うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマントリガー「救世主の資格」

ウルトラマントリガー

第19話「救世主の資格」

(監督:田口清隆 脚本:根元歳三

 

田口監督が負けた。

 

真っ先に抱いた感想がこれです。

あと、OPで何が出るか分かってしまうのもなんとかしてほしい。


「皆、幻を現実と信じ込んでいたのか…」

前回の反省会を行っていたGUTS-SELECT(イグニスもすっかり輪の中に)のところに、第10話以来のジャーク会長がご登壇し、ナースデッセイ周辺で人間の欲望や願望を増幅させる未知の宇宙線モルフェウスRが観測されたことを告げる。

「でもよ、ユナだけ何で無事だったんだ?」

「そんなことより分析が先だ」

せっかくセリフを与えられてもサクッとぶった斬られてしまうマルゥル隊員にはもはや乾いた笑いしか出ませんが、モルフェウスRが地上でも観測されたことから調査を開始し、ユナはそこで怪しいやつセンサー(第4話でイグニス研究員を探知した)を発揮し不審な男を発見する。


「トリガー…マナカケンゴの中にはまだトリガーが……?」

「ハッ!夢でも見たのではありませんか?」

一方、海底でもヒュドラムが前回のフィードバックを行おうとしたものの未だ夢気分が抜けないカルミラ大先輩に嫌味を飛ばし、パワハラ鞭でしばかれたことで伝家の宝刀・沸点15°を見せつけとうとう取っ組み合いのケンカに。

ギリギリまで無関心を装うダーゴンの距離感も相まって、解散寸前のお笑いトリオ感が妙に面白い(笑)

掴み合いの解散騒動はとうとう地上にまで舞台を移し、登場した描写を見るにこれまでアジトとしていた海底は別次元なのでしょうか。

「カルミラ…ヒュドラム?仲間同士で何で!?」

とうとう堪忍袋の緒が切れた闇の巨人同士の仲間割れが始まりましたが、そこまで3人の関係性が描かれてなかったので「ついに!」感は果てしなく薄く、こんなところでも作品の積み重ねの無さが足を引っ張ります。

腕のスカーフで首を絞めるカルミラ大先輩はめちゃくちゃ面白かったですが!


「これは恐らく、何者かの罠だ!我らは皆、幻影を見せられていたのだ!!」

「では、その何者かに感謝しなければいけません……カルミラの愚かさを教えてくれたのですからねぇ!!」

「何だとお前ぇ!この、このぉ!!」

解散ドッキリを仕掛けられたことに勘づいたダーゴンだったが、発生してしまった想像以上の修羅場は止まるところを知らず、GUTS-SELECTは出撃しようにも前回のいざこざでファルコンのメンテが済んでおらず、一方的に破壊されていく街。

現地で避難誘導に当たっていたケンゴは退避命令を受けるも、謎の男を追いかけるユナとはぐれてしまい、まさかの人探しのためにブートアップ!して仲裁に入ってたダーゴンに先制の飛び蹴りを叩き込みテッテレー!!

「マナカケンゴォ!!」

しかしめちゃくちゃ頭に血の上ってる大先輩を筆頭に、当然のごとく3巨人のターゲットはトリガーへとすり替わり、あ、騒ぎ収まった(笑)

ビルの合間を縫いスピーディに展開するバトルも見応えあって、やはり戦闘シーンにも工夫が見られます。


「あなた、何者?」

「私は試してみた、可能性がある者たちを…他の者たちは皆失格した。欲望に飲み込まれ我を失った」

モルフェウスRは、やっぱりあなたが!?」

「理性を保ち続けたのはあなた1人。資格を持っている可能性があるのは、あなた1人だけと判明した……救世主の資格を

ユナに銃を向けられた謎の男は宇宙線散布の目的を語り、どうやらユナに眠る邪悪遺伝子が目的だったようです。

話を聞いてるうちに大先輩渾身のダブルカルミラスライサーに苦戦していたトリガーはトリニティにブートアップ!

…するも先制のカルミラヤクザキックにペースを乱されたのか、さっきまで大喧嘩していた闇トリオの肩を並べた猛攻によってあっという間にサンドバッグと化すグリッタートリガーエタニティ。

ニュージェネシリーズのTV最強形態があまり活躍しないのはいつものことですが……さすがに雑すぎる苦戦のさせ方。


「あなたはこの宇宙の運命さえも左右する大いなる力を手にすることが出来る。だが、果たしてその力を使うに相応しい存在なのか?

 救世主と呼ぶに相応しい存在なのか?」

男はいつの間に姿を消しており、ユナは苦戦するトリガーの手助けに走る。

しかし、またもユザレ最期の瞬間がよぎったユナは邪悪遺伝子発動を止まり、変な男に絡まれるし、使うと死ぬかもしれないし、事情をよく知らない男としか結婚できないし、とことん迷惑だなユザレ遺伝子!!

「すまない、お前を戦いに巻き込むべきで無かった」

現場に駆けつけた会長がユナに謝るのですが、そう思うならGUTS-SELECTから除隊させてあげてください(第一、女子高生だし)。

地上でウダウダやってたら大先輩に目をつけられあぽーんされそうになる邪悪親娘をトリニティ、更に修理完了したファルコンが何とか助けファルコン、役に立った!


「今のうちだ、逃げるぞ!」

お父様!私、怖い…死ぬのが…戦うのも、痛いのも、辛いのもイヤ…怖い……でも、やっぱり守りたい!皆の笑顔を!!

決意の証としてユナが指にユザレリングを填めるのはヒロイックですが、肝心のセリフの中身が第15話の「私も、ユザレの末裔として運命と向き合ってみるよ」から全く進歩しておらず、死の運命を受け入れる姿には何ら共感を呼べません。

相変わらずユナはそれっぽいムーヴだけ起こさせて、キャラ付けした気になってるのが引っかかります。

「ユザレが、覚醒した…?」

ジャーク会長の手助けも加わり邪悪エネルギーを解放したユナはシン・ユザレとして現世に降臨し、そのご加護を受けたトリニティのエタニティゼラデスで大先輩の部下2人は仲良く撤退し、本当にこの辺の処理は適当ですね!

「何故だ…何故!?」

「トリガーといる君は、幸せそうだった…」

尚もユナに襲いかかろうとするカルミラ大先輩はトリニティのブレードで制止され、挙句自身の泣き顔をよりにもよってケンゴに見透かされたことで、癇癪が頂点を極め帰宅し、物語の幅を広める目的があるのでしょうが、無言で撤退みたいな場面が本作多い気がします。


「あなたも失格だ。あなたも他の者たちと同じように、一時の感情で動いた」

夕陽の射していた街はすっかり夜に変わり、そう、夜は悪魔が現れる時間なのです…。

「そのような存在に、強大な力を手にし、救世主となる資格は無い」

姿を消したと思っていた男はしっかりとユナをストーキングしており、俺ルールに当てはまらなかったから失格と一方的にユナに宣言し、炎の力を纏った巨人・炎魔戦士キリエロイドと姿を変える。

会長によるキリエル人の解説が入るのと同時に、遠景からカメラをスライドさせる撮影法が『ティガ』へのリスペクトが見られる一方、尺の都合なのか忙しない戦闘になっており、どうにも中途半端なバトルシーン。


ただでさえ3巨人との戦いでトリニティを使い大いにエネルギーを消費してるトリガーを追い詰め、援護に入ったバトルナースすらも寄せ付けないキリエロイドにたじろぐ会長だったが、いきなり金色に光り出す会長。

「もう一つ、光がある。お父様の中にある光……彼と一緒に戦った勇気と希望が、まだ輝いてる!」

何だかワケの分からないことを言い出すユナ。

「信じて!お父様の光を!」

「私の、光…!」

邪悪遺伝子のご加護を受け取った会長は、その手に宿った光を天高く掲げ、光は1人の巨人となって夜の街に降臨するーーー

ウルトラマン……ティガ」

 

 

 

 

ええええええええええええ

 

 

 

 

あまりにも唐突な登場に、悪い意味で唖然。

メタ的に考えれば『ティガ』世界からやってきた会長登場(以前もティガに対する何か想いはあったように見える)、キリエル人出現と確かにティガが出てきてもおかしくはない状況なのですが、『トリガー』という物語上で『ティガ』とのリンクは繋がったようで切れていた(他人の空似でしかなかった)はずですし、「ウルトラマンティガ」という異世界の巨人に対して登場人物が何か言及していたかと言えば、第9話以降存在を忘れられており、何故今更ここでティガを出すのか、そして何故こんなに雑な出し方をしてしまうのか、というシリーズ構成への率直な疑問が全てを覆い尽くしてしまい、田口演出による待望のティガ登場!という本作最大と言ってもいいイベントが、一瞬にしてシャボン玉のように弾けて消えてしまいました。

昔からともかく、令和の世に出たウルトラマンの客演回としては相当レベルが低い登場だったのでは。


会長に宿っていた光から具現化し半ば概念と化してるT兄に瀕死のT弟はエネルギーを分けてもらい、パワーからスカイと次々にチェンジして『ティガ』のBGMをバックにキリエロイドを叩きのめすTT兄弟、最後はマルチに戻りダブルゼペリオン光線でキリエロイドをあっさりフィニッシュし、うん…本当に雑な扱い。

シチュエーションもバトルシーンの組み立ても同じく田口監督作品の『劇場版X』とやや被ってしまっており、目新しさと意外性に欠けるのも微妙な点でした。

悪魔を倒し、共に飛び去る2つの光…ってティガ飛び去ってそのまま消えたけど会長の身体に戻ったりしないんですかね?

一回ポッキリのT兄召喚機としてお役御免なのでしょうか。

「お父様、ありがとう」

円満ながらもどこか遠慮がちだった親娘は強い絆で結ばれており、暖かな父親の姿を表現できる宅麻伸さんの演技で何とかなって、つづく。

 

 

前回のドタバタを布石として『ティガ』で重要なポジションを占めていたキリエル人を遂に投入。

元々はクトゥルフへの造詣が深い小中千昭氏の生み出したキャラクターと言えるためか、人気の割にどうにも動かし辛いといった印象が根付いており、現に今回の登場も唐突であり場をかき乱していただけでトリックスター要素のみが拾われる形に。

3巨人の解散騒動のきっかけとなったことで物語はまた動き出しそうですが、リブット程では無いにしてもまた外部から闖入したキャラクターが物語のトリガーを引いてしまっており、引き鉄は誰だ。


戦闘シーンには飽きさせないような工夫が見られダラダラ戦ってる印象は抱かなかったものの、さすがに夕方から夜までずっとピコンピコンしているトリガーはそういうものだと目を瞑るにしても、設定の枠を大いに踏み外しすぎだったと思います。モルフェウスRのこともよく調べないまま終わってしまいましたし。

ユナのステップアップが特に描かれない(繰り返し強調されていた「怖い」を克服する程のエピソードが用意されていない)ままユザレの覚醒というものも劇的さを欠いているうえに映像では判断しづらく、更にいきなり再登場したシズマ会長が唐突にティガの光を呼び出すという展開も目が点になる一方で、トドメに「キリエロイド出たからティガも出しました!」とドヤ顔で叩きつけられ、完成度の低い『トリガー』作劇と、納得度の薄い『ティガ』時空との融合が見事に悪魔合体

『ティガ』を忘れ『トリガー』を何とか楽しもうと思ってたタイミングで改めて『NEW GENERATION TIGA』を押し出されても困惑しか残らないワケです。

作品の魅力を押し出せない(イベントの二の次に回してる)まま終盤が近づいてきており、本作を見つめる目線は段々と氷点下に近づいて参りました。

繰り返しお伝えしますが、田口監督の演出が作品の悪い部分に負けたエピソード。

 

 

次回、ティガを出した次がこれか…。