『ウルトラマントリガー』
第23話「マイフレンド」
(監督:坂本浩一 脚本:ハヤシナオキ)
「闇の力が、増幅している!?もしや…ヒュドラムの闇を吸収したのか!!」
GUTS-SELECT全員のアリバイ作りのために撮影した記念写真をアキトがにやにや見つめていたところに、カルミラ大先輩の呪術で操られたダーゴンが出現し街を破壊し始める!
「こいつはすげぇ!闇パワーが増大してやがる!」
マルゥル隊員の全くワケの分からない解説が差し込まれる中ファルコンが出撃し、地上に向かったケンゴは変身してダーゴンを止めにかかるも、光と闇の筋肉対決第3ラウンドに敗北し、トリガーの倒れた衝撃で天高く吹っ飛ばされる地上のユナ(笑)
だったが、ヒロイン力判定をミスったダーゴンはユナを受け止め、突如正気へと戻る。
「ユナ、我はお前に…人間に惹かれているのだ!」
内ゲバの激しい闇の一族として女王様の鞭に叩かれるより、強い絆を持つ人間の少女にビンタされる毎日の方が幸せだと気付いたダーゴンは大先輩を見限り、ここぞとばかりにYou,ラーメンの使徒になっちゃいなよ☆と勧誘するケンゴであったが、ただでは首を縦に振らなかった。
「その前に、悔いの無いよう、3000万年前からのケジメを付けさせてほしい!」
ダーゴンは夕闇が迫る中、決闘の時を待ち、そこに現れるトリガー。
「決着を着けるぞ!いざ、尋常に…勝負!!」
ダーゴンの思いを汲み、いきなりトリニティにブートアップ!し本気の勝負に挑むトリガーだったが、その時を待っていたかの如く大先輩は再び呪術発動でダーゴンを洗脳し、決闘の願いすら踏み躙ってしまう。
…てかダーゴン喋りすぎです。
冒頭のセリフだったり、「最後の願いすら踏み躙るのか!」だったり、親切に自身の状況を視聴者に解説するのはいかがなものか。
脚本から滲み出ている演出とキャラ描写への信頼の無さは、本作の致命的な弱点であるなぁと改めて。
大先輩の闇のパワーも加わった闇マシマシダーゴンはトリニティを圧倒する筋肉を身につけており、今日も今日とてあっさり吹き飛ばされて画面から消えるグリッタートリガーエタニティ。
そして艦内待機命令はどうなったのか、悠長に地上で観戦していたユナに迫る、本日2度目の生命の危機。
冒頭の回想シーンでわざわざユナ=ユザレがエタニティコアに繋がる鍵であることに言及してるのにも関わらず、アキトは自分だけナースデッセイに帰還してて案の定ユナのピンチにすぐ駆けつけられないのが本当に知能の低い展開で、全く物語に集中できません。
ピンチの状況を作り出すにしても、自ら設定したシチュエーションに矛盾が発生してるようでは本末転倒です。
「トリガー!そして、強き人間たちよ!我を…カルミラに操られた我を止めるのだぁ!! 我が誇りのために…! 本当の強さを教えてくれたユナを、我が剛力で傷つけないためにぃ!!」
ユナに迫りながらも僅かに残った正気で自身の動きを止めていたダーゴンだったが、ついにその心と身体はカルミラの呪術に覆い尽くされ問答無用の筋肉バトルマシーンと化してしまう。
「……お前も、ユナを守りたいんだな」
脳は筋肉、筋肉は脳、立場を超え繋がった光と闇の筋肉マシマシラーメンズは、今ここに解散の契りを交わす。
「俺に、あいつとの決着を着けさせてください!!」
ナースデッセイがバトルモードを起動し、リブットキーを取り出したアキトは自らマキシマナースキャノン発射を志願。
隊長が何かを感じ取って備え付けの発射口を託すのですが、GUTS-SELECTからしたらダーゴンとアキトの関係は全くといって触れてきてないものであり何の積み重ねも見当たらないので、ノリと勢いだけで任せてしまった感がすごく残念。
ノリと勢いで判断する、というキャラ付け自体は別にいいのですが、これまで割と常識人・まとも寄りな描写がなされてきた隊長に求められるムーヴではなく、積み重ねるべきロジックと、ある程度の理屈はスキップしてもいいというパッションのバランスを測り損ねているようにしか見えません。
「俺もお前と同じだ…ユナを守る!!」
うーーーーーん、「俺と同じだ」という前振りから出てくるのがそんなつまらないセリフでいいのかアキト。
闇の一族に生まれながら人間の強さに惹かれたダーゴン、人間として光になることを求めながらその想いが打ち砕かれ闇を覗かせたアキト…上手く対比させられていれば、物語としてもう一跳ね出来たと思われるのですが。
2人の繋がりがユナを介したものから一切発展することはなく、「ユナを守る」という動機以外に心の共鳴を見出すことができなかった(それを描けてこそ、物語は"劇的"になるワケであって)のは話の流れこそ無難ではありましたが、終盤の盛り上がりを大きく欠いてしまった印象を受けます。
邪魔に入ってきたカルミラ大先輩にかかりっきりのトリガーはまったくの役立たずとなり、リブットキーをブートアップ!したナースデッセイのマキシマギャラクシウム(まさかの体当たり)がダーゴンを貫き、「マイフレンドォォォ!!!」というもはやギャグとしても笑えない断末魔で粉々に砕け散る筋肉巨人。
「何が…"マイフレンド"だ……ウザいんだよ…」
その頃トリニティを完膚なきまでに叩きのめし、ダーゴンの闇を吸収してますます強力になった大先輩は地上をうろついていたユナに迫る!
「あんなに手こずったユザレを、こうも容易く捕獲できるとは…ダーゴンも役に立ったねぇ!」
……ひっっっどいセリフ(笑)
大先輩、感謝を述べるならダーゴンではなく、本作の脚本家だと思います。
はぁはぁ…これだからやめられねぇ…と大先輩の鞭に打ちのめされ地面を舐めるケンゴの前でユナは連れ去られてしまい、翌日の朝、カルミラはユザレの祭壇にユナを捧げ、3000万年越しに再びエタニティコアへとアクセス!
「ハハッ!アハハハハ……これが、エタニティコアの力…!!この力さえあれば…あたしは神にもなれるッ!!!」
強大なエタニティの力に触れたカルミラの身体は醜く膨れ上がり、大地を裂き巨大な獣の姿となり地上に君臨する。
もはや巨"人"の形すら留めない変化を嬉々として受け入れるのはおぞましく出来上がってて良かったシーン。
「これが、世界を暗黒で覆い尽くす、闇の支配者…?」
「……カルミラ…」
邪神・メガロゾーアが高笑いを上げて、つづく!
闇の3巨人の中では最も好感度の高かったと思われるダーゴン退場回、最終盤に入りメインの坂本監督とハヤシ脚本がギアを入れてきたといった流れを感じます。
しかし待機命令を忘れ何故か決闘を地上から見学し最終的に大先輩に誘拐されるユナ、カラータイマーが鳴る暇も無くあっさり敗北し消滅するトリニティ、気絶してるユナの手を念力で動かして指輪パワーを解放する大先輩等々、雑な状況設定と、話の流れを重視するためにキャラクターの知能と身体スペックを下げてしまうご都合主義が悪目立ち。
ユナを攫った後に夕方から日中に変わってる描写も謎で、時系列の整理すらまともに出来ていないのか心配になってきます(遺跡が他国にあって時差が生じてる可能性もありますが)。
ストーリー面でも人間の強さを認めた敵側の武人キャラが、散り際に強敵を友と認めるというプロット自体は王道で悪くは無かったのですが、前述のアキトとダーゴンの関係性が劇的に変化することはなく、横からの肉付けに失敗していることで何とも気分の乗らない幕引きにダーゴンは晒されることになりました。
またダーゴンのトドメに使ったのが、本作の外的要因の代表でもあるリブットのハイパーキーであり、2話連続でメインキャラの退場に外様の力を使ってしまったことが、本作の魅力を大きく削いでしまってるように感じます。
予想を裏切り、オーソドックスな怪獣スタイルで登場したメガロゾーアはカルミラの変貌も含めて面白かったので、この辺りがまた良い方向に転がると良いのですが果たして。
次回、スマイルスマイル!!(キレ気味)