の技の一つ・不法侵入で教会に入ります。
そこで出会ったのは、目つきが悪く、窓から差し込んだ程度の光を嫌う神父の姿。
神父が無事?であることを確認できた五代は、その場を立ち去ろうとするのですが…
「キシュヤバ・ビゴギ・グズヤツジャ…」
思わず振り向く五代の前から、神父は姿を消していました。
教会の教壇の影には、何者かの足が隠されていました…。
またも五代に放置された桜子さんは、九郎ヶ岳遺跡の調査によって亡くなった夏目教授のお通夜に向かうことになり、長野に留まることになります。
その夜、クモ型の1号、白い装甲の2号に続くコウモリ型の未確認生命体3号が出現。
現場に急行する一条さんの運転が荒い。
撃退に向かう警察ですが、先日のクモ怪人同様銃弾が効かないので歯が立たず。
そこに現れた五代は、一条の制止を振り切って白い戦士となり戦います。
しかし、どこか躊躇いのあるその拳は3号には通じず、一条を巻き込みながら吹っ飛ばされあっさり元の五代に戻ってしまいます。
主人公がダウンし、絶体絶命の危機を迎えたヒロイン一条さんを救ったのは…まさかの亀山(が乗ってきたパトカーのライト)!!!
思わぬ横槍が入ったことにより3号は撤退。
危機を免れた一条さんは、その場で倒れこんでしまいます。
病院で手当を受けた一条さんは、看護婦にすごみ自ら強制退院。
一条に駆け寄る五代は、自分が戦えなかったことを謝罪しようとするのも、胸ぐらを掴まれてしまいます。
「君が戦う力を得たと思うのは勝手だ、だが戦う義務はない。これは市民を助けるという、我々警察官の仕事だ…中途半端に関わるな!!」
五代を突き放し、一条さんはその場を去っていきます。
三度放置された桜子さんは、宿泊先のロビーで五代を甲斐甲斐しく待っておりました。
五代は自身の変わった白い姿が、本来なら赤い姿であることを桜子さんに語り出します。
「本当は、赤じゃなきゃいけなかった気がする…俺の気持ちが半端だったから、なりきれなかった」
「…五代君でも、気持ちが半端になるなんてことあるんだ」
「あるさ…そりゃ…」
握った拳を前に、五代は思い詰めた表情に。
未だ答えの出ない五代は、夏目教授のお通夜が執り行なわれている場に向かいます。
そこで、堪らず外に飛び出し泣き崩れる教授の娘の姿を目撃し、自身の不甲斐なさと、罪の無い普通の親子から笑顔を奪った存在に悔しさを滲ませます。
冒頭から念入りに見せてきた五代の迷いですが、若干見せすぎかなとも感じました。
久々のTVシリーズ復活ということで、新機軸を取り込もうとした結果、リアルな描写が増えてきたなかで、人物の心情は分かりやすくしたいというオーダーがあったのかもしれません。
同じ頃、コウモリの化け物を目撃したという老人に事情を聞いた一条は、ライフルを構え、噂の教会に単身突撃。
人気の無い夜の教会に警察だ!と侵入した一条さんの背後から、ステンドグラスを突き破り奇襲を掛ける3号!!
想定外の事態に対処できなかった一条はその場を転がり、なんと教会の蝋燭の火が建物に引火し、火は一条さんのコートにまで広がり火だるまの危機に!!
そこに、バイクで転びながら突っ込んでくる五代!!
ジャンパーを当て火を消す五代に叫ぶ一条。
「何しに来た!?」
「戦います、俺!!」
「まだそんなことを!!」
逆に五代は一条の前で、自らの覚悟を宣言!!
「こんな奴らのために!
もうこれ以上誰かの涙は見たくない!!
皆に、笑顔でいてほしいんです!
だから、見ててください!
俺のッ!!変身ッ!!!」
ベルトを出現させ、炎をバックに構えを見せる五代…。
3号に殴りかかった五代の姿はみるみる変わり、その体色はビジョンで何度も見た赤い姿!
「ビガラグ…バズビ…クウガ!!」
2号と呼ばれるのに違和感のあった五代は、敵が呼んだ名を気に入ったのか、さらっと頂戴します笑
再戦となったクウガと3号の戦いは、両者互角で進んでいたのですが、そこに乱入してくる1号ことクモ怪人グムン(冒頭、まだ死体が見つかってなかったと言及あり)!
廃工場で2対1の戦いを強いられるも、一条さんの手助けも加わり優位に立ち回るクウガ。
そうこうしてるうちに、朝日が差し込んできたので3号は敵前帰宅し、再度相まみえるクウガとグムン。
一条さんが、酔っ払いの老人から話を聞いてたのがAM4:08だったので、そこから教会に向かってドンパチすればまあ朝になってても不自然ではないかとは思います。
早速、新機軸として取り込まれた時間の表示が、フィクションのツッコミどころを上手く潰してきております。
クウガは糸攻撃にまた苦戦しながらも、最後は強力な蹴りを叩きこみ、グムンはベルトが壊れ爆発四散。
爆発に少し驚くクウガのリアクションは、まだ戦い慣れしてない戦士の姿として、当時としては珍しい描写といえるものだったかと思われます。
先程、クウガを助けてそのまま倒れた一条さんが目を覚ますと、
「おはよう、一条さん」
「なんで、お前の肩に…?」
なんと五代の肩にもたれかかっていた!!笑
「まあ、いいんじゃないですか?」
「…一生の不覚だ」
ヒロイン力、急上昇!!!笑
いいように心の隙間に侵入されてしまった気がするも、なんとか生き延びた一条さんですが、ライフルを持ち出したうえ、教会を火だるまにしたので始末書どころじゃ済まないのでは、という一抹の不安を見せながらも、もうどうでもいいやーと開き直って、つづく。
第1話において、宣材写真やオープニングにすら登場しない白クウガ(グローイングフォーム)になり、ヒーローは登場しながらも、完全な"変身"まで描くことはしませんでした。
初登場から他人である少年(視聴者のメタファー)に対し"笑顔"でいられることの素晴らしさを語った五代が、相手が怪人であっても暴力を振るうことに抵抗を感じるという展開も非常に分かりやすく、更にそこから、涙を笑顔に変えるため戦うことを決意するという段取りが丁寧な印象です。
"変身"という仮面ライダーシリーズの代表的な要素を主人公が劇的な場面で決め、"変身"であり"変心"でもあるとしてきたのは、プロデューサーのこだわりになるのでしょうか。
もう一つ、仮面ライダーの原点として"同族殺し"という要素がありますが、本作の場合は「未確認生命体」というカテゴリーの中で、クウガと怪人を一緒くたにしております。
実際怪人側もベルトを巻いておりますし、人間態から変化することも判明したので(厳密に言えばクウガと怪人のパワーソースは違うのですが)、事情を知らない劇中人物からしたら、ヒーローも怪人も同じようなものだという考えも自然ではあります。
他に注目した点として、人間描写が従来の同ジャンル作品とは大きく違うと感じた点です。
例を挙げると、レストランの窓を叩き五代を呼ぶ一条さんや、戻ってきた五代に対して電話しながらジェスチャーで怒る桜子さんなどの場面。
従来だったら、前者はレストランに入ってきてもおかしくない場面ですし、後者は電話というツール自体を説明に使ってもおかしくない(むしろ電話が終わってから、事情の知らない五代に説明をして状況を把握させている)と思うのです。
五代と一条の関係以外にも、既に形成されている人間関係がきっちりと存在し、刑事ドラマなどの一般向けドラマに対する意識も窺えます。
それでいて主要人物の心理描写に関しては、丁寧過ぎるレベルで分かりやすいのも特徴です。
力を手に入れたはいいが、拳を振るうことに抵抗のある五代。
五代の正義感と思いやりを感じながらも、一般人を戦わせるわけにはいかず単身突撃する一条。
今回に関しては、五代がそれを一旦乗り越え、クライマックスの変身に集約されるのが一連の流れになります。
90年代東映特撮に見られた"ヒーロー"という存在の追求、といった問題提起をあらゆる視点から分析していくのが、今後における本作の柱の一本になっていきます。
改めてこの1.2話を見て、「なるほど、これは大人も子どももハマるワケだ」という納得感が詰まった会心のパイロット版となりました。
現在ほど、販促ノルマは厳しくないという事情はありますが(むしろ販促ノルマをより強固にするきっかけになっている可能性も)、前後編でしっかりと"変身"を見せる作劇は、現在においても重宝してほしい部分だなと思います。
次回、いきなり射殺の危機?