うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

リーダーの証明

大激闘 マッドポリス'80

第5話「シンジケートの女」

(監督:野田幸男 脚本:高田純)

 

開幕からいきなり車でバーに突撃し、何故かマフィアチックな服装で発砲!するMP。

薔薇を咥えた氷室以下は強制家宅捜索でバーカウンターを漁り始め、そこから拳銃・マグナム44を見つけ出す。

さらに、思想家っぽい男女が営みの最中にもかかわらず強引に立ち入り、捜索の結果その部屋の冷蔵庫からも拳銃を見つける今度は工作員チックな服装になったMPは、JMが武器の密売に乗り出したことを確信します。

 

「事件は一週間前、小さな交通違反事件から端を発した」

25kmの速度オーバーで白バイに切符を切られそうになったアイドル俳優・高樹健二(演じるは郷さんもといリュウソウ族長老こと団次郎氏)の拳銃所持が発覚し、警察から事情聴取を受けることになるも、シラを切り倒した結果検察に送検されることになっていた。

ダッシュボードに雑にしまってあったり、白バイ警官にあっさり拳銃だと見抜かれる高樹がだいぶ間抜けなのですが、これでも一応密輸組織のNo.2に当たる存在であり、MPにとっては組織のボスを探る絶好のチャンスでもありました。

 

そのボスと目されるのは、高樹が所属する芸能プロダクションの若き女社長ケイ・三好。

彼女は社長業の傍ら、拳銃のシンジケートとして裏の世界で暗躍していました。

「自己顕示欲の塊って感じね」

自分の作ったスタジオから暢気にラジオを放送しているケイをマークしていたMPは、高樹が地検に送られるタイミングを図り、高樹の誘拐作戦を決行に移すことに。

「やつら(検察)に任せておいても埒があかん。なんとしても高樹の口を割らせろ」

※警察官のセリフです。

ところでこの場面、何故か進司がマフィア服装を継続しているのですが、役者的に何か美味しいものを感じたのでしょうか(笑)

 

高樹送致当日、悠子の仕込んだチューリップ爆弾で撹乱作戦を展開し、検察とケイを上手く出し抜いたMPは首尾よく高樹を確保。

「ジャパンマフィアか!

 待ってたんだよ!!」

アイドル俳優という肩書き、団次郎氏のやや可愛げのある演技から、これまではどちらに傾くか分からない状態でしたが、バイクで迎えにやってきた進司をJMと勘違いし、それに嬉々として乗り込むことで完全にクロに。

「嵌められた可能性も否定できない俳優」から「JMのメンバー」に切り替わる劇的さがたった一言に集約されていて、印象的なシーンでした。

その直後、パスタを頬張っているMPに囲まれることになり天国から地獄に向かうのですが。

 

「こんなことしといて何が身の安全だよ!知らないものは知らない、それだけだ!!」

新田からムチではたかれたり、悠子に色目を使われつつも抵抗を見せる高樹に氷室が

「風呂入れてやれ」

と高樹をサウナに閉じ込め、蒸し風呂地獄に陥れることに。

手錠されてるから服を全て脱げない高樹は、ジャケットとシャツだけを辛うじて脱ぎ、筋肉アピールをしながら助けを乞う。

脱水症状になりながらも口を割らない高樹に対し、氷室は追い討ちをかけるように

「進司、塩が効くかタバスコが効くか、試してこい」

ウルヴァリンの爪を装備した進司が付けた傷口に塩とタバスコを交互に塗られ、悶絶した高樹は組織のボスがケイであることを白状。

アイドル俳優、塩とタバスコに屈した男となってしまう。

 

高樹の更なる白状から"ディスクジョッキーすなわちDJ"=ラジオのパーソナリティという単語を聞き出した氷室は、素性を隠しケイにコンタクトを図り射撃勝負を挑むことに。

「何を賭けるかは…言わずもがな」

互角の勝負を見せ引き分けとなった2人は束の間のコーヒータイムに入り、前回同様またも敵ボスと食事の席を共にするMPメンバー。

「女性にはあまり縁のない武器の密輸というのが、無粋ですがね…」

密輸のブローカーという設定で、嫌味たっぷりにケイに語り出す氷室が実にいい(笑)

 

悠子の調べによって、ケイはラジオの翌日である第4土曜日は休む傾向にあり、その日に密輸取引が行われていることに勘づく松村。

密輸取引は月末、第4土曜日はケイのディスクジョッキーの翌日だとやけにデータが出揃っているのですが、このエピソードの中で何ヶ月も経過してるとかそんなことでも起きてるのでしょうか(冒頭でJMが密輸取引に手を出し始めたと言及されており、ずっと前から追っていたわけではない)。

 

「勘弁してくれよぉ!殺されるよ…勘弁してくれよ!!」

取引場所を未だに吐かない高樹の監禁を続ける進司と新田の隠れ家に、スキンヘッドブラザーズ率いる怪しい暴走族が現れ、危機を覚えた新田は高樹を隠そうとするも…一方その頃、お茶し終えた氷室とケイは別れ際に

ねぇ氷室さん…もし、私がその組織のボスだったら、どんなことをしてもNo.2を探し出して、自分たちの手に取り戻すでしょうね。

 ボスの名前を喋るなんて、許せないと思わない?そういう男は、組織のために抹殺しなくちゃいけないわ

「仲間の皆さんによろしく」

ケイの言葉と渡されたメモ書きに入っていた進司と新田の盗撮写真により、2人が狙われたことに気付いた氷室は急いで隠れ家に駆けつけるも2人はボコられ、高樹はケイに取り戻されてしまいます。

進司と新田をしっかり殺していかないスキンヘッドブラザーズはやたらと詰めが甘いのか、または「血だるまになってた」という悠子の証言から頭を撃たれたりしても死ななかった可能性が考えられ、前回は影を潜めた"マッドポリス未確認生命体説"が再浮上して参りました。

 

例の如くいつものように、三田村富樫と接見する今回のボスことケイ・三好。

新しい組織会員との取引にケチをつけたくない三田村は、若き女性ボスであるケイに対してもいつもの圧力。

「やつらには、重要な幹部を何人もやられている…このままに済ますわけにはいかん…!」

「ミスターリボルバーが、早く私のサインを欲しがっておりますので」

ディスクジョッキーの際に読み上げていた横浜のPNミスターリボルバーとは密輸業者のことであり、横浜の港にて小切手にサインし拳銃を受け取った三好は、氷室に残した言葉の通り高樹を飛び降り自殺に見せかけ始末することに成功。

前回から引き続き、女性ボスは有能です。

 

最近はコスチュームにも遊びが欲しいぜ…とOPで印象的な戦闘服に身を包んだMPは、ケイのディスクジョッキー放送中を狙い、ケイのサインをもらった氷室が単独でうごくことに。

「一人で大丈夫か?」

大丈夫だ、問題ないではなく「何かあったら頼む」と単身突っ込む氷室に危うさを感じたのか、悠子は靴底にしれっと発信機を仕込んでおり、いつでも居場所を把握できるようにしていました。

ラジオ放送中の曲を流す時間に、スタジオ越しで会話をする2人。

「敵のボスの始末は着いたの?」

「もうすぐだ…そいつは今、俺の目の前で喋ってる」

「うふ…氷室さん、武器の密輸は"買収"というベアリングで回転するという言葉があるの。ご存知?」

ケイはラジオの電波で暗号を送り取引をしていたことを氷室の前で白状するも、スタンばっていたスキンヘッドブラザーズが氷室を強襲、なんとMPのボスを捕らえることに成功し、女性ボスは有能揃いです。

 

発信機で動きを追っていた松村以下は、気絶させられ運ばれるキャップの姿に困惑しながらも後を追いかけることに。

そこに暴走族の妨害が入り、苛立ちを抑えられないマッスルチームを制して松村があえて誘いに乗ることで、相手を油断させるよう冷静に指示を出します。

「芹沢、あのうるさいゴキブリどもを、どっかに誘い込め」

※警察官のセリフです。

冗談はさておき、冷静なキャップの不在で俄然チームの頭の沸点が低くなってしまう中、氷室と同格の松村がサブリーダーとして冷静に振る舞える姿は、最高にカッコよかったです。

 

氷室を縛り付け、意趣返しの花爆弾を設置し爆発事故に見立てて殺害しようとするケイ。

「良いものはどんどん取れいれるのは、ジャパンマフィアのやり方だから」と大変嫌らしい物言いで、更に高樹の時同様マスコミすら操作して、平気で事実を捻じ曲げるケイの極悪さが、底の方にどんどんと突き抜けていきます。

冥土の土産にと、2つの教会の廃墟が取引場所だと聞かされた氷室は抵抗虚しく爆弾の隣に置き去りにされてしまいます。

「さよなら…負け犬さん」

 

暴走族を引きつけていた芹沢以外の4人は発信機の反応を追い、氷室救出に駆けつけます。

あわや無残氷室爆死のところを、ギリギリで救出に間に合い、まさかのミニチュア爆発!!!

救出はややあっさり進んだものの、直後に立ち上がって

「行くぞ!取引の現場だ!!」

と叫ぶ氷室キャップは安定のカッコ良さ。

 

言葉の通り、廃墟の教会で取引を交わしていたケイファミリーとクライアントのもとに、MPの爆走車が駆けつけ先制の発砲!

そこに暴走族を誘い込んできた芹沢も合流し、すかさず発砲!

「氷室…生きていた…!!」

爆弾で木っ端微塵にしたどころか、油断から取引場所までしっかりと教えていたことが完全に仇となり、やはり罠に嵌めようとしたら返り討ちに遭うのがこの世界のルール。

 

ここからは怒涛の銃撃戦となり、曲がりなりにもマフィアである暴走族はが意外と良い動きを見せたり、拳銃を乱発していたことで弾切れを起こした直後、ショットガンに切り替え対応する松村など見どころ満載!

車をよこすフリをし裏切ってクライアントを見殺しにするケイファミリーですが、ケイは氷室が車で追い、何故かシンメトリーで拳銃を構え出す進司と新田(直後、得意の股下発砲)はスキンヘッドコンビを見事ゲッツー。

前回の石上VS松村・芹沢もそうでしたが、一度してやられた相手に今度はこっちがやり返すという「借りを返す」文法は任侠映画の強い本作ならではといったところでしょうか。

 

最後は氷室とケイの迫力のカーチェイスバトルが展開され、冒頭からバーに突っ込む姿や、車の席越しに会話をする氷室とケイの描写があるなど、クライマックスをそのエピソードごとのポイントでしっかりと盛り上げようとしており、手堅いながら鮮やかな手並み。

しばらカーチェイスを展開したあと、逃げようとしたケイの車に氷室のドライビングショットが命中!

操縦不能になった三好カーは、崖から墜落のうえ爆発炎上というここに来て、ボスが射殺以外で処理されることに(今までで一番エグい殺し方)。

 

勝利と結果を得て、タバコを吸う氷室ですがその表情は重く、先程も横転した車に密輸した拳銃と札束が重なり、それを沈痛な面持ちで見つめるMPが描かれるなど、今回はやけに重苦しくオチに繋がることに。

「俺の勝ちだーーー氷室は密かに心の中で呟いた。しかし、その心は何故か晴れないままだった。

 確かに一つの戦いは終わり、マッドポリスは勝利を収めた。だが彼らの前には、まだ十数余人に及ぶジャパンマフィアの幹部たちの影が、巨大な壁のように立ち塞がっているのだ」

そう、自分たちはまた5人のボスしか始末できておらず、いつまたケイや高樹のような存在が襲ってくるかも分からず、マッドポリスの前途には未だ暗雲が立ち込めているのです。

 

 

前回に引き続き女性ボスの登場。

氷室と同等の射撃の腕を持ち、自身のラジオで取引の暗号文を流し、MPや三田村富樫を前にしても決して怯まない胆力も持ち合わせていることから、これまでで最強かと目されるボスでした。

また氷室とケイの絡みを通してMPとJMの表裏一体を表現し、氷室のネガ存在がケイであり、しかしそこに宿る意思の違いが勝負を分けることになる、という展開はベタながら面白かったです。

 

全体で見るとややあっさりめの氷室救出や、唐突に登場する取引場所の教会など、最後にかけて話が強引になってしまったのは残念だったところ。

また前回から氷室の迂闊レベルが高くなってるようにも見えるので、もう少し修正がほしいところです。

 

それでも前述の通り、クライマックスのカーアクションに繋がることで車関係の突飛な演出には最初はびっくりするものの、唐突にならずスムーズにカーチェイスを描いてくれたのは嬉しかったです。

暴走族の扱いはやや雑になったものの、サブリーダー松村を見せるために結果的には良い舞台装置となってくれました。

キャラの動きにもそれぞれ遊びか乗ってきており、作品の方向性が温まってきた頃かと思いますので、今後も楽しみにしたいです。

 


次回「殺しの追撃は、あなたもターゲット」

ついに出たメタ発言!