うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

そうよ私はマフィア座の男

大激闘マッドポリス'80

第10話「処刑儀式」

(監督:野田幸男 脚本:高田純)

 

総会屋(そうかいや) とは、日本において、株式会社の株式を若干数保有し株主としての権利行使を濫用することで会社等から不当に金品を収受、または要求する者および組織を指す。

(参照:Wikipedia


国内最大手の総合商社である栄光商事。

その乗っ取りを図るJM系総会屋のNo.1的存在・吹上政義の具体的な計画を探るため、氷室は芹沢と進司を総会屋見習いとして、そして悠子を吹上が通うクラブにホステスとして潜入させ動向を確認していました。

年商3兆円の利権をJMの手に渡さないため、氷室以下マッドポリスは2週間後に行われる栄光商事の株主総会までに何か動きがあると見て各々行動開始。


総会屋に潜入を続ける芹沢と進司は、栄光商事副社長の狭山と吹上が密会している現場を目撃し、更に彼らが共謀して社長の木田を殺そうとしていることを盗聴。

「木田は現場から叩き上げた技術畑のワンマン社長。あの時代遅れの頭に、近代経営を任されないというのがあんたの持論だったはずだ。我々はただそれを、手伝おうと言ってるだけの話だ」

今度の株主総会で次期社長に推薦してもらうことを条件に、狭山副社長は吹上の立てた社長暗殺計画を協力することになります。

一方、命が狙われている当の木田社長はというと、平日の昼間から歌謡ショーを観覧し道楽に耽っていた(笑)

まあこれでは時代遅れのワンマン社長と言われても仕方ない。

吹上のセリフにもある通り、木田は60歳でありながらかなり高齢社長なキャスティングとキャラ描写であり、逆に狭山副社長をビジネスマンとしての側面が強い見た目にすることでシチュエーションを補強してきます。


「部下に命狙われているのに、呑気なことで」

そんな木田社長を張っていた氷室、松村、新田の潜入ハブられトリオは(新田の金で)社長運転手を買収し氷室と交代、歌謡ショーが終わって出てきた社長に警護とは名ばかりの誘拐を行う。

ドライバー氷室は車内での移動中に、狭山副社長が吹上と共謀し社長暗殺計画を立ててることを告げ、しかし曲がりなりにも20年来の関係である腹心の裏切りと目の前の誘拐犯の言うことが信じられない木田社長に対し、自身を狙う暗殺カーが尾けていることを指摘。更に

「信じられないんでしたら、こっちから仕掛けてみますか?」

氷室は一気にスピードを上げ、展開される迫力のカーチェイス!!


暗殺カーの主(冒頭で芹沢と進司に総会屋活動を行わせるよう指示していた男)もドライビングテクと発砲!を組み合わせて応戦するも、更に後を尾けていた松村新田カーに挟み撃ちにされ車を土手に落としてしまう。

命の危険を理解した木田社長は氷室以下の言葉を信用し、改めて警護の依頼。

氷室以下はそれを快諾しヒーロームーブを見せる…かと思いきや、

「勘違いされちゃ困る。我々にとって、あなたがどこで死のうが問題じゃない。我々の目的はジャパンマフィアの陰謀を叩き潰す…それだけです」

※市民の安全と平和を守るべき警察官のセリフです。

ご丁寧に忠告だけに現れた誘拐犯を前にし、何だコイツ…という表情になる社長が大変良い味(笑)


同じ頃、吹上の動きを探っていた芹沢進司コンビは所長室にて吹上の婦人を名乗る怪しい2人組と遭遇。

しかしそれは罠であり、実は男だった婦人2人は鍛え抜かれたマッスルを見せつけた上、蹴り技で芹沢と進司をあっさり気絶させ、吹上はその様子を隠し部屋にて、爪に何かを塗りながら傍観していた…。

余談ですが、婦人の片方は時代劇においてその顔を知らない者はいないと言われる、伝説の斬られ役・故福本清三氏。

福本氏の現代劇での活躍どころか、細マッチョなスタイルと華麗なハイキックを見られるのは『マッドポリス』のみ!!(探せば他にもあるかもしれない)


閉店したガソリンスタンドの地下に設けられたJMの私設刑務所に閉じ込められた総会屋見習いの2人は、栄光商事のNo.2である金岡専務が電気イスで処刑される姿を目撃させられ、専務の登場はやや唐突だったもののノリノリで電気イスを作動させる婦人2人の悪辣さが強調され、JMの悪役強度がしっかりとキープできているのが本作らしい手堅いところ。

「妙な考えを起こしても結局死刑からは免れない。ま、せいぜい獄中生活を楽しむことだな」

凄惨な殺害現場にさすがに険しい顔になった2人に、爪を気にしながら笑いかける吹上のボス強度も高く、やはり悪役はここまでやってくれないとですね、ハイ。


場所は変わり、吹上はクラブにて社長暗殺計画を仄めかす発言をし、それを耳にした悠子は仲間たちに報告した直後に婦人2人に捕まってしまいます。

そんなことも知らず報告のみ受けたハブられトリオは、翌朝木田社長が汗を流すアスレティッククラブ(要はスポーツジム)に向かうも、そこはもぬけの殻であり、MPツートップは罠に嵌ったことを確信。

悠子が人質にされツートップはあわや蜂の巣、になる直前に別行動していた新田のフォローであっという間に形勢逆転し、有利だったはずの婦人2人を含む吹上構成員はすっかりへっぴり腰になり、婦人2人はあっさり撤退。

罠に嵌め以下略。


後の無くなった吹上は暗殺カーの主・平山に総会屋見習いの処刑を命じ、計画を早め社長暗殺を明日決行することに。

処刑が決まっていたその頃、芹沢は獄中生活の影響で幼児退行し、植物を愛でていた。

もちろんそれは看守を油断させる演技であり、不意打ちで牢獄の鍵を奪い取った総会屋見習いは、全く働かない監視係と監視用のクセに何故か動き回るカメラの死角を駆け抜けながら刑務所にやってきた平山の身柄を確保。

構成員のレベルは岩崎軍団に比べて下がりに下がりまくってますね…。


直後、社長暗殺計画の内容を探るため平山を電気イス(出力が低い段階からスタート)で取調べとは名ばかりの拷問を行い、さっきの険しい顔は「俺たちだったら、もっとじっくりやるのにもったいねぇなぁ…」みたいな表情だったようにも見えてきて、本当に期待を裏切らない。

徐々に出力を上げ、木田社長の別荘で"パーティ"を行うために夜中の12時に社長を誘拐する計画をがあることを聴取した総会屋見習い改めMPヤクザコンビの連絡を受け、氷室以下は自宅にて趣味の音楽鑑賞に興じていた木田社長の安否確認に向かう(その際あっさり風味にノルマ達成)も、一歩遅く社長は既に眠らされ婦人2人に誘拐された後でした。

同じ頃、栄光商事の株主総会が行われる会場にて、自身がその場を取り仕切る姿を妄想し自己肯定力を高めていた吹上は、そこで3話ぶりに登場した三田村富樫と接見。

いやぁ私もそういう経験あるよと親近感を醸し出す富樫ですが、

「まあ、遠慮しとこう…君たちの"パーティ"は我々の神経には耐えられんよ」

「まあ、せいぜい楽しくやることだ」

圧力を掛けに行ったら何となく察しの付く"パーティ"に誘われるというカウンターを喰らい、やんわりお断りすることに。


直後、薄明かりの間にて吹上と狭山副社長を含む女装した男たちが美川憲一の歌を歌いながら酒を飲む謎の会="パーティ"が執り行われ、そこにメインゲストとして身ぐるみ剥がされた木田社長が車椅子に縛られ登場し、ムチで痛めつけられることに。

「どうせ秘密パーティで変死するスキャンダル社長だ。思いっきりぶちのめしてやれ」

木田社長が読んでいた新聞にて、電気イスで処刑された金岡専務が自殺扱いになってたことを伏線として妙な殺し方にこだわる吹上を描いていますが、とりあえず殺してから題名考えましたみたいなやっつけ感がいっそ清々しい(笑)


木田社長にトドメの毒注射が打たれる直前、正義の破壊者MPが駆けつけ、痛めつけられ意識の朦朧とする社長を中央に配置し展開される発砲!の応酬!!

これ絶対社長にも弾当たってると思うのですが、もしかしたら社長も未確認生命体…?

弱点であるどたまをぶち抜かれそうになる社長を守りつつ(今回は新田が大活躍)、狭山も射殺し、吹上と福本婦人を追い詰めるも庭石を盾にされた氷室は、すかさず今日の隠れMVP新田の持ってきた庭石を粉々にする破壊力を秘めたMPスナイパーライフルを持ち出し、福本婦人を撃ち抜き、さすがの散り際を見せた後盾の無くなった吹上をゆっくりじっくりと狙いを定め…発砲!!で処刑執行。

今日もマッドポリスは勝利を収めました。


時間は経ち、栄光商事株主総会当日。

木田社長の命の危機を救ったMPは、総会にて感謝状を渡されていた…なんてことはなく、場外の階段に締め出されていた(笑)

ちゃっかりと社長親派の株主を抱え込んでいた木田社長は株主総会にて、数日前に死ぬ寸前まで痛めつけられていたことなど何のそのという姿で堂々と総会を仕切り、JMに栄光商事が渡らなかったことを行動で示したのは印象的。

「しかしあのおっさん、俺らに何の挨拶もねぇよ」

まあ、どっかのキャップが正式な警護依頼断ってましたから、自業自得ですね。

その当のキャップ、クールに無言で去ろうとするも総会の看板にタバコを押し当てるという微妙に人間の小ささを見せて今回は劇終。

「栄光商事の株主総会は、狭山を欠いたまま行われ、現木田体制の存続は圧倒的多数で可決した。

 しかし氷室には、ジャパンマフィアがこのまま身を引くとは到底信じがたかった。次にこの悪の組織はどんな手段を講じて、マッドポリスに挑戦してくるのだろうか」

 

 

本作では初めて2話連続で同じ監督の作品じゃなかった上、初の2回目のローテ担当としてサードパイロットの野田監督が再登板。

脚本の高田さんと併せて第5話と同じ布陣となりましたが、容赦の無い拷問、凄惨な殺害現場、車同士がぶつかり合うカーチェイスなど、前回登板で印象的だった点を残しながら、細かい部分に伏線を散りばめ話の流れに説得力を持たせる非常に安定感のある仕事っぷりを見せてくれました。

予告と動画サムネの段階では10話目にしてついに崩しに入るのか色々とヒヤヒヤしましたが、いつもの雰囲気を消すことなく新しい見せ方を考えてるようでとりあえず一安心。

 

また、前回の浅倉に負けず劣らずのゲスト陣が非常に魅力的で、なんとなく正体の予想できた吹上を隠れ蓑として自身もおかしな格好に身を包む狭山副社長は確かに前衛的で、秀逸なキャラ描写でした。

その対比として、半分耄碌してるような状態の時代遅れなワンマン社長と言われていた木田社長は冒頭から妙に肝が据わっており、更に最後はちゃっかり親派の株主を抱え込む政治力の高さも見せるなど、やり手社長としてきっちりと描かれ、現体制に不満を感じ反乱を起こそうとするも、結局現役ボスを崩さないサラリーマンの悲哀を感じ取ることができ、割と現代でも通用しそうなテーマが展開されたことに率直に驚きました。

男女平等や性差別などが騒がれる現代において今回みたいな描写は色々難しそうですが(富樫が我々の神経には耐えられないとか言っちゃってますし)、40年以上前にこういうシーンがあるというのはまた一つ勉強になりました。

 

もう一つ、今回注目だったのは氷室が木田社長の警護依頼を断っていたこと。

美術館の地下金庫襲撃の際に会議で一般市民が巻き込まれることを考慮する姿こそ描かれていましたが「傷つけることは無いながら、守ってやることも無い」というMPのスタンスは唯一無二。

OPナレーションでも宿願はJMの壊滅のみで、もちろん名誉欲しさに敵を倒しているワケではないMPですが、考えてみれば彼らの勝利は讃えられることも無ければ一般に知られることも無いというのはダークヒーローとしては王道ですが、終盤に向けてこの要素を拾って広げてくれれば嬉しいところ。

マッドポリスとジャパンマフィアの大激闘は、このまま歴史の闇に葬られてしまうのか。

楽しみにしていきたい部分です。

 

 

次回、燃えろ進司!!