うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマンZ「2020年の再挑戦」

ウルトラマンZ』

第18話「2020年の再挑戦」

(監督:辻本貴則 脚本: 継田淳

地底怪獣パゴスが出現し、先輩ジョーとハルンダム出撃。

「遅いよハルキ!置いてくよ!!」

「え、いや、そっちが早すぎるんすよ!」

キングジョーにすっかり慣れたヨウコ先輩は、かつてセブンガー以上の機動力を発揮し活躍していたウインダムの性能にグサリ。

最強の力を手に入れたものは、どこに向かい誰と戦うのでしょうか。

 

指令室で妙にキリッとしてるユカはパゴスの放つ分子構造破壊光線に気をつけてと注意するのですが、そのパゴスはいきなり消失。

原因を探るべくハルキは周辺調査に。

「周辺一帯を俺一人調べるなんて…ムチャっすよ」

どこも人手不足は深刻です。

 

「何故、動いてないのかしら?」

調査中のハルキの前に現れた不思議な雰囲気を持つ女性・カオリは、かつて自分が乗ったことのある現在は止まっている観覧車を見つめます。

「ここに来れて良かった…これでもう、思い残すことはないわ」

その姿に何か不穏なものを感じたハルキは、今日も主人公力を発揮して力になると呼びかけます。

「怪獣や宇宙人から皆を守る、それが仕事です」

「怪獣や、宇宙人から……じゃあお願い!私を殺して!!」

カオリからの思わぬ懇願に戸惑うハルキでしたが、タイミング悪く通信してきたヨウコ先輩に対応している間にカオリは姿を消していました。

 

筋肉姉弟が戻った指令室では、パゴスの出現地点において電波障害が起きており、更に人がいきなり消失する動画がSNSに多く上がってることも調査の線上に。

そしてハルキは、その動画にもれなくカオリの姿が映っていることも確認します。

再び現地に向かった筋肉姉弟は、そこでカオリを目撃するも逃走。

二手に分かれてカオリを追う姉弟ですが、レトロなオブジェが置かれている倉庫に忍び込んだヨウコ先輩が宇宙人に襲われ、ヒロイン力チャージを怠らないプロフェッショナルの仕事を、きっちりとこなします。

 

そんなヨウコ先輩の悲鳴を聞きつけたハルキは、駆けつけた倉庫でカオリを発見。

「私またやってしまったのね…」

残されていたヨウコライフルで自分を撃とうとするカオリを止めるハルキですが、それでもカオリは引き下がらず。

「何度も自分で命を断とうとした!でもアイツがそうさせてくれないの!!」

そしてカオリは豹変。

「お前、人間じゃないな?半分は人間、半分は…ウルトラマン。私と同類だ。私はケムール人、我々の来訪はこれで二度目だ

 

54年前にこちら側にやってきたケムール人は、自分たちの老化を防ぐために人間を捕まえその肉体を奪おうとしていたところ、合成実験の失敗により地球人とケムール人の2つの身体を持つことになってしまった個体が生まれてしまいました。

その個体=カオリの姿を利用し、ケムール人は再始動した人間誘拐作戦をスムーズに展開していたところ、地球に戻った途端意識が強くなったカオリに振り回されていたとのこと。

「故郷を思う人間の気持ちは、実に強いものらしい」

 

カオリの身体を乗っ取ったケムール人は、観覧車に人間消失リキッドを詰め、頂上で爆発させることにより雨雲と交じり合わせ東京人消失作戦を展開しようとしていました。

ここでケムール人の作戦をハルキに解説してくれるカオリなのですが、意識だけが抗っているという表現のためか何故か裸。

先程、2つの身体を持っているという説明をわざわざしていたので、意識のみのカオリが服を着ていても何らおかしくはないと思うのですが。

ケムール人がカオリの服を着ていたなら、まあ納得できたとは思いますが、特撮表現の面白い辻本監督にしては表現が稚拙過ぎます。

 

「ハルキ!ケムール人の液体はウルトラやっかいだぞ」

光の扉にアクセスしたハルキに対して、変身する前に話しかけるゼットさん。

「しょうがないな、俺様の出番か」

観覧車爆発前に、ケムール人を異次元送りにしよう作戦を企んだ主役同盟。

ここにきて変身前にコミュニケーションを図るゼットとそれに加わるベリアロクは、前回までのキャラ描写も活きて良かった場面です。

 

いきなり主役三倍盛りに変身したゼットは、巨大化して妨害してきたケムール人と夜の街で戦闘。

最初からクライマックス状態なこともあり優位に戦いを進めるゼットですが、ケムール人を斬る=カオリを斬ることに躊躇いを見せ動きを止めるハルキ。

そんなハルキに意識体カオリが「私に構わず斬って」と呼びかける展開をやり出したうえ、ベリアロクが「ああ分離できるよ」とか台無しやことを言い出し、ここにきて一気につまらなくなりました。

 

最終的には頂上に登りそうになった観覧車を、巨大カオリ(意識のみ)の手が物理的に止めてしまい、そのスキにデスシウムスラッシュでザックリ割りからの異次元消失ビームで解決。

ベリアロクの攻撃により分離できたカオリと、消された人間たちが元に戻りました。

「勇敢なる先人たちだ」

54年前において、光の巨人がいない状況でも侵略者を撃退できた人間に対し、ジャグラー隊長は何を思ったのでしょうか。

 

助け出されたカオリは療養施設のようなところに入所しており、お見舞いに訪れるハルキ。

「カオリさんは、54年分のブランクがあるんですから、これから楽しい思い出を、いっぱい詰め込んでいかないと」

なんだかものすごい重い言葉だぞ…!

筋肉が恋人であるハルキにも、春が来たのではと淡い雰囲気を醸し出し、つづく。

「ありがとう、ウルトラマン

 

サブパイロット以来の辻本監督登板。

特撮表現が面白いのは相変わらずで、消失リキッドを掛けられた監視カメラの映像が途切れる描写は特に良かったです。

しかし、演出におけるブレーキの弱さも相変わらずであり、ずっと裸でハルキに呼びかけ、最終的には巨人となって物理的にケムール人を制するカオリはいくらなんでもやり過ぎ。

ウルトラマンタイガ」超全集のインタビューにおいて、特撮以外にもこだわっているシーンはあると豪語していたのですが、もう少し自分の撮った映像を、対象年齢に合わせて精査してもらいたいところです。

 

脚本はここで初登板の継田淳氏。

ケムール人の説明がやや分かりにくかった(人間と地球人を別にしてるのか一緒くたにしてるのか不明)点や、典型的なダメ展開を終盤に持ち込んだりと失策が目立ちました。

しかし今後への布石やキャラ描写もしっかりと盛り込んでおり、安定感のある脚本だったので、次回の登板にも期待です。

 

全体的に見れば「ウルトラQ」の完全オマージュ回となるのですが、そこまで過去作は意識しなくても大丈夫な構成になってたとは思います。

本作の基本構造である、怪獣出現→ストレイジ出撃から始まるストーリーとしても完成されていましたし、こういうオムニバス性の強いエピソードにおいて必要なのは、やはり基本的な地盤が整っていることなのだと強く実感します。

むしろ今回において最も足を引っ張ったのは、終盤における展開と演出だったので、クライマックスでのクリエイターの慎重な姿勢をもっと見たかったところ。

前年、過去作オマージュ回において大きく横道に逸らしてしまった辻本監督の演出ということで期待値は低めでしたが、ある意味期待通りの出来。

個人的にこれまでワーストだった第5話を超えるエピソードとなってしまいました。

 

 

次回、AtoZ 運命のウルトラメダル