『ウルトラマンZ』
第24話「滅亡への遊戯」
(監督:田口清隆 脚本:吹原幸太)
「そう簡単にはいかねぇか…」
前回、美味しいところだけもらってしまおうと登場したジャグラー(住所不明・無職)ですが、その前にファイブキングも現れゼッパンドンで立ち向かうことに。
冒頭から怪獣同士の戦闘でありながら、スピーディな戦闘が繰り広げられています。
「セレブロ、今はそいつの中にいるのか?」
「ようやくお前の目的が分かったぞ!ジャグラスジャグラー!!俺が人類に作らせた最終兵器を、横取りするつもりだったのか!!!」
なぜか首から下はマスクオフ状態(終盤ということで、役者への労いとサービスも兼ねてといったところでしょうか)のジャグラーに、またも道具をパクられそうになったセレブロ長官は徹底抗戦。
こんな燃える状況で観客になるなど有り得ないと、消耗した身体を押しゼッパンドンに加勢する主役ゼットは、今まで色々と場をかき乱してきたジャグラーの真意を知ることに。
「昔、大きな木を斬ったことがあってな…戦争を止めるため、自分の正義を貫くためだった。だが、全てを否定されたんだ」
第8話において、ダイナメダルに過去の因縁を2回も叩きつけていましたが、とうとうその経験が『Z』におけるジャグラー=ヘビクラの行動理念に直結。
これをきっかけに『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』を見る方が増えてくれると嬉しいのですが、茨の道になるので充分注意を。
「だからそのオモチャがいるんだよ。自分の正義が絶対だと思ってる連中に、その正義の危うさを味わわせるためにな」
過去の経験から、正義の心を振りかざして他者の正義を踏みにじる行為に激しい憎しみを抱くジャグラーですが、今度は自身が地球人類の正義を否定してしまう行為に出てしまっているのが大変皮肉。
そんなジャグラーとコンビを組んで戦っていたゼットはファイブキングの攻撃とエネルギー切れで変身解除。
隙を突きファイブキングの腹を貫いたゼッパンドンはウルトロイドゼロのもとに向かいますが、ファイブキングはハルキにガンQライフルを突きつけ脅迫。
「選択肢は2つだ!そいつを奪って目的を達成か、それともこの小僧の生命を助けるか?」
「ハッ、決まってんだろ」
そのままウルトロイドを拾おうとするも立ち止まり、ウルトロイドを捨てファイブキングに向かうヘビクラ!!
二大怪獣のエネルギーのぶつかり合いの果て、ヘビクラは敗北してしまいます。
上手く言えないのですが、実にジャグラーらしく、ヘビクラとしての面も出せてて、すごくカッコ良かった。
そう考えるとなるほど、ジャグラーがマスクオフしていたのは単なるファンサービスだけでなく、結局は感情移入してしまった地球人を捨てきれなかった"ヘビクラとしての表情"が文字通り表に出てしまったという描写になったと。
「…またやっちまった」
「これは、返してもらうぞ!!」
激闘を何とか制したセレブロ長官は、よろよろとした足取りで倒れたハルキのもとに向かい、借りパクされてたベリアルメダルのみ回収。
詰めが甘いな!!
薄れていく意識の中、ハルキは長官の左眼に赤い眼光を見つけ、目を覚ましたら病院のベッド。
そこにはユカ研究員と無職1号ことバコさんがおり、D4レイの実験がまたも行われることを知ります。
「いいですか?地球は一個の大きな生命体なんです!ウルトロイドゼロは明らかにオーバーテクノロジーで、地球そのものを破壊する可能性がある。だから地球はその存在を拒絶してるんです!!怪獣たちだってきっと、その地球の意思に従って動いているんです!」
前回出現した怪獣たちは、地球自身が人類の過ぎた文明を破壊するために差し向けた存在であるとするユカですが、中盤の展開を見るに、怪獣が自身の意思で身を守る行動に出たと考える方が自然では。
比喩的な表現も交じっている可能性もありますが、一斉に登場した怪獣たちが、ウルトロイドゼロを排除するために地球に操られて出現したという面が悪い意味で古臭いうえ実に単調な展開で、平成どころか、30年前にタイムスリップしてしまったような感覚ですごくガッカリ。
ストーリーがつまらないというより、期待値を上回ることが出来ず残念といったような感想です。
「先輩が危ない…すぐに行かなくちゃ!」
長官の正体に気づいたハルキは、ヨウコ先輩とドックにいることを知り怪我を押して駆けつけようとします。
状況を上手く共有できないながらも、ハルキの必死な姿に無職1号が動く!!
「ハルキ!…ちょっとドライブ行かないか?」
指令室でユウキ隊員にヘビクラが宇宙人に変わった映像を見せ、元ストレイジのメンバーを見張り、妙な行動を起こしたら武器の使用も許可したセレブロ長官は、ドックで1人黄昏るヨウコ先輩に遭遇。
枯れ専でもさすがに好みから外れるかな…とシチュエーションにコレジャナイ感を覚え微妙な顔を見せていたヨウコ先輩でしたが、掛けられた言葉は斜め上を大きく越え、成層圏まで突き抜けるものでした。
「いよいよだ。これまで色々な星で楽しんできたが、この瞬間はいつも興奮するよ…最高の景色だぞ。自分たちで作り上げた兵器で滅んでいく愚かな者たちの、阿鼻叫喚は…」
10年前、グルジオライデンを地球に落とし、人類に怪獣に対する恐怖を植え付け、特空機を段々とパワーアップさせて遂に人類を滅ぼすレベルまで進化させていたセレブロが、かなりの長いスパンで地球消滅計画を企んでいたと判明。
目的のために、光の国にカチコミをかけライザーを奪った度胸と行動力もさることながら、表立って行動せず宿主をコロコロ変えることで足がつかないよう、文字通り暗躍していたセレブロは独特のキャラ造形となりました。
前作『ウルトラマンタイガ』の黒幕・ウルトラマントレギアは、結果よりも過程を重視しているような行動を見せておりましたが、それに反して本作のセレブロは、結果良ければ全て良し。
ある意味、ものすごい大物かと思われます。
「それを私はこう呼んでる…文明自滅ゲーム…!!」
長官から抜け出したセレブロは、なんと目の前のヨウコ先輩に憑依。
「キエテ・カレカレータ…」
貞子のような動きでもがき苦しんだ後に、セレブロ先輩はウルトロイドゼロにベリアルメダルを投与!
そのままウルトロイドに搭乗し、ドックから這い出して無断発進。
溢れ出るヒロイン力は、ついに黒幕すら動かしてしまった…!!
「さぁ、最終ステージだ…」
凍結中の怪獣が眠る、防衛軍の怪獣管理区域を次々と襲っていくセレブロイドゼロは多くの怪獣を吸収。
その内訳は
・クレッセント
・ダンカン
・アーストロン
・バードン
・サタンビートル
・マジャバ
と、名前とモニターでの写真のみの出演ながら、やりたい放題みたいな面子で、ほんと、
よくもやってくれたな!!
(褒めてる)
セレブロイドの行き先から、今度の狙いは因縁のレッドキングであることが判明し、主人公はいても立ってもいられず。
「俺…行きます!!」
現場にドライブ中だったバコさんはハルキの発言に戸惑うも、その決意の表情から、彼の抱えている戦士としての使命に応える。
「そうか…フッ……行ってこい!!」
車を降りたハルキは、直後アクセスグランテッド!!
あえて何も見ずに微笑むバコさんがひたすらカッコ良く、また初めて正体を知った身内ということで、ヒロインゲージが急上昇!!
終盤に来て、絶対的ヒロイン・ヨウコ先輩との一騎討ちになるとは予想できませんでした(え
後光を背負って迫るセレブロイドは、かつてゼットと戦ったレッドキング母も吸収してしまい、守っていた卵に手をかけようとしたところに師匠三倍盛りに変身したゼットがヒーロー登場!
スラッガーヌンチャクでスピーディに戦う場面は、坂本監督への意識が見られ、前回が坂本演出だったことを考慮して田口監督の方で気を遣ったと考えられます。
心配せずとも、坂本監督の方でも田口演出の寄せたような話作りとしており、実力派筆頭の両監督が参加したことで、作品の質が大きく上がったことが、本作が支持されている根源なのだなと改めて実感。
「ハhaはハ破…来たかウルトラマンゼット、お前には感謝しているぞ!私のゲームの駒として充分に働いてくれた!…おかげでバカな地球人にこんなにも素晴らしい兵器を作らせることができた!!!」
ヨウコ先輩の姿を借り、高笑いを上げ早口になるセレブロ。
目を不規則に泳がせ、動静を上手く使い分ける演技でヨウコ先輩役の松田リマ氏が怪演を見せます。
一人称が私になってるところを見るに、性格はやや宿主に引っ張られるような形になるのか。
序盤、口数が少なかったのも、カブラギ研究員がコミュニケーションが苦手だったからなど色々考えられます。
「さあこのゲームのクライマックスを飾るラスボスを紹介しよう……死と破壊の王・デストルドスだぁぁぁ!!!」
多くの怪獣パワーを吸収したセレブロイドゼロの外装が崩れ落ち、身体からあらゆるパーツがグロテスクに出現。
怪獣たちの意匠を残したラスボス・殲滅機甲獣デストルドスが後光を背負い誕生し、それに立ち向かうハルキとゼット。
「何だか知らんが、ウルトラやばいことになっちまったみたいだな…アイツを倒すぞハルキ!!」
「でもあの中にはヨウコ先輩が!」
「何だって!?」
ここに来て色々ポンコツだな!!!
研究室でデストルドスの誕生をモニターしていたユカでしたが、そこに防衛軍の隊員が出現。
ドックで長官襲撃の疑いをかけられたオオタユカ容疑者は「私たち、もうワナにはめられちゃったみたいだね…」と話し、敗北を悟り抵抗する素振りも見せずに連行されそうになりますが、何者かの介入により隊員は気絶。
まあバレバレなんですが!
筋肉三倍盛りのパワーも通用せず、ガンマイリュージョンの光線畳み掛け(ダイナがやっとチャージソルジェント使用)するも歯が立たないゼットは段々と追い詰められていき、ついにとどめの銃口が向けられてしまいます。
「D4レイ、発射」
ゼスティウム光線で撃ち合いになった平成ゼットでしたが、パワー負けしてD4、直撃。
次元が割れた演出が、絶望感を大きく煽っており、今後の展開から目が離せませんでした。
「俺たち2人のコンビも、どうやらここまでみたいだ」
初回のようなイメージ空間(今回は初代最終回のゾフィーとウルトラマンの対面に似た演出)で一方的に別れを告げるゼット。
「さっきの攻撃で、俺たちの身体はかなりのダメージを受けた。
これ以上変身しようとしたら、地球人のお前の身体は持たないだろう…
色々と巻き込んじまってすまなかったな…
あ、こういう時地球では何て言うんだ?えっと…ウルトラ寂しい気持ちでいっぱいでございます」
今際の際に言うのがそれか…!!
と、消滅の際も外すことのないゼットさんのツッコミどころ。
ゼットの名を呼び、目を覚ましたハルキはヘビクラに拾われていました。
問い詰めようとするハルキですが、そこには元ストレイジのメンバーが集っていた!!
主要都市を破壊して回ってるデストルドスに、対応が後手に回る防衛軍に代わり、ヘビクラ隊長の音頭のもと、戦士たちは立ち上がった!
「決まってんだろ、俺たちの基地を取り戻しに行くぞ」
結成、独立無職愚連隊!!!
次回最終回、輝ける戦士たち!!!
ついに最終前話となった今回ですが、メイン監督の田口監督が渾身の一仕事。
スピーディに展開される戦闘から、遠近を活かした演出が本編を大きく引き締め、特撮・ドラマ双方において相変わらずレベルが高い。
脚本面で前回同様失策が見えてしまいましたが、それをカバーする怒涛の展開で、率直に次回が楽しみになる構成は見事でした。
物語の決着としては、防衛軍とストレイジの関係がどうなるか、ヒロインレースはヨウコ先輩とバコさんどっちが制するかが重要になりそうですが、シリーズ的に最終回はあまり期待の持てるものではないので、期待はそれなりに次回を待ちたいと思います。
ところで、長官とカブラギ研究員は次回ちゃんと登場するのでしょうか…?