お世話様です。
とうとう2021年も12月に入りました。
コロナ禍に突入してからもう2年近く経ち、時間の流れの早さを痛感します。
今後も感染が収まって、ゆくゆくはマスクを外せる日が来ると良いですね。
さて、今回は以前の記事にて少し触れた作品のまとめ感想になります。
該当記事↓
※本文はあくまで劇中設定の羅列を含めた個人の感想を書いてる記事であり、ネタバレや不快感を覚える内容もあるかもしれませんので、事前にご了承ください。
スーパー戦隊勝手にまとめ
第14作品目
『地球戦隊ファイブマン』
(1990〜1991年放送)
あらすじ:
宇宙開拓が進んだ時代、惑星シドンにて絶滅種である"シドンの花"の再生に勤しむ星川博士夫妻と5人の子どもたちの前に、銀河の星々に破壊をもたらす銀帝軍ゾーンが侵攻してくる。
星川夫妻は子どもたちをアーサーG6に託し辛うじて地球に逃がすも、消息不明となってしまう。
それから20年…立派に成長しニュータウン小学校で5人揃って教師となった星川兄妹の前に再びゾーンが現れ、学校は無惨にも吹き飛ばされてしまう。
怒りと復讐心を燃やす星川兄妹は長男・学を中心として、20年の間に備えてきた武装でゾーンに抗戦の意志を叩きつける。
地球を、そして学校の子どもたちの未来を守るため、銀河を守る最後の砦・地球戦隊ファイブマンの戦いがここに始まった。
登場人物:
ゾーンに両親を奪われた星川兄妹が変身する5人組の戦士。
普段生活しているマグマベースはファイブマシンを搭載している基地でもあり、かつて惑星シドンから地球に帰還した宇宙船でもある。
各人の戦闘スタイルや個人武器に大きな違いは見られないもののブラザーアタック、アースカノン、スーパーファイブボール、ファイブテクターなど豊富な武装が揃っており、兄妹戦隊ということもあってか5人が揃って戦うことが特に重要視された戦隊となっている。
以下、メンバー。
星川学/ファイブレッド
星川家の長兄でファイブマンのリーダーも務める一家の大黒柱。
担当教科は理科であり、父母との思い出であるシドンの花を地球でも咲かせようと研究も行っている。
誰に対しても心優しく接することのできる好青年でありながら、冷静沈着に状況を見極めることができる優秀なリーダーで、逸りがちな兄妹たちを止めるシーンがよく見られる。
両親と離れた際の年齢が7歳であることから兄妹の中でも特に両親との思い出が深く、それが却って自分自身へのプレッシャーにもなっている。
特技は子どもたちに青空教室で指導する様子も見られた剣道で、それは変身後の戦闘スタイルにも大きく反映されている。
赤ジャンパーにネクタイが印象的な格好だが、中盤では白ジャケットに赤シャツという冴羽遼のような服装に変わり、当時のお姉様方に人気だったとか何とか。めちゃくちゃカッコいい。
「身を捨ててこそ、活路は開けるんだ!!」
星川健/ファイブブルー
星川家の次男で学に次ぐ年長者。
爽やかで行動的な性格で、体育教師として子どもたちに運動することの大切さと楽しさを教えている。
学が温厚な分、戦いにおいては一転してシビアな思考が目立ち、時には一般市民や兄妹にさえ厳しい言葉を掛けることもあるが、学が不在の際は次男として兄妹を引っ張るなど、使命感と責任感の強さは学にも負けてない。
初主役回が第11話と遅めで前半はやや不遇な印象を受けるが、鍛え上げた肉体でファイブテクター初装着を担当するなど印象的な活躍も多い。
「人間に不可能は無いんだ!跳び箱だって同じだぞ!!」
星川文矢/ファイブブラック
末っ子双子の三男で国語教師。
宇宙の言語にも精通しており、異星人とコミュニケーションを取る際などに活躍する。
末っ子らしく甘えん坊でお調子者な部分があり、兄妹たちに注意されることもしばしば。
20年前の惑星シドン襲撃の際は双子のレミ共々生まれたばかりの赤ん坊であり、上3人に比べ両親との思い出は無いに等しいことを寂しく思っている。
「俺は言語学の天才、伊達に国語の先生はしてませんよ」
星川数美/ファイブピンク
包容力のある星川家の長女で、算数の教師であることから頭の回転も早く、ファイブマンの頭脳担当でもある。
一家の家事はアーサーと手分けして行っているようだが、あまりその描写は見られない。
3番目ということでちょうど兄弟の真ん中に当たる立ち位置で、学と健がいることから長女としては存在感が薄く、アクションの出来るレミに比べてもやや不遇な扱いを受けている。
その影響からか、髪型をちょくちょく変えて可愛らしさをアピールしている。良い。
レミ以上に背が低く、学や文矢と並んだ際の身長差が激しい。でもそこが良い。
「地球の子どもだろうと、宇宙の子どもだろうと、算数の分からない子を放っておけないわ」
星川レミ/ファイブイエロー
カンフーを得意とする星川家の次女で、文矢とは双子。
音楽教師として歌うことの楽しさを子どもたちに教えている。カンフーの舞を見せながら(『ファイブマン』世界では音楽教師のカンフー履修は必須な模様)。
演じる早瀬恵子(現:成嶋涼)氏が当時倉田プロ期待のホープということでひたすらアクションを見せる役割であり、レッドの学と同じくらいの見せ場が用意されている。
文矢と同様に両親との記憶はほとんど無く、両親の温もりを恋しく思っている。
「星川レミがドレミのレミだってこと、教えてあげるわ!!」
ファイブマン関係者
アーサーG6
星川夫妻が製作したサポートロボットで、両親とはぐれた学たち5人にとって母親同然の存在。
時に厳しく当たられたりして実の親ではないことを嘆くこともあるが、星川兄妹からは強く信頼されている。
戦闘においてもファイブロボやスターキャリアを操縦して助けに入ったり、必殺バズーカ・アースカノンに変型して銀河闘士を葬るなどファイブマンの心強いサポーターでもある。
星川博士・星川緑
星川兄妹の父母。
20年前のゾーンの襲撃から幼かった学たちを守るために生死不明となってしまう。
マグマベース含むファイブマンの武装のほとんどが博士による発明品であり、また新たに作られたスターファイブもグンサーによって学たちの手に渡るなど、行方知れずになった後も我が子を遠くから支えていた。
宇宙の暴れウルフ・グンサー
刺激的な戦いを求め宇宙をさすらうケンカ番長。
ファイブロボによく似たスターファイブを駆って地球を訪れたことから星川夫妻との接点が疑われたが、結局大事なことは話さずに石になって宇宙に放り出されるという第二のレー・バラキ(『超新星フラッシュマン』)と化す。
…と思いきや、終盤において再登場を果たし、ファイブマンの危機を救うことになる。
演じるは《戦隊》シリーズのロボを多く担当していたスーツアクター・日下秀昭さん。
ファイブくん人形
文矢が生徒たちと一緒に作った人形劇のぬいぐるみで、ファイブマン5人とガロアの人形が登場。
本編に一度登場して以降、謎空間から視聴者目線でメタ的なツッコミを入れる、という色々踏み込んだ設定のキャラクターになってしまう。
ことあるごとに逆張りしてくるガロアくんを5人でフルボッコにするという流れが定番化しており、世の理不尽さをまざまざと見せつけてくる。
銀帝軍ゾーン
銀河の999の惑星を滅ぼしてきたエイリアン軍団。
銀河戦艦バルガイヤーを拠点とし、地球を1000個目の滅亡の星とすべく行動を開始する。
星々から集めた銀河闘士を主力怪人とし、後半では2体を掛け合わせた合身銀河闘士が登場する。
組織独自の通貨が発行されていたり、「逆さまデー」という最下層の身分の者でも下剋上を狙える制度を設けていたりと悪の組織としては他に例を見ない奥行きを感じることができ、組織のスケールの大きさが窺える。
銀河皇帝メドー
これまでに999の惑星を滅ぼし、そこに息づく生命を吸い取ってきたゾーンの支配者。
「天に浮かぶ巨大な女性の顔」という凄まじいインパクトの見た目を誇り、失敗の多い幹部に対してもチャンスを与える寛容さを持っているなど、悪の親玉として底知れないカリスマ性を秘めている。
その正体はバルガイヤーの中に隠されているようで、それはシドンの花とも深い関係がある模様。
「だがその自惚れの強さが気に入った」
ガロア艦長
バルガイヤーの艦長にしてゾーンの最高幹部。トレードカラーは赤(黒?)。
冷酷かつ残忍な性格であり身内からはあまり信頼度は高くないものの、強い使命感と優れた剣技を始めとするその腕っぷしでゾーンを率いている。
シドン襲撃の際に幼かった学の銃撃によって傷を負っており、学とは強い因縁によって結び付けられている。
しかし中盤、作戦の失敗続きとシュバリエ復帰が重なったことで艦長から掃除係に降格しギャグキャラと化してしまうなど、本作の迷走の影響を特に受けてしまった人物となる。
どんな乗り物でも運転できる特殊な免許証を持っている。
「教えてやろう…皆そう言いながら死んでいったのだ!!」
銀河剣士ビリオン
酒と戦いを愛する戦闘狂の剣士。トレードカラーは青。
勝つためには手段を選ばない狡猾さを持ち、自身と関わりの深い人物さえも作戦に利用する時がある。
銀河中に一癖ある知り合いが多いようで、それらの影響で散々な目に遭うこともしばしば。
序盤で一当たりあったことから、学に対してライバル意識を抱いている。
「頑張るな。それでいいんだ…これで貴様らとの戦い、銀河の歴史に残るぜ!!」
銀河博士ドルドラ
ゾーンの発明担当であり作戦の指揮回数も多い現場主義の女性科学者(独身)。トレードカラーは黄または金。
理系でありながら高い戦闘能力を有しており、ザザを連れてファイブマンに戦いを挑むことが多い。
また現場に出向くことが多いことから変装が得意であり、レベルが高すぎて逆に一般的な不審者として警備員に連れてかれそうになったこともある程。
メドーに対して幹部勢の中でも特に強い忠誠を誓っており、それが終盤において彼女の運命を大きく左右することになる。
「これは悪魔の銀河酒、地球を酔わせてご覧に入れましょう」
銀河の牙ザザ
ゾーンの特攻隊長を務める改造生命体。トレードカラーは紫。
ドルドラの改造によって生命を繋ぎ止めた経験があり、逆さまデーでも態度を崩さない程ドルドラに忠実で、最期まで彼女のもとを離れることは無かった。
ニンジャのような素早い身のこなしを誇り、主にカンフーを得意とするレミとマッチアップすることが多い。
卵の殻を半分被ったような頭をしているのと関係あるかは不明だが、卵から生まれる種族であるとのこと。
「人生色々、ということですな」
銀河商人ドンゴロス
巨大な顔に手足が付いて、鼻から触手が出たような気持ち悪いデザインの商人。
関西弁のような口調で金にがめつく、手持ちの算盤のようなもので常に金勘定を行い、作戦の時ですら損得を計算している。
そのためゾーンにいながら組織への忠誠心は低く、幹部が次々倒れていった際も金を持ち逃げしようとする強欲さを見せた。
序盤は予告ナレーションを担当していた。
「来週も見なきゃ損やで!」
初代艦長シュバリエ
ガロアの前任としてバルガイヤーの艦長を務めていた"銀帝軍ゾーンのヒーロー"。
人心を掌握することに長けており、ガロアと違い部下から厚い信頼を寄せられている。
作戦においては敵の心理を深いところまで読むことで隙のない策を展開することが多く、ファイブマンを幾度もなく壊滅の危機に追いやった。
艦長引退してからの生活に退屈を感じていた中での戦線復帰となったことで、ただ戦いに勝つだけでは物足りないようであり、ファイブマンに対しても余興のようなアプローチを見せるなど独特な美学を持っている。
拳銃に変型する剣を武器とし、ガロアに勝る剣技で彼もまた学をライバルと認定して挑みかかってくる。
演じるのは『フラッシュマン』のグリーンフラッシュこと植村喜八郎さんで、元々美声だなと思っていたらほぼ毎回華麗な歌声を披露するという大変よく出来たキャラクターなのであります。
「銀河にヒーローは、1人…フッ!」
8年後の星獣戦隊もあっと驚く、ゾーン発の悪の異星人戦隊。
初登場時は正義の味方のフリをして地球人の心を掴もうとするも、ファイブマンに阻まれ返り討ちに遭うという一発ネタのような扱いに終わった。
…と思われたがちょくちょく再登場の機会があり、最終的にはシュバリエの直属の部下という確固たるポジションを形成、終盤までファイブマンと競り合う大車輪の活躍を見せた。
星獣戦隊との大きな違いは、ファイブマンのカラーに合わせる都合でグリーンではなくブラックがいること(え)。
「私たちは宇宙の平和を守る、愛と正義のエイリアンです」
ポイント:
最初の最初に、これまでの《戦隊》まとめ感想ですとポイントとしてここから作品の良かった点、問題点をツラツラと書いていって、最後におすすめのエピソードを数話ピックアップするという方式を取ってきました。
↓参考程度に。
しかし本作、キャラクター紹介の時点で4000字を突破するなど語りたいことが山のようにあり、数話程度のピックアップでは収まらないことが記事を書いてて分かった次第。
そのため今回の記事は様式を少し変えて「紹介したいエピソードをジャンルごとに仕分けし、エピソードに沿いながら本作の魅力を掘り下げる」という形式で進めていこうと思います。
ですので毎回のことですが、今回は特に話の核心やエピソードの展開に濃く触れる形式になるので、ネタバレや個人的な意見が強く出る文章になります。
キャラ紹介の段階で苦手だと思った方、ここから先は自己責任でお願いします。
・はじめに
〜本作における「地球戦隊」とは?〜
現在もなお続く《スーパー戦隊》シリーズ。
その第14作目となる本作は90年代に突入した初の作品となりましたが、80年代後半からシリーズが抱えていた「マンネリ化に伴う迷走」が如実に顔を出した作品となりました。
そういった"闇"の部分が噴き出している一方で、本作が新たな時代のスタートとなったことにより、これまでの積み重ねと、次作へと繋がる新たな挑戦が噛み合うことで掴めた"光"の部分が際立っていたとも感じることができました。
この章では物語の導入として強烈な印象を与えた第1.2話から、本作の魅力を掘り下げていきたいと思います。
第1話「五兄弟戦士」
第2話「父の仇!母の仇」
(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
始まりの第1回目。
劇中の時代設定は放映当時と同一ながら、第1話から本作の持つ独特な世界観を『大戦隊ゴーグルファイブ』からシリーズ構成を務める脚本家曽田博久氏と、『光戦隊マスクマン』以降4年連続でパイロットを担当することになった長石多可男監督の両名が印象的に表現。
20年前から既に宇宙開拓が進んでいる世界において星川家は辺境の惑星に移り住んでおり、そこを銀河の破壊者集団ゾーンが襲撃し、5人の子どもとアーサーのみが地球に帰還。
上記の展開を冒頭8分という短時間で成立させ、なおかつそこに「銀帝軍ゾーンの脅威」「懸命に育てた花は枯れ、原住民の子どもはその場で死亡、更に両親とも引き剥がされるという悲劇」「苦し紛れの発砲で敵のリーダーに傷を付け、因縁の相手として設定」という今後の展開における重要なタスクを大量に詰め込んでおり、導入としては今後の《戦隊》シリーズと比べてみても上位に入るクオリティだと思われます。
設定面においてもシリーズ初の兄妹戦隊が採用されたことで、兄妹5人+親代わりのサポートロボットというメンバー構成に《戦隊》らしいチーム性のみならず「家族」という要素も付加したのは、今後のシリーズにおいて大きな第一歩だったと思われます。
また本作におけるもう一つの特徴として、全員が教師として務めている点が挙げられます。
元来《戦隊》シリーズにおいてはメインの視聴者に寄り添う目的で、戦隊メンバーが子どもとの交流を持つことが多々あるのですが、色々見ていると「設定的に子どもとの交流あるかこの人…?」という疑問が度々噴き出してくることがありました。
その点、本作においては、小学校の教師という役職を設定することで「先生と生徒」という身近ながら確実な接点で大人(ヒーロー)と子ども(視聴者)を結びつけることに成功。
更に中盤以降は"兄弟先生"という都市伝説的な存在としてあらゆる子どもたちのもとへ出張し、それぞれの得意科目を教えるという本作特有の話運びを展開するに至るのです。
突っ込みどころとしては先生という接点が便利過ぎるあまり、体育の健以外のメンバーのアプローチに大きな違いが見られないことと、末っ子2人の20歳という設定(現実世界だと教員免許取得は最短でも22歳から)。
しかし本作では先述の通り、宇宙開拓の進歩が現実世界とは大きくかけ離れたものとなっており、現実にある教師という職業の違いにおいても「そういう世界なんだな」と納得できる範囲だと思われます。
マンネリ化が進んでいた《戦隊》シリーズにおいて"新たな挑戦"を打ち出しつつ、これまでに蓄積してきたシリーズのノウハウを活かして設定を強固なものと昇華しており、熟練の技と挑戦心が結実した、90年代の新たなスタートとしてこの上ない第1話なのです。
そのような初回でスタートした『ファイブマン』ですが、当時の放送枠は25分番組でOPやED、CMを除けば正味20分程度しかない本編において描写できるイベントは限られており、第1話の後半では個別メカのドッグファイトがメインで進み、ヒーローの本格的な戦闘が描かれず次回に流れ込むという、後の《平成ライダー》シリーズに通じる構成に。
しかし、主人公たちの喪失とゾーンの悪辣さをこれでもかと強調した初回に続く第2話においては、"ファイブマンというヒーロー"を力強く定義。
第2話冒頭、バツラー兵が操縦するゾーンの戦闘機バルゴールを撃墜し、それぞれのメカから降り立ったファイブマン。ガロアたちの前に姿を現し、各々がゾーンに対し口上を切った後にファイブレッドがここで力強く宣言。
「おまえたちがいつの日か、必ず地球を攻撃してくる事を予想し、俺たち兄妹5人、地球を守る為の戦士となる事を誓った!
それが地球戦隊・ファイブマンなのだ!!」
字面からは漠然とした雰囲気と言いますか、悪い言い方をするとネタ切れ感の否めない戦隊名を持つ本作のヒーロー、両親の仇を取るという目的が始まりでありながら教師となり、生徒たちという地球の未来と常日頃接している彼らにとって、ゾーンと戦うことは未来を守ることに他ならないのです。
「地球戦隊ファイブマン」という名前には、地球を代表して銀河の悪に立ち向かうという5人の兄妹の強い意志が込められており、シンプルな戦隊名に秘められた強い決意を、ゾーンに向けて叫ぶファイブマンが実に劇的。
第2話のその後に関して、復讐心に逸り敵基地に突入して追い詰められた健たち4人のもとにマシンガン引っ提げて救援に駆けつける学兄さんというトンデモっぷりが見られるものの、未だ長兄と弟妹たちに温度差があった、という展開になるので若干台無し感は否めないのですが(笑)
それでも学たち5人は因縁の敵を前に、"地球を守る戦士"として改めて名乗りを上げる。
「星川学!ファーイブレッド!!」
「健!ファイブブルー!!」
「文也!ファイブブラック!!」
「数美!ファイブピンク!!」
「レミ!ファイブイエロー!!」
「地球戦隊!」
「「「「「ファイブマン!!」」」」」
80年代後半、新たなヒーロー像の模索という要素が顔を出し始め、生き別れた両親を探すために地球に戻ってきた『フラッシュマン』、レッドと敵組織の女性とのロマンスが展開された『マスクマン』、かつての友と戦うことになる『ライブマン』など、戦隊の戦いに個人的な動機付けの設定という方向性を色濃く目指した結果、ヒーロー性が減じてしまうことに。
逆に単純明快な王道ヒーロー路線を目指したと思われる『ターボレンジャー』はヒーローとしての描写はよく出来ていたものの、レッドを始めとしてやや完璧超人の集まりが過ぎて個性が薄れてしまった印象を受け、バランスを取るのに当時のスタッフの苦心が窺えます。
そういった試行錯誤があってか、本作は「両親との別離を引き起こしたゾーンへの復讐心」が根底にある星川兄妹に地球を守る戦士として、そして生徒(子ども)を未来へ導く教師(親)として戦いの場に立たせることで、悲劇性の強かった導入をスプリングボードとして"地球戦隊ファイブマンとはいかなるヒーローか"をしっかりと定義付けし、ヒーローの誕生も劇的に仕上がったということになるのです。
・ファイブマンの戦力
〜個性的な武装・ロボセレクション〜
劇的な始まりを見せたファイブマンとゾーンの戦い、地球の戦士として立ち上がった星川兄妹ですが正直言ってファイブマン、弱いです。
第1.2話こそ初登場補正でゾーンを圧倒したファイブマンですが、やはり999の星を滅ぼしてきてゾーンの戦力は甘くなく既存の武器は簡単に攻略され、特にシュバリエが登場してからはこれまでの戦法が通用しないことがほとんどでした。
そのため後半の星川兄妹は戦力増強が常に課題として付き纏っており、必殺武器や巨大ロボのアップグレードが頻繁に行われていたのが、本作の特色でもあります。
この章では武装・ロボに関して印象的だったエピソードを紹介しつつ、その中身を洗い出していきたいと思います。
第7話「45mの小学生」
(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
ドンゴロスが引き連れてきた巨大な銀河闘士サイラギンにファイブマシンで立ち向かうファイブだったが、仕掛けられていた罠によってファイブロボ合体不能に陥った上に数美がマシンから投げ出されてしまう。
暴れるサイラギン…と思いきや巨大な鉛筆が足に突き刺さり泣き出してしまい、何とサイラギンは巨大な小学生であることが判明。
算数が嫌いで学校から逃げ出したサイラギン(学校自体は好き)に種族や大きさの違いをものともせず、数美先生は算数の授業を開始する。
「異星の小学生を相手に算数を教える」という本作の設定を活かした自然な流れで展開される数美の主役回。
冒頭から個別メカの活躍とピンチが描かれ、終盤の巨大戦においてはファイブロボがサイラギンをゴルリンから守りながら戦うという珍しい趣向も見られます。
それだけではロボ戦セレクトとしては大したエピソードではないのでは…?とお思いの方、ご安心ください。
一番の見どころは、ファイブロボが戦闘機バルゴールを撃墜することで減った戦闘機の数を計算、つまり敵を倒すと同時にサイラギンに引き算を教える姿を見ることができるのです。
戦士として敵と戦い、教師として算数の出来ない生徒をしっかりと指導、そしてそんな戦闘の様子を爽やかなEDインストが盛り上げるという軽い狂気。
こんなエピソードは『ファイブマン』くらいでしか見られないと思い、ロボセレクションの一つとしてピックアップさせていただきました。
それと今回、合体の際に流れる激アツ挿入曲「五つの心でファイブロボ」が初めて使用され、今後も印象的な使われ方をされることに。
「悪の計算通りにはいかないわ!!」
第29話「合身VS合体」
(監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
ドルドラの開発したフランケンカプセルによって、より強力になった合身銀河闘士カニアリギンが早々に巨大化してマグマベースを急襲。
強力な敵の襲撃にスーパーファイブロボですら苦戦し、更にドンゴロスやビリオンまでもがマグマベース内部に侵入したことで窮地に陥るファイブマン。
ファイブマンの基地であり、星川兄妹の"ホーム"でもあるマグマベースを守るため、限界を超えた学はベースに秘められた真の力・マックスマグマを起動させる!
「合体!マックス・クロス!!」
前作で登場した基地型巨大ロボ・ターボビルダーの好評を受け本作は第1話からマグマベースとして巨大基地を登場させ、第29話にてついに巨大ロボへと合体。
ゾーンから逃げ帰った宇宙船から始まり、普段は星川兄妹のホームでありファイブマンの前線基地、そして(特に学にとって)両親との思い出が詰まった大切な場所であると序盤からしっかりと描写できていたことから、その登場に至るまでの流れは燃えること間違いなし。
まあしかし、このマックスマグマ…登場はこの回と、あともう一回だけなんですけどね……。
「父さんと母さんの作った基地を、汚すやつは許さん!!」
第38話「偽兄弟先生」
(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
「僕たちの分校に、兄弟先生がやって来てから一週間経った。
はじめは夢でも見てんのかと思った。
でも夢じゃない。
本当に東京から、あの噂の兄弟先生がやってきたんだ」
とある田舎の分校にやってきた都市伝説こと兄弟先生、子どもたちは喜び先生たちの指導を受けるが、その様子は普段の星川兄妹からは大きくかけ離れていた…。
そこを偶然訪れた文矢が目にしたもの、それは兄弟先生に扮したゾーン幹部の姿!!
この作戦を指揮するシュバリエ(化粧を落とし健に変装)の狙いは分校の校舎地下に埋まる銀河の猛毒・アンモナイトンを掘り出すことにあり、猛毒を悪の手に渡さぬため、本物の兄弟先生は新たな武装を纏い強敵シュバリエに挑む!
冒頭、純粋な少年のナレーションから始まり、星川兄妹が今日も出張してるのかな…と(前回の予告を忘れ)ほんのり構えていたら、まさかの開幕ゾーンコスプレ大会という落差が面白すぎるアバン。
学や数美にそれぞれ扮装するガロアたちの配役も絶妙で、何とも形容しがたい面白さが流れるようにアバンから供給されます。
一応このエピソードの主役は文矢に当たりそれ相応の活躍ももちろんあるのですが、変装においても良い味を出し、子どもへの接し方にも普段から発揮しているカリスマ性が垣間見える敵幹部シュバリエの主役回でもあると考えます。
『フラッシュマン』ではヒーローを演じたこともあってか声に迫力があり、"ゾーンのヒーロー"として君臨する初代艦長は初登場以降ファイブマンを苦しめる作戦を多く展開し、半数以上のメンバーを戦闘不能にすることも複数回あって、歴代の追加敵幹部と比べてもかなりの実力者。
「そうだね、いけないね…約束を破っちゃ…!!」
正直このエピソード、他の章で紹介するか悩んだのですが、振り分け的にこの章でも書けるから書いてしまおう!と思った話。
さて、本題のこの話の武装・ロボ要素について、現在の《戦隊》シリーズでは珍しくない"強化変身"その先駆けと言える追加武装・ファイブテクターが登場するエピソードになります。
厳密に言うと、このエピソードの前回である第37話(別項で紹介)からの登場になるファイブテクターですが全員装備が今回で初となり、これまで単純な戦闘力では負けが混んでいたシュバリエに対しても正面から攻撃を受けガードする姿を見せ、これ以上ないパワーアップのアピール。
デザインが割とのっぺりしている印象のファイブマンにマッシブさが加わり、見た目的にも力強さが増しシンプルにカッコ良くなったのも強化変身としても秀逸です。
本作を視聴する前から非常に気に入っていた武装で、いざ本編見てみるとそれ以上の衝撃があって、やはり大好きな装備となりました。
「必殺!ファイブテクター!!」
以上3話が、武装・ロボセレクションとなります。
他にもファイブロボに似た赤い兄弟ロボ・スターファイブやアーサーが変型する必殺バズーカ・アースカノン、伝統のスーパーファイブボールなど個性的な武装は多く、現代の《戦隊》シリーズに繋がる多彩さを『ファイブマン』は持っています。
ちなみに筆者はファイブロボとスターファイブが合体(スーパーブラザージョイント)したスーパーファイブロボがデザイン・本編での活躍引っくるめて大好きなロボで、DX玩具まで揃えてしまいました。
いつかマックスマグマも手に入れたいですね…(遠い目)。
といったところで、武装・ロボに関しては以上。
次の章に行きたいところなんですが…少し文量が多くなり過ぎたので、残りは後編に回します。
設定面や世界観の説明がメインとなった前編とは打って変わって、後編では本作が『ファイブマン』たりえる特徴的な部分をより拾っていこうと思います。
よろしければもう少しだけ、お付き合いいただけたらなと思います。
それでは。
「銀河に一つのこの星を、
守りたまえ!!」