うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマントリガー エピソードZ 感想

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ウルトラマントリガー』

『エピソードZ』

(監督:武居正能 脚本:根元歳三

ウルトラマントリガー=マナカケンゴが、エタニティコアに飛び込みその暴走を鎮めた日(別名:「ロボタック海に死す」事件)から2年ーーーーー

未だ収まらない怪獣出現に対し、新たに科学者畑出身のトキオカリュウイチを隊長に据えたGUTS-SELECTはトリガー無しで怪獣を撤退に追い込む程の実力を身につけており、TVシリーズでは結成直後であったことから連携が微妙だったものの、2年間戦っていたため怪獣に対して堂々と立ち向かえる適応能力と実力を持っていたというのは、GUTS-SELECTのエキスパート性を引き出せていて掴みから好印象。

1人だけ一際大きい銃火器を構えて地上から応戦する理系出身のトキオカ隊長代理(演:中村優一)もなかなかのインパクトで、もうこの時点でTVシリーズ3話分くらいの面白さ(笑)


「怪獣を投げ倒す腕っ節!正に、男の中の漢!!」

超古代のエキスパートであり、青銅のスパークレンスを発見した功績もあるトキオカを中心としてえらくチームワークの上がっているGUTS-SELECTですが、やはりあれか、足りてなかったのはホスピタリティか。

そんな新生GUTS-SELECTに、ジャーク会長から世界各国の超古代遺跡に謎の連中が不法侵入しているという情報を告げられ、担当者から説明があると情報局に異動となったタツミ前隊長が一同の前に現れる。

……前隊長、ナースデッセイから高みの見物だった立場から現場に出向させられてて明らかに左遷なのですが、やはりあれか、ホスピタリティ不足と待遇への不満でヒマリ隊員辺りから内部告発食らった感じか。

もしくは地球の危機を訳分からん闇の巨人から守ったチームの隊長なのに、健康診断の結果が悪いという理由だけで社内表彰を受けられないことを知ったため、水面下でジャーク会長に対する蜂起を考えていたものの失敗に終わり、辛うじて情報局に縋りついたみたいな経緯でもあるのでしょうか(テッシンだけやたら距離が近いのも実はギリギリまで仲間だったけど、直前に会長側に寝返ったという負い目があるからかも)。

「ある遺跡への侵入者を捕らえた。自分たちのことを"ライラー"と名乗っている」

左遷されたことでストレスからも解き放たれた影響か笑顔が眩しいタツミさんは、捕らえた不審者の尋問から「光の復活」という単語を引き出しており、ここ2年間で安定したエタニティコアに飛び込んだトリガーの帰還が近づいていることをユナたちは知る。


「最近、ユザレの記憶が…薄れてきているような気がする」

コアの動静が安定しているのにケンゴは何故帰ってこないのか…そんなことを考えているユナのもとに苦しそうに助けを求めるケンゴの幻影が姿を現し、TVシリーズでユザレを目撃したケンゴとちょっとした入れ替わりが発生。

このままではケンゴが完全にコアの一部と化してしまうと邪悪遺伝子が察知し、GUTS-SELECTはトリガー帰還を促すため、以前から光の復活対策を講じていたライラーの使徒タツミ前隊長の手で拷も…尋問中)とやむなく共同戦線を組むことに。

ユナ=ユザレとの握手会に参加させてもらうことを条件に、協力を快諾したライラーの男は推しとの出会いに尊さを隠せずその場で跪いてしまい、恐るべし、邪悪遺伝子の思し召し。


「我らの光を救う方法は一つ……神器を使うのです」

「超古代のスパークレンスを?」

「あれは星々の光を集め、増幅させる神器。その光をコアの内部に送り……ウルトラマントリガーに力を与えるのです」

古代スパークレンスの詳細については過去に飛んだケンゴしか聞いていないため、アキトたちからしたら信用ならないライラーの口から出た情報という点だけでも胡散臭い話でしかないのですが、圧の強いゲストキャラが視聴者しか知らない本編の設定を拾ったうえで、ケンゴが戻れるかどうかの切羽詰まった状況において繰り出されるというのが大変気持ち良く、また会話シーンにおいてもテッシンやヒマリのちょっとした表情の変化などで緊張感を後押しできる画作りが最低限存在し(武居監督以外の回では皆無と言っても良い要素)、何でこれをTVシリーズで出来なかったのかと思うくらいよく出来てるシーン。


GUTS-SELECTはトリガーが復活できるだけのエネルギーを人工衛星を使って古代スパに照射作戦を展開し、ライラーがその光を遺跡の祭壇に集める儀式を執り行う場に立ち会うユナ。

「マナカ隊員なら、"スマイルスマイル!"って言うんじゃないか?」

「そうですよ! 君なら大丈夫。笑顔で迎え入れてあげよう、ケンゴ君のことを」

「………ハイ!」

超古代での儀式の様子がフラッシュバックしたことに不安を覚えつつも、新旧隊長のホスピタリティに触れたユナは力強く頷き、やはり本編でもこういう、ちょっとした人間らしさをもう少し見せて欲しかったところです。

ユナが覚悟完了したとほぼ同時にコアの波形が乱れたことで作戦開始となり、ライラーの謎メダル儀式(この後登場する先輩戦士に合わせた形でしょーか)によって寝苦しそうにしてたトリガーに太陽エネルギーが注がれ、復活の時は近付く。

「いい加減……目を覚ましなさい!

 マナカケンゴォォォォォォ!!!」

ここでそれを捻じ込んできたか(笑)

ユナの前で上半身裸はさすがにまずかったのか、コアから解放されたケンゴはしっかり隊員服に袖を通していたもののすぐさま意識を失ってしまい、抱き止めたユナは彼の腰にトリガーのハイパーキーが無いことに気付く。


ナースデッセイで目を覚ましたケンゴはGUTS-SELECTの仲間たちによる祝福を受け、いきなり現れた見知らぬ男(トキオカ)の出現に(え、誰この人…? そういえば皆もやたら喋るし友好的だし、なんか違う世界線に迷い込んだ……??)みたいなリアクションになるのが絶妙(笑)

2年の月日が経ち、人事異動が行われれば、組織はこうも変わるものなのです。

その夜、1人研究室の石板を見つめていたケンゴのもとにトキオカが現れ、トリガーとして地球を守った功績を讃えていた。

「"自分が光の化身だ"って知って、正直驚きました。でも…僕の中には光があって、闇もあって……ただの人間だって気付いたんです! だから、人間として出来ることをやろうって」

「偉いな……でも、どうして光は、人になることを望んだんだろうね?」

「……え?」

「何故、赤ん坊としてこの世に生まれ、人として生きることを選んだんだろうなぁ………ケンゴ君、君はもし、このままトリガーになれなかったとして、一人の人間として……どうやって生きていくつもりだい?」

最終回では消化不良どころか、大きくのしかかり過ぎて窒息寸前だった「光であり闇であり人である」ケンゴのアイデンティティの根底が揺さぶられ、柔らかな態度でケンゴと笑い合ってたトキオカが、突如顔つきと声色を重くしてねっとり語りかけてくるのも実に好演で、本作前半を彷彿とさせる謎が後を引く作劇。


時同じくして、TPU特別拘禁室にぶち込まれていたライラー男が仲間の助けを借りて脱獄を図り……手枷は自慢の筋肉で破壊しました!

まんまと重要参考人に逃げられ、取り押さえに向かうも返り討ちに遭ったタツミさんの社内地位と給料と健康診断の結果がますます心配になる中、ライラー筋肉マンは第4話で登場した古代発信機を使い、冒頭で撤退に追い込まれたパゴスを再び地上に召喚させる(序盤でライラーが使用していたと言及あり)。

地上から迎撃に向かったケンゴはいつものクセで腰に手を当てるも、戦闘の場において物理的(ハイパーキーが無い)にも精神的(トキオカの言葉が突き刺さっている)にも戦う力が失われていることを改めて突きつけられてしまう。

ナースデッセイ側ともすぐさま連携が取れず、歯噛みするケンゴたちのもとに、満月を背に浮かび上がる「Z」の文字!

ウルトラマンゼット!?」

「ハルキさん!!」

そういえば知らされてなかったユナが少し驚いていることをよそに、師匠三倍盛りにチェンジしたゼットさんは、ベリアロクの戦闘放棄をいともせずパゴス相手にほぼ完封勝利を上げ、爆破をバックにポーズを決めるアルファエッジが実にヒロイックで、昨年諸々の事情で劇場版制作の無かった『Z』に華を持たせる目的もあるとはいえ劇場版まで乗っ取り始めてきました。


変身を解きGUTS-SELECTに合流したハルキはこの世界に再びやってきた目的が、『Z』世界の黒幕・寄生生物セレブロが逃げ出したことにあると告げる。

「色んな星の生物に寄生して、恐怖を植え付け、次々と兵器を作らせ自滅させる……"文明自滅ゲーム"って言う嫌なゲームをするやつなんです」

改めて聞くと病的なまでに悪趣味(おまけに遂行のためには手段を選ばない)セレブロの快楽が説明的ながらも端的に共有され、ゲーマーとしての側面があったっぽいヒマリ隊員のリアクションがあったのは良かった点。

宇宙を探索中にベリアロクが感じた気配が古代発信機である可能性が高いことから、セレブロとライラー間に談合の疑いを深めたGUTS-SELECTはハルキに協力を申し出る。

しかしコアから分離した際に、光の力まで分散してしまいトリガーに変身できなくなったケンゴは失われたハイパーキー捜索に向かうことになり、セレブロよりも後輩戦士への気遣いを優先したハルキもそれに協力することに。


翌日、捜索に向かった地点には脱獄ライラー筋肉マンが待ち伏せしており、セレブロに寄生され筋肉の加護を受けたライラー男はマルチハイパーキーを持って逃走。

森の中での肉弾戦の末、闇の稽古を経たことで我が物にした筋肉の違いを見せつけたハルキがキーを取り返し、妨害に出現したガゾートと一当たりするためケンゴは割とあっさりブートアップ!

更なる解析で残りのキーの位置も発覚し、ファルコンとトキオカの協力を得てガゾートの腹の中からスカイキーを入手してブートアップ!

キー収集に関してはあっさり具合がまあまあ拍子抜けで、少し忙しなくし過ぎてしまった印象。

ガゾートを撃退したスカイトリガーが新たに出現した2体の怪獣に苦戦していた(2年ぶり)頃、最後の1つのキーを遊園地のお化け屋敷にてユナとアキトが捜索し、ひたすら怯えるアキトという今回の劇場版唯一と言っていいギャグシーンが全力投球で放り込まれ、後の展開を見るに子ども向け作品としての体裁を保つために、全体のバランスを取りに行った感が拭えないシーン(笑)

どうでもいい話ですが、怯えて叫んで気絶までするアキトの振れ幅に対し、「あくまで任務として捜索してるだけですけど」みたいなドライなスタンスで行動する(アキトに対しても目線が冷ややかな)ユナが相変わらず人間味の薄さを発揮しており、こういう場面において「この人物ならどこまで崩せるだろうか」というチャレンジングすら行われていないようにも見えTVシリーズ後半の軸でありながら、キャラクターの肉付けに失敗したユナのキャラ強度の低さを改めて実感します。


トリガーの苦戦を見てハルキはゼットに変身して加勢し、アキトとユナからキーを受け取ったケンゴはパワータイプにブートアップ! 2対2となった怪獣とウルトラマンは並んで睨み合い、鳴り響くゴーング!!


ウルトラマンZ

ベータスマッシュ

ウルトラマントリガー

パワータイプ

VS

凶暴宇宙鮫ゲネガーグ

破壊暴竜デスドラゴ


……筋肉三倍盛りの代名詞といえる残虐レッドファイッ!が展開され、ここに来て深刻なまでの劇場版ジャックが執り行われる。


取っ組み合いの末、友情パパワーの筋肉Wビームアタックでフィニッシュを飾った光の残虐コンビであったが、突如苦しみ出す筋肉ゼット。

「うわぁ!……あぁぁぁぁぁ!!」

「どうしたハルキ!?」

「……ふふ………ハハハハハハ!!………キエテ……カレカレータ…!!」

「お前はセレブロ!?」

何と、ライラー男に取り憑いていたセレブロの本当の狙いはケンゴに無く、単身追跡してきたハルキの身体を気絶させている間に乗っ取ることであった!

表向きはゼットが苦しんでいるように見えるのですが、インナースペースでは割とピンピンして喋っているゼットさんが何だかシュールで、ポンコツ具合に拍車がかかってます。

悪の波動に拒否反応を覚えたのか、メダルの力が解除されオリジナル形態に戻ったゼットさん改めゼレブロは左眼が赤に染まっており、寄生生物としてのセレブロの特性と充血のような痛々しさを上手く表現力しており、秀逸なアイデア


結成後即解散の運びとなった光の残虐コンビの一番手ゼレブロにこれが真の残虐レッドファイッ!とマウントを取られ、全く反撃できずにピコンピコンしてしまうパワートリガー。

更にトリガーを守ってゼレブロを迎撃したトキオカがゼレブリウム光線で吹き飛ばされてしまい、完全敗北したケンゴは変身解除した先で同じく変身を解いたハルブロに変身アイテム一式を目の前で回収されてしまう(ケンゴの手がギリギリ届かないような位置にスパークレンスとキーを置くセレブロが大変嫌らしく、ゲームを楽しむ悪性宇宙人としての描写は正直『Z』本編を超えてる)。

そのままライラー部下に串刺しの刑に処されそうになり、絶体絶命の危機に陥ったケンゴだったが、そこに頼れる男が颯爽と駆けつけてきた!

「優雅じゃないねぇ! ハントは華麗に上品にやらないと」

リシュリア星人のトレジャーハンター・イグニスがタイミング良くこちらの世界に顔を出し、ライラーは撤退。

そして奪われたトリガーの光に似た反応が遺跡の祭壇にて検知され、向かったケンゴたちの前ではユナが見たフラッシュバックと同様の儀式が執り行われようとしていた。


「お前がセレブロか! 一体何をするつもりだ?」

「ゲームさ!!……それに少し、彼らの手伝いをね」

ハルブロと手を結んだ張本人、ライラーの衣装に身を包んだ指導者とは、先程木端微塵に吹き飛ばされたはずのトキオカリュウイチであった!

ある程度の目的を達成したうえ、話の場において邪魔だと判断したためかハルブロは変身してナースデッセイに迫り(「やべぇ…!」と判断したら指示無しでもすぐさま持ち場に着くナース組が良い動き)、イグニスがブートアップ!して対処。

「あなたは………ザビル!!」

「思い出してもらえたようですね、ユザレ」

かつて地球星警護団の科学者、つまりユザレの仲間として活動していたトキオカ=ザビルの正体がユナの記憶から明らかになり、ユ、ユザレ!? ちゃんと仲間いたの!!!???

「ユザレぇ!お前えらい変わったなぁ、強いだけやのうて、めっちゃええ仲間に囲まれとるやん」

明らかに誇り高き青い畜生の発言と矛盾しているのですが、何だろう、繋がってるようで実はうっすら分岐してるのかTVシリーズルート。


「でも、どうして? あなたは闇に対抗するために神器を使い、光を手に入れようとしていたはず…」

「だが、間に合わなかった……」

3000万年前における闇の3バカとの戦い(同じく武居監督回の第11.12話)で地球星警護団が満身創痍だったことは見て取ることはできましたが、ここに来てユザレはメンバー最後の一人では無かったのは、色々な意味で衝撃。

恐らく過去編の出来事はユザレの記憶に基づく再現といった意味合いも強そうですが、そう考えるとその記憶からザビルが一切抹消されているのはものすごく酷い話であり、そんなやつの遺伝子を継いだユナはまあ、あんな娘に育つはずだと妙な納得感(笑)

「我々をあれほど苦しめた相手を、光となったトリガーがいとも簡単に封印した」

何だか細かい記憶違いが発生してるっぽいですが(3バカを封印したのはユザレが暴走させたエタニティコアの一端であり、見事巻き添えを食らったトリガーは宇宙にポイ捨てしただけ)、まあ確かに側から見れば突如現れた光の巨人バンザーイになってしまわなくもない状況で、人として戦いながらも多くの同胞を喪ったことで無力感に取り憑かれたザビルは自分の研究していた"光"に、自ら神になってしまえば良いとその思想を捻じ曲げてしまうことに。

そしてザビルは、いずれ闇の3バカが復活することを予見して石版に情報を記し、3000万年の時を越えてジャーク会長に接触


「彼を懐柔することで、歯車は動き出した!」

おおーっと!

ここに来て会長の株が大暴落だぁぁぁぁぁ!!!!!

TVシリーズ序盤明らかに光の化身となり得ないアキトを上手く言いくるめて利用していたという前科はあるものの、いきなり他次元から邪悪遺伝子によって呼び寄せられ、巫女の運命を背負ってると宣う地雷女に騙され結婚し、妻が遺した愛すべき娘にもユザレと同じ運命を背負わせることを覚悟していた姿に多少の悲壮感を覚えることはできた会長でしたが、その行動が全てザビルの掌中のシナリオでしかなく、本人不在の場面で一人の道化だったことが明かされる衝撃の展開。

また、トキオカ(ザビル)はアキトにとっては先生だったということが冒頭で触れられてましたが、それを考えるとシズマがアキトを引き受けることすらも計算通りだったのだと思われ、古代発信機をライラーが使いこなせていたことと合わせて、8年前のデスドラゴ出現に関しても何かきな臭い雰囲気を感じ取ることができます。

本編感想や簡易まとめでも散々触れましたが、この『エピソードZ』においては3000万年前を始まりとし、物語を動かしていた人物たちの行動理念がほぼ黒幕の思い通りに進んでしまっており、トリガーを引いていたのはずっと影に隠れていた外様だったと奇跡の逆転現象!!

本作、どうも捻ろう捻ろうとし過ぎて回転数の限界で真っ二つに千切れたみたいな最終回を迎えていたのですが、今回の劇場版によって分かれた身体の間にコアファイターが挟まり、最終的に合体完了したから良くね?みたいなすごい着地を迎えることに(笑)


ジャーク会長を手中に収めたザビルは現代に復活したトリガーに闇の巨人を倒させ、コアを安定させたうえで光を奪う計画を円滑に進めるため、しれっと別次元のセレブロ接触してゼットとハルキがGUTS-SELECTを再び訪れるよう仕向けており、3000万年の時を越えた執念によって天井知らずの有能っぷりを発揮。

ところで「気の遠くなるような年月を過ごし」とザビルは語っていましたが、今現在のその身体はザビル本人なのか、それともユザレのように遺伝子を受け継いだ現代人(トキオカ本人?)を乗っ取った結果なのか。

いずれにせよ超古代人の底知れなさをひしひしと感じるような案件で、恐るべし、地球星警護団遺伝子の思し召し。

「人間が光となり、自らの力でこの地球を守れるようにならなければァッ! 意味が無いのだ……ユザレ、やっとお見せできます……人が、光となる瞬間を…!!」

「こんなことユザレは望んでないッ!! トキオカさん、あなたもこの地球を平和に、皆を笑顔にしたかったんじゃないんですか!?

「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!………そのために人を捨て、私は光となるのだ!!」

もはやケンゴたちの知ってるトキオカではなくなったザビルが半ば発狂状態で自身の目的を語り、目を見開き大口で溜めながらセリフを吐く中村優一氏が見事な怪演を見せつけてきます。


祭壇に張られたバリアの影響で手を出せずにいるケンゴたちの前で儀式は遂に執り行われ、しれっとライラーの使徒4名ほど人柱とされているのですが、これは正解なんだろうか(笑)

「ルルイエ・ク・ライラー……希望と、光…!!」

ケンゴのスパークレンスとハイパーキーから奪った光を集めた神器をザビルは天にかざし、緩くマッチアップしてたトリダーとゼレブロのもとに舞い降りた眩い程の光は巨人の姿と変わり、影を継ぐ者・イーヴィルトリガーがここに降臨する。

『ティガ』のイーヴィルティガ登場を下地にしつつ、3000万年前はユザレの仲間だった科学者を変身者とすることで、以前別記事で疑問点に挙げた超古代というオカルトとハイパーキーという超科学の相性の悪さを見事に緩和しており、作品の内外で非常に良い立ち回りを見せていて、書くことが多いぞザビル!!(笑)


「違う、光じゃない……トリガーとは何か違う!!」

「これが…私の身体……! ふはは……ははははははは!!!」

イーヴィルトリガーはゼレブロと2対1で即座にトリダーに襲い掛かり、シルエットだけ見たら完全悪役なトリダーが単身正義の味方として戦ってるのは面白い逆転構造。

イグニスのピンチを救うためナースデッセイはバトルモードを起動(非常時にはテッシン隊員が変形の権限を握ってるっぽい)してマキシマナースキャノンをお見舞いするもイーヴィルにあっさりガードされ、それどころか尻尾を掴まれ掟破りのジャイアントスイングを食らい、ガッツファルコン諸共撃墜されてしまい、イーヴィルトリガーの強大さとバトルナース遂に撃墜という衝撃度がなかなかの迫力で描かれました。


次々倒れていく仲間たちの危機に居ても立ってもいられず、祭壇バリアに強引に飛び込み突破を図るケンゴであったが簡単にはバリアを破れない。

そこに飛び込んできたのは、黒幕の道化の道化であり、お化け屋敷の件で情けない面ばかり見せていたアキト!

主人公と真ヒロインによるラブラブ天驚拳が炸裂したことでバリアは破られ、奪われたトリガーの光はケンゴのもとへと戻り、この流れで完全に蚊帳の外なユナはさすがに哀れ。

まあギャグシーンで崩せるうえに、ケンゴの相棒としても描写を積み重ねてるアキトとはやはりキャラ強度の度合いが桁違いだと判断せざるを得ません。

アキトからスパークレンスを受け取ったケンゴはマルチキーをブートアップ!

ウルトラマントリガー!!!」

未来を築く希望の光はイーヴィルとゼレブロに踊りかかり、ここに光と闇の巨人によるタッグマッチが始まる!!


その頃、撃墜された中で何とか脱出しながらも自分たちの戦艦でありホームだったナースデッセイを失ったテッシンヒマリマルゥルの3人は絶望に膝をついてしまっていた。しかしーーー

「何をしている!」

「………隊長…?」

再びGUTS-SELECTの隊服に袖を通したタツミ前隊長が、情報局で身につけたホスピタリティを引っ提げ3人に発破をかける!

「立ち向かう意志を失わない限り、人間は……人間は決して負けない!!」

予想できた展開ではありましたが、やはりこの場面で隊服を纏い隊員たちに喝を入れるタツミ隊長は凄まじくカッコ良く、我々はやはり現場で戦ってなんぼだ!と銃火器を携えケンゴたちのサポートに向かい、上空でぬくぬくしていたメンバーが若者たちが臨んでいた地上援護に走るのが熱い。

しかしスーツの都合で大きな銃を持てないからか、ハイパーガンを二丁拳銃で持ってるマルゥルに何だかリアルな恐怖を覚えてしまったのはここだけの話。


ヒートアップした光と闇のタッグマッチは市街地戦にまで発展し、何故か街に大きく聳える岩山に叩きつけられるトリダーだったが、叩きつけた当のゼレブロはまたも苦しみ出す。

「やめろぉ…!! お前なんかに、負けるかぁぁぁ!!!」

セレブロに取り憑かれながらも要所要所で抵抗を見せていたハルキの意志が段々と表面化し始め、イーヴィルをトリダーが引きつけている間にケンゴはハルキの心に呼びかける。

「しっかりしてくださいハルキさん!! ハルキさんにも大切な人が、仲間がいるんですよね!? その人たちのことを思い出してください!! ハルキさん!!!」

「ハルキィ…! 頑張れぇ!!!」

「うぅ……チェェストォォォ!!!」

ポンコツ感が否めないながらも、ここ一番でハルキと共に戦うゼットさんが声を掛けるのが相変わらず手堅く、異世界で出会った新たな仲間の呼びかけでセレブロを追い出すことに成功したハルキは師匠ゼットにチェンジし、どこぞに行ってた魔剣さんとも合流してイーヴィルに挑む!


「私は光! 私が全人類を導くウルトラマンだッ!!」

ウルトラマンの力は、誰かを支配するためのものでもなく、導くためのものでもない!!」

セレブロが戦線離脱し3対1となったことで押され気味になってきたイーヴィルは徐々に感情を暴走させていき、その眼から光が失われたことでイーヴィルサンダーが炸裂し大地に倒れ込む三大巨人。

「ひかり……ヒカリ……光よぉぉぉぉぉ!!」

時同じくして唯一逃げ延びたライラー男(セレブロが抜けた際のリアクションを見ると、元からライラーなのか無関係なのかがスタッフの方でも統一しきれてない感)をセレブロが再び依代にし、キープしていた怪獣メダルを発動して殲滅機甲獣デストルドスに姿を変え、トリダーと師匠ゼットに襲いかかる!

苦戦属性持ちも三倍盛りになったことでまたも形成不利となるトリガーであったが、そこに駆けつけた仲間たちの声がケンゴを再び立ち上がらせることに!

「お前が皆を笑顔にしたいと言うのなら、俺は……俺たちがお前を笑顔にしてやる!!」

2年前、巫女の運命を辿らないことを選んだユナに対して、自らコアに飛び込んだケンゴの行動はハッキリ言って不誠実そのものなのですが、今度はお前もしっかり戻ってこいとこの2年間の想いをアキトは叫び、主人公と真ヒロインを独占せんばかりの勢いだ!!

「お願い…力を貸して! ケンゴを……笑顔にしたいの!!」

更にユナは再びエタニティコアにアクセスし、コアの力をケンゴに託すべく薄れていくユザレの力を振り絞る。


「何故、トリガーは僕を人の形で生み出したのか……どんな強い光でも、一人じゃ輝けないんだ!! 誰かが側にいてくれないと…! だから!僕は人間として生まれた!! ウルトラマンになれるだけの……ただの人間なんだぁぁぁぁぁ!!!」


例えウルトラマンになれなくても、ケンゴには仲間たちがいる。

TVシリーズ後半では薄れ気味だった"マナカケンゴとしてのアイデンティティ"にメスを入れてきてそれ自体は良いのですが、本作視聴前提で組まれた最終回での最期はやはり不満を覚えてしまう点で、最終回と後日談とで別々の結論を用意してしまうのは作品の方向性(独自性)を好きなタイミングで転換できることに繋がるのであまりよろしくない手段。

しかし本作、ここでとても評価できるのは、作品としての結論を『トリガー』の名を冠するエピソードで遂げられたことかなと。

直近だと『タイガ』が後の『ウルトラギャラクシーファイト』にてキャラクターの長所を引き出されて救済されかけている途上ですが、肝心のTVシリーズが一番お荷物になっている(ヒロユキなんていなかったのでは?状態)現状があまり面白くなく、本作を見るまで『トリガー』にもそういった不安を抱えていたので、そこをクリア出来たのは作劇に関しても一歩進んだのではと思います。


ウルトラマンに変身してるだけのマナカケンゴと自己肯定力を高めたのと呼応するかのように、ユナが送ったコアのエネルギーを受け取ったトリガーはグリッターエタニティを発動し、TVシリーズでは散々な扱いだった最強形態が神々しく見参(挿入歌としての「明日見る者たち」も実に良い味を出してます)。

トリニティのエタニティゼラデスで致命傷を受けたデストルドスは、続いて主役三倍盛りのデルタライズクローにチェンジしたゼットとトリダーのダブル必殺で爆散し、追い詰められたイーヴィルは暴走した闇の力で更なる巨大化を遂げ、これは自分でもびっくりだ!!

トリニティ、トリダー、デルタゼットの最強トリオは平成ウルトラ伝統の巨大空中戦に突入し、3人が飛び立つと同時に流れ出す主題歌「Trigger」が文句無しの熱さ。

巨大化してからはほぼ良いとこ無しのイーヴィルをトリニティ必殺のトリプル最強光線でさっくり撃破し、市街地戦が長かった反動で決着は少しあっさり気味。

しかし力尽き消滅する寸前、仲間に囲まれたケンゴとユナを見て、かつての自分とユザレを思い出し笑顔を取り戻すザビルは余計なセリフが無かったことも相まって良いシーンでした。

短いシーンに色々詰まっていて与太をこじつけたくなりますが長くなるので割愛、とりあえず、ホスピタリティは大切にしよう。

「さよなら、ユザレ……」

薄れていく自身の遺伝子に別れを告げるユナも、良い場面でした。


ヒマリに捕らえられ真空パック入りさせられたセレブロ(ゲームの件、伏線だった)を抱えたハルキ、そして新たにトレジャーハントの旅に向かったイグニスと別れ、改めて自己を確立したケンゴのお帰りパーティーを催すGUTS-SELECT…ってナースデッセイもう直ったの?

 

「僕はマナカケンゴーーー僕は光で闇、ウルトラマンで人間、これからもここで生きていく……僕を笑顔にしてくれる皆と一緒に」

 

信じよう奇跡を 僕らずっと守っていこう

君に咲いた笑顔を


重苦しく進んだストーリーとは裏腹に、ケンゴが明るいモノローグで物語を締めくくり、パーティーの楽しそうな様子が流れるエンドクレジットがひたすら爽やかで、紆余曲折あった『トリガー』においてはこの上ないエンディング。

TVシリーズの諸々の要素を穴埋めしにかかった補完的な側面の強い完結編ではあったのですが、前述の通りそれが『トリガー』の名を冠する本作において実現したことが大きな意味を持っており、作品自体を最終的には嫌いになれず完結させられたのは、最後まで追いかけた身として嬉しいの一言。

まああまりに出来が良すぎて「これは『トリガー』なのか…?」と飲み込みづらかったのも事実ですが^^;

 


少し時間が空いたことで上手くまとめられずにかなりの長文となってしまいましたが、ひとまず『トリガー』を完結まで見つめて良かったと思わせてくれたスタッフに感謝しています。

本当にありがとうございました。

メインスタッフが同じの『デッカー』も設定的には好みに合いそうな気がするので、楽しみにしています。

 


ちなみに今回の劇場版で株を大きく落とされたジャーク会長ですが、パーティー中ヒマリ隊員の肩にガッツリ手を回して踊っていたことで最低ポイントも大きく稼いでしまい、スキャンダルには気をつけろ!!

 

 

締めがこれでいいのかは置いといて、ひとまず『トリガー』終了となります。

色々ありましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。