『ウルトラマンZ』
第14話「四次元狂騒曲」
(監督:田口清隆 脚本:吹原幸太)
今回からOPが2番に変更。
物語も次のステージに向かっております。
グルジオライデンを倒したことにより、キングジョーがストレイジのエース機となり、1号であるセブンガーは来月から博物館に展示されることになりました。
「少しずつ、何かが変わろうとしていた」
セブンガーが一線で活動していた時代は終わり、新たなステージに向かったことをハルキは実感します。
そのストレイジはというと、キングジョーの活躍が認められたことによる軽い祝勝会を行なっておりました。
パイロット以来の田口監督演出ということで、今回もモブ隊員の様子が描かれるのはやはり嬉しいところ。
特空機が活躍する喜びを、主要キャスト以外も巻き込むことでスケールを小さくせずに描くことは、地味ながら秀逸。
バコさんが有給休暇なのをいいことに、ドックを利用して打ち上げを行うストレイジですが、そこに現れたのは後光を背負ったバコさんーーーーー!!!
ドックを勝手にパーティ会場にしたことに怒ったバコさん…と思いきや
「中途半端は良くねぇ……マグロ、御賞味ください」
巨大なマグロを片手に、打ち上げに参加しに来たのでした。
バコさんに怒られるぞという流れだったのですが、今までの流れ考えればむしろ打ち上げに喜んで参加しそうなので、バコさんが休み中に打ち上げ行おうとする整備班に、人の心がありません。
または、見えないところでバコさんがパワハラしまくってて実は嫌われてたとか。
考えれば考えるほど、ストレイジの闇が出てきそうなのでこれくらいにしておきます。
そんな打ち上げの場においても、元気の無いハルキ。
そこにやってきた年下キラーヨウコ先輩は、ハルキを気遣ってか自身の胸中を語り出します。
「実はさ、私もちょっと考えてるんだよね」
「確かにキングジョーは強い。けどこんな兵器を私たち人間が手に入れちゃって、本当にいいのかな…なんてね」
悩んでいるのは自分だけではない、ハルキもそれは分かっているのですが、未だモヤモヤは晴れず。
前回カネゴン(の中のメダル)に励まされたハルキですが、まだ悩みを振り切れていないのは、総集編で全てを解決させてなくて良かったと思います(物語の軸になる要素は、簡単に片付けてほしくない)。
打ち上げ中、何かを感じ取った隊長はいつものトイレエスケープで退席。
その向かった先には、ストレイジ基地の前で何かを企むカブラギの姿がありました。
「このくらいで満足してもらっては困る。次のステージだ」
まるで自分の思い通りにことが進んでるような口ぶりで四次元怪獣ブルトンを召喚するカブラギの前に、トゲトゲ星人と化した隊長が出現。
「よぉ、セレブロ」
「誰だ?何故俺の名前を知ってる」
最近やたらペラペラ喋るカブラギ=セレブロと、初めて会話をするジャグラー隊長。
「邪魔をする気なのか?」
「まさか。むしろ応援してるんだぜ?俺は…でも、悪戯するにしたって今日じゃねぇだろ。こっちは大事な打ち上げやってんだ」
「そうか!それは良かった!!……それなら、もっと賑やかにしてやるよ!!!」
何故かテンションの上がったカブラギは、ブルトンの能力でジャグラー隊長をトイレに移動。
2話連続でトイレかよ!!
その頃ストレイジ内部でも、ブルトンの影響で時間と空間がめちゃくちゃに歪んでおり、特空機に乗ろうとしても元の場所や時間に戻ってしまう無間地獄と化してました。
ユカの分析によると、この空間では個人の深層心理が行き先に直結しており、ヨウコ先輩は心の奥で"特空機に乗りたくない"から、そしてハルキはマグロをもっと食べたいから元に戻ってしまうという状況にハマっておりました。
先程、少しだけ迷いを見せたヨウコ先輩にも容赦なく四次元の影響が出ており、エピソード単位での布石の置き方も非常に丁寧で、吹原脚本は安定感バツグンです。
戦場で倒れることが戦士の本懐、と精神統一したヨウコ先輩は四次元の罠を突破。
マグロタイムリープを繰り返すハルキと接触し、心入れ替えんかワレェッとアドバイスを授けます。
一番行きたい場所…それを願って一歩踏み出したハルキがたどり着いたのは夕方の河原。
そこに転がってくる野球ボール、そしてそれを拾いに来たのはナツカワマサルでした。
かつて父とキャッチボールをした時間と場所にやってきたハルキは、その状況に困惑しながらもマサルに問いを投げかけます。
「あ、あの、この街の消防士の方ですよね?
聞きたいことがあるんですもし、もし誰かを守ろうとした時、その行動が同時に別の誰かを傷つけてしまったり、守れないと分かったら…どうしますか?」
「……なんて言えばいいのかな
守りたい人を全員守れるわけじゃない。
助けるために手を伸ばそうにも、手の長さには限界がありますしね…。
だから、手が届く範囲で、自分の信じる正義を、守ると決めた人を全力で守る!
それが使命だと思ってます」
「…手の届く範囲」
「そのせいで傷つけてしまったり、守ることのできなかった人のことは、僕は絶対忘れません。
……偉そうなこと言ってますけど、僕なんてまだまだなんですけどね」
息子のところに戻ろうとするマサルに、別れ際握手を求めるハルキ。
「なんだこいつ…」という顔になりながらも握手に応えるマサル。
しかしその手から感じたものは、自身が守ると決めていた愛する息子の魂でした。
「……ハルキ?」
「……父さん!」
泣きそうになる気持ちを堪えながら、ハルキは元の場所に戻っていきます。
うーーーん
確かにとても良いシーンですし、話の流れ的にも自然ではあると思うのですが、ちょっとやりすぎかなぁとも思いました。
ストレートに解決し過ぎというか、ハルキの答えの出ない悩みに(現在では)亡くなっている人物から答えを見出してしまうのは、少し楽をしてしまったかなという印象です。
ハルキの悩みは真っ先にマサルに聞きたいものであったものだと思われますが、それを聞き出せないからこそこれまで肉付けしてきたハルキの人間関係が大事になってくるわけで、それを意識せずあっさり父親と再会させてしまったのは少しもったいなかった気がします。
また、マサルの正義漢は消防士という設定であったことで補強されましたが、使命感で人を助けているのか、それとも独善的に目の前の人を助けるのかという線引きも曖昧になってしまった気もします。
第5話において掲げられた"プロフェッショナル"と繋げて、ハルキの根底を補強しようとしたのでしょうが「守りたいものを守る」のは"プロフェッショナル"とはややズレたものであり、あまり上手く転がせてなく、少し残念。
先程はバツグンの安定感とは評しましたが、アベレージはそこそこ高いものの、瞬間最大風速を叩き出せないのが、本作の厳しいところかなと思います。
次元を揺るがしながら、街を闊歩するブルトンの前に降り立つ先輩ジョーは街中にも関わらずミサイルとビームを連発します。
しかしブルトンは次元を歪ませ、それを逆に先輩ジョーに叩き込みます。
そこでハルキが光の扉にアクセス。
「…分かりましたゼットさん。
自分の手が届く範囲で守りたい人を、全力で守る!
それで、傷つけてしまったものは、絶対に忘れない!!
胸に……刻みこんでいく!!!」
「よし、ハルキ!ウルトラフュージョンだぁ!!」
「押忍!!」
父との邂逅により、迷いを振り切ったハルキはゼットと息を合わせ、平成三倍盛り!!!
トリッキーな戦法を見せるブルトンに対し、超能力で対峙する平成ゼット。
前半の打ち上げシーンでバコさんがマジックを披露していたのもあり、画に唐突さが生まれないのは田口監督の仕込みの上手さが出たと思います。
特にブルトンが持ち上げたビルを、しれっと元に戻すゼットはスマートでカッコ良かったです。
あとここでは平成三部作のSEが大量に使われてて、ファンサービスのツボもしっかり心得てます。
ブルトンに物理攻撃を仕掛けようとした平成ゼットですが、空間を歪められたことにより首から下を地面に埋められてしまい、突き出た顔を何回も踏み潰されるというなかなかエグい技を食らってしまいます。
しかし先輩ジョーの助けもあり、脱出したゼットは筋肉三倍盛りにチェンジし、ブルトンの触角を引き抜いて真のゼットファイッ!!!
追い詰められたブルトンはゼットをボディプレスで潰そうとしましたが、ランスアローをブッ刺されハンマー投げ、そこから更に師匠三倍盛りに変わったゼットに竜巻閃光斬を受け爆散。
最後は打ち上げの片付けをして、日常に戻るストレイジで終わり。
真っ先にバコさんを手伝おうとするヨウコ先輩。
そして夕暮れの空には、謎の黒いオーラが光るのであった…。
ここ数話、若干暗いストーリーが展開され今回もそれを引きずった形になりましたが、早めにハルキの悩みを解決してくれたのは良かった点。
まあ全てが解決したというわけでは無いのでしょうが、ポイントポイントを押さえてくれるのは本作の長所です。
それでいて登場怪獣をブルトンにし、映像的にも遊びを入れていたのですが、正直そこまで目新しい描写は無かったことと、バコさんのマグロがそこまで面白い画では無かったので、そこはなんとも言い難かったところ。
そのハルキの問題解決ですが、タイムワープしたことで再会したマサルからもたらされるのは少し残念でした。
結局クライマックスでハルキが語った決意は、父親の受け売りでしか無いわけですし。
前回は総集編という形だからだったのかもしれませんが、それにゼットさんがあまり関わってこなかったのも、キャラ描写としては微妙に感じました。
まああのシーン自体と役者の演技はとても良かったので、ある程度は満足してます。
それと久々に登場したカブラギ=セレブロですが、最近は妙に感情表現が豊かで、最初は猫を被っていたのでは?疑惑。
口ぶりからは、前回登場の際のメダル強奪も計画通りといったような空気を感じ、終盤に向けてどのような動きをするのかが楽しみです。
パイロット以来のシリーズ構成コンビでしたが、丁寧かつ仕込みのしっかりした物語を展開してて、やっぱり信頼度は高い。
なので、この作品を最後に吹原さんの脚本が見られなくなるのはとても残念です。
そんな中で次回、リク君先輩再臨!虚空怪獣出現!!ゼットさん今度は何盛り!!!???