うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマンデッカー「襲来の日」

ウルトラマンデッカー』

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第1話「襲来の日」

(監督:武居正能 脚本:根元歳三

「地球に平和が訪れ7年、宇宙開発は飛躍的に発展しました。まさに、ネオフロンティア時代真っ盛り!」

前作でジャーク会長が設立したTPUは火星の第2コロニー建設を進めるため、TPU訓練校の宇宙対策科を宇宙に派遣。

地球の内外から怪獣の出現が止まったことにより、かつての精鋭チーム・GUTS-SELECTはその軍備を縮小されており、ファルコンのみならずナースデッセイまで無人飛行となっていたというのは設定を上手く拾っており、納得度の高い展開。

「前に向かって進むのはいいことです。でもそのためにも、足下をしっかりしておかないと……都合良く私たちを助けてくれる存在が、また現れてくれるとも限らないですし

TPUの方針が宇宙開発に傾き過ぎていることに対し、訓練校校長のムラホシタイジが不穏な一言を漏らしていたそんな時代、昭和の香りが色濃く漂う地球の煎餅屋にて、暑苦しい青年の声が響いていた。

アスミカナタ!明日を見る、彼方まで!」

見るからに老舗な煎餅屋が「宇宙煎餅」というトレンドに乗っかった商品を売り出しているという節操の無さが妙なリアリティ(笑)


「火星かぁ…母ちゃんと父ちゃん楽しんでっかな…」

カナタだけでなく煎餅屋の客からも火星の往来について触れられることで、宇宙開発が世界観単位でしっかり機能していることを強調している話運びが手堅く、そこで火星行きのスペースシャトルが飛び立つ姿を決意の目で見つめる女訓練校生・キリノイチカとカナタは遭遇。

「今日は皆さんで警備のお手伝いだそうで、ご苦労様です!」

「あ、ありがとうございます」

キリノ初対面から既に煙たそうな対応を取られるカナタだったが、昭和気質が染みついている男にはそんな微妙な距離感など感じ取れるはずも無く、任務中にも関わらず自慢の宇宙煎餅を押し付けようとし、好感度を上げようとして逆にハラスメントの疑いを持たれやすいタイプだった。

「堅いねぇ〜ウチの煎餅より堅いや!」

両親が火星に旅行してるから、宇宙関係の仕事してる人には親近感湧くよ!と厄介なナンパ師みたいになってきたカナタにしつこく絡まれていたキリノだったが、訓練生の集合時間を告げにリュウモンソウマが現れそれを口実にナンパ師を撒くことに成功し、現時点での好感度レースはリュウモンさんの一人勝ちです!!


しかし厄介者を撒いたのも束の間、火星の市街地が未確認飛行物体に襲撃を受け、地球においても世界各国主要部の上空に巨大な飛行物体が同時に出現し、街に攻撃を開始する!

「君も早くシェルターに! 急いで!」

カナタを一瞥した際に害虫でも見るような目をしていたリュウモンさんが、非常時にそのカナタに対してもしっかりと避難誘導を促し、更に訓練生の中でもリーダー的ポジションにいることから使命感の強さを先に示す形に。

困った面が先立ったカナタも避難中に倒れている人を抱き起こし、瓦礫に埋まった女性を誰よりも早く見つけ迷わず助け出そうとするなど最低限善良さの押し出しが図られており、避難誘導中のリュウモンさんとキリノが注意しつつも女性を助けるために力を合わせて3人の関係性(腐れ縁)を物語の中で作り上げるなど、前作『トリガー』ではスキップされがちだった人間描写が開始10分程度にして早速効果を発揮しています。

反面、駐車場に置かれている瓦礫の山はかなり不自然(人を隠す気満々というか)で、小道具に関する予算の配分は未だ厳しい部分なのかなと感じてしまいます。


「あとは俺たちに任せて、君はシェルターに行くんだ!」

「こんな状況で、俺だけ逃げるわけにはいかないだろ!!」

言葉の端々に何となく優しさの見えるリュウモンさんとカナタとの衝突への布石もしっかりと用意され、それを前線に立ちライフルを乱射していたムラホシ校長が目撃していたところで、飛行物体は地上に精強融合獣スフィアザウルスを召喚し、7年の空白を経てついに怪獣が地球に再臨!

四足歩行ではあるものの、前脚だけが異常に大きい特異なフォルムが面白いデザインのスフィアザウルスは、デフォルトで持っている電波障害機能を発生させ(通信機器が使用不能になるという伏線あり)、無人飛行のファルコンとナースデッセイが、一切の抵抗もなく墜落する姿は印象的に決まりました。

過去のウルトラシリーズでも前作登場の防衛隊や軍を、第1話登場の新怪獣に敗北させて新ヒーローの存在を印象付けるという手法が用いられていたようですが、「怪獣が現れないことで起きた軍縮により、ファルコンやナースには操縦士がいない」という設定が容易に前作メンバーの株を落とさず、旧GUTS-SELECTの敗北を描くことが出来たのは秀逸な流れ。


ザウルスのみならず、街を襲っている小型物体も人間を取り込み始めたため校長はリュウモンたちを撤退させようとするが、カナタは自分が引き付けると主人公属性を発揮させ、ライフルを拾い特攻!

「いきなり人ん家来てデカい顔しやがって! 地球人なめんじゃねぇぞぉぉ!!」

地球人ならライフルぐらい簡単に扱えるぜ!!

冗談はさておき、実家の煎餅屋で働き、宇宙に対してほんのり憧れのようなものを感じさせるカナタが、地球を「人ん家(自分の家)」と呼んで守ろうとする姿はヒロイックで、「用意しているセリフに対して作品内での描写が、その説得力を引き上げる」という良い例を見た気がします。

しかし抵抗虚しく、カナタは飛行物体に身体を取り込まれてしまう……って後ろで並んでる3人がすごく間抜けなんですが、ここまでは割と気をつけてたのにどうしてこうなった。


「俺は、死んじゃうのか…? あれ……ここは、どこだっけ…? 俺……"俺"って何だ…何だじゃない! 俺は、俺だ!! 

 俺は、アスミカナタだぁぁ!!!

身体を取り込まれたカナタは、何者かに精神を侵食されそうになるもすぐに自身を取り戻し、その名を叫んだと同時に宇宙のような空間が転送され、左胸に光を宿した謎の巨人と邂逅。

「声…?……デッカー? あんたの声なのか? 俺の身体を……あんたの力…?」

カナタには聞こえているような声でも、視聴者には断片的にもたらされる情報が話の内容的にも只事ではなく、不穏な雰囲気を漂わせながらもカナタは巨人の力を宿したナックル型のアイテムを手にし、新たなる光の名を叫ぶ!!

「輝け……輝け……

 輝け! フラッシュ!!

 デッカー!!!

カナタを取り込んだ飛行物体を突き破り、ウルトラマンデッカー・フラッシュタイプが地球の大地に降臨する!!


変わり果てた自身の姿に驚きながらも、ザウルスの繰り出した飛行物体ミサイル(ザウルスは小隊長みたいなイメージでしょうか)を迫力の空中戦で蹴散らし、ザウルスに先制の右ストレートを叩き込んだデッカーだったが、巨大な前脚に案の定手こずって踏み潰されてしまいそうになり、7年前の先輩ウルトラマンから、苦戦属性はしっかり受け継がれたようです。

それでも機転を効かせて態勢を立て直し、ザウルスの角を折って優位に立ったデッカーは必殺セルジェンド光線でさっくりザウルスを爆砕。

勝利も束の間、最初に出現した巨大物体が何やら地球を緑の膜で覆っていることに気付いたデッカーは宇宙(成層圏辺り?)まで飛び、それを止めようと手を伸ばすも僅かに届かずシールドに阻まれ、変身解除しながら地球へと降下してしまうといういきなりの敗北展開。

変身が解けたカナタはナックルを持ったまま大の字で道端に倒れており(直後ナックルは消失)、保護にやってきたキリノリュウモンさんとの間で一悶着あるのですが、校長の制止でその場はお開きとなり、この場面キリノの目つき(特にカナタに向いてる時)が異様に悪いのですが、煎餅ナンパの件が相当後を引いているのでしょうか。


「私の名前はムラホシタイジ、TPU訓練校の校長です。 もし君に意志があるのなら、いつでも連絡してください」

「意志?」

「大切なものを、守る意志です」

"スフィア"と名付けられた飛行物体の影響でTPUの戦力は壊滅同然、更に地球を覆うバリアが展開されたことで宇宙への往来はおろか連絡を取ることも出来なくなってしまい、地球は宇宙の孤島と化してしまった。

世界観に関する情報共有においてニュース映像を流すのは便利だなと思いつつ、両親が火星旅行中だということも重なり、思い詰めた表情になるカナタであったが、

「カナタ、俺なら心配ない。

 お前はお前の信じる道を行け」

隠れヒロイン・祖父アスミダイシロウの後押しも加わり、明日を見る男は決意を固めーーーーーーー

 

「しゃあぁぁぁ!いっちょ頑張りますか!!」

TPU訓練校に、キリノリュウモンと肩を並べた新人訓練生の名前が響き渡る!

「TPU訓練校・怪獣対策課!

 アスミカナタ!!

 よろしくお願いしまーすッ!!」

 

 

新たに始まった2022年の新作TVシリーズ、《ニュージェネ》としては『ギンガ』→『ギンガS』以来の正当続編として制作された本作ですが、『トリガー』から受け継がれた設定を残しつつ、時間の経過によって変化(弱体化)した面を自然に表現できたのは良かった点。

そして第1話を見た段階ではまだ判断しきれませんが、事前のインタビューでもあった通り本作は人間ドラマを重視するというコンセプトで制作されており、カナタ・キリノリュウモンのトリオとしての関係性を構築し、初回から各登場人物のポジションを明確に出来たのは、武居監督の手腕が光りました。

キャラクターとしては前述の通り、クール系でありながら常識的な口調と、訓練生たちの中でリーダーシップを取る使命感を持ったリュウモンさんの好感度が現時点で単独走でして、ここにカナタとキリノがしっかり入って来られるかも楽しみにしたいと思います。


校長の怪しい態度、デッカーの活躍が比較的少ない、カナタの厄介属性が不安だったりと不穏かつ不満な部分が無いこともありませんが、色々とネガティブな部分が目立ちそうなストーリーに反して、最後主人公が明るく自分の名を叫ぶのがすごく好きなシーンで、今後に期待を持てる良い第1話でした。

影山ヒロノブ氏の歌うED「カナタトオク」が爽やかなメロディラインで、土曜日の朝に相応しいのも好印象。

 

 

次回、同僚に対する悪口をナレーションで言い出すカナタが早速最低なのですが、

「マナカ隊員なら、"スマイルスマイル!"って言うんじゃないか?」

果たして、ムラホシ校長はGUTS-SELECT隊長の必須スキル"ホスピタリティ"を身につけることはできるのか!?