うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマンデッカー「出動!GUTS-SELECT」

ウルトラマンデッカー

第3話「出動!GUTS-SELECT」

(監督:武居正能 脚本:根元歳三

GUTS-SELECTに入隊したカナタたち3人は、HANE2の操縦する新型機・ガッツホークとの連携が基本となるファルコンのパイロットを決めるべく、TPU技術局のアサカゲユウイチロウの協力のもとシミュレーション飛行訓練を受けており、見どころは単身で怪獣に突っ込み、即座に撃墜されるリュウモンさん。

「よろしくな、HANE2君…さん?」

3人がそれぞれ違う方法でシミュレーションをしくじる様子が挟まれる中、カイザキ副隊長が情報を整理するという名目でスフィアについての設定確認が行われ、物語を動かす3人の脇で年長組がしっかりと頭を使って状況を整理する流れが実に手堅い。

1年前地球に出現した5体のスフィア=キングスフィアは、小さな個体スフィアソルジャーと共に粒子状となって地球を塞ぐバリアとなっており、最初に出現したスフィアザウルスか地中に根を張りエネルギーを吸収しようとしていたことが判明。

8年ぶりの地球怪獣、そして新たなウルトラマンの出現との関連も否定できず、スフィアの存在がますます混迷を極めていき、恐らく前作から地球に眠ってる例の謎エネルギーを絡めてくるのだと思われますが、邪悪遺伝子の思し召しが宇宙にまで伝わった可能性も否定できない。


その頃若者トリオは海底超会議…ではなく屋上の残念反省会でHANE2と連携が取れなかった惨状を見つめ直しており、何故か遠慮した動きを見せるカナタに対しキリノが煎餅ナンパの件を引き合いに出してきて、やはり、根に持っていた。

アナログ人間だもんね〜カナタ」

1話の感想にて冗談半分で書いたカナタの昭和気質が公式設定となる中、キリノだけでなくリュウモンさんも意外とカナタを知ってることが前回噛み合わなかった"一年間の積み重ね"を感じさせて良かった点で、「AIの考えてることなんか分からん日々のスキンシップが大切なのにだいたい一年前スフィアにボコボコにされたのは人間が機械に甘えたからだろうが教えはどうなってんだ教えは(以下自主規制)」とHANE2のパーソナル部分に関心が移ったカナタたちは、とりあえず煎餅とお茶で接待。

元々宇宙開発用としてホークと共に開発されたHANE2の出自にキリノが同調を示すのは、早速本作の積み重ねが活きている場面であり、ちょっとしたコメントで好感度をメキメキと上げていきます。

「その情報は、既にデータバンクに存在しています」

何だか不穏な一言を呟いたり、口を滑らせてデッカーの名を漏らしてしまうカナタなどバタバタしながらも、HANE2に呼びかけるという形でカナタたちの心情が少しずつ掘り下げられるのですが、リュウモンさんの入隊理由に関しては少々あっさりし過ぎ(前回激怒した程の熱量を感じられない)なので、今後が期待だと考えて良い要素でしょうか。


「今のままでは、ファルコンとホークの合体は無理かと……本当に大丈夫なんでしょうか?」

「上層部にも言われました、新人部隊なんて上手くいくのかと……訓練期間も短いですしね」

「では、何故彼らを?」

アサカゲが意外と語気を荒らげ、あえて難度を高く設定した訓練に苦慮するカナタたちを余所に、年長組からカナタたちの経験不足を指摘するのは丁寧な話運び。

シリーズお約束の主人公がいきなり入隊するという流れに対し、そこだけで終わらせずに入隊後も荒削りな新人という面をアピールしつつ、それをトリオにすることで互いに切磋琢磨する様子がキャラクターの掘り下げになるのが本当に手堅い部分。

「今、目の前にある問題だけではなく、未来のことも想定し、備えていくべきだと思ったんです。 そのためにも、若い人材を育てておくべきだと……今度の戦いが、いつまで続くか分からないですから

訓練校校長を務めていたムラホシ隊長の若者への期待と、今後の組織体制の変化を図っての人事であることが判明し、第1話冒頭から抱えていた危機感を背景として抜かりなく隊長の掘り下げも進めていきます。

それはともかくとして、TPU内部でも少数派だと思われる軍備強化路線を穏やかに語る隊長がすごく怖いのですが、それを良い話風にまとめられているのは、恐らく先を見据えたホスピタリティの精度。

かつての隊長であったT.S氏の更迭は、隊員内で話題となっていた「名字でしか呼ばれない」「まともに発言させてもらえない」「発言されても無視される」というホスピタリティ不足から来るH.N元隊員(そういえばムラホシ隊長と一緒でメガネ民ですね…)の内部告発の影響であると噂されていますが、この世界の隊長に必要なのはスマイルでも筋肉でも邪悪遺伝子でもなく、敬語とホスピタリティ。

頑張れムラホシ!あとはジャーク会長を倒せば君が王だ!!(え


ヘトヘトになりながらも訓練に励むカナタたちであったが古代怪獣ゴモラが街へと出現し、迎撃のためシミュレーションで最も結果の良かったカナタがファルコンのパイロットとなって出撃することに。

「超振動波に気をつけて」

副隊長の口からさらっとトンデモ事項がもたらされ、初出動のコクピットの中で緊張気味のカナタに隊長がありがたい一言、

「君が夢見る未来は、何だ?」

じゃなかった。

「いいことを教えてあげましょう。ガッツファルコンは元々無人機、人が搭乗することを考えて設計されていませんからね……乗り心地は最ッ悪です」

「……って隊長! それのどこがいいことなんですか!?」

前回ファルコンに乗り込んだ隊長のお茶目が炸裂するも、カナタは少しばかりの笑みを漏らして肩の力を抜き、やはり職場内のコミュニケーションは大事だ!

「大丈夫、あなたたちならきっと出来ます!」

「「はい!!」」

「ふぅ…ありがとうございます、ガッツファルコン、発進します!!」

地上任務に当たるキリノリュウモンも含めて鼓舞を受けた若者たちは、隊長のホスピタリティを胸に、新生GUTS-SELECTはここに初出動を果たし、カナタのガッツファルコンはHANE2の駆るガッツホークと共に空へと飛び立つ!


地上班が注意を引きつけつつ、ファルコンとホークの連携アタックで尻尾切っちゃおう作戦を展開するGUTS-SELECTは文字通り首尾よく作戦を進めるが、地上班の危なっかしさは前作同様、見ていて微妙な場面。

このままゴモラを大人しくさせられると思ったのも束の間、そこに一年間影を潜めていたスフィアの尖兵が姿を現し、ゴモラと同化を図る!

「融合した…?」

スフィア合成獣、といったところですか…」

古代合成獣スフィアゴモラはますます強力になった超振動波を放ち、そこから引き起こされる電波障害でファルコンの制御が不安定になったカナタはHANE2にだけ回線を繋ぎ、ファルコンの同時操縦を依頼し…

「これから起きることは、絶対に内緒にしてくれよな!」

「ウルトラディメンション!」

 

え?


先程データベースに個人情報を入れまくってたHANE2に、形勢が少し悪くなったからとあっさり正体をバラしてしまってて、ここまで丁寧だったのに、カナタがウルトラマンになる(ならざるをえない)瞬間がばっちり決まらず。

カナタの性格を考えれば、一年前に自分があと一歩早く対応出来ていれば地球が封じられずに済んだと思っていたりで、スフィアが出現した時点でウルトラマン案件に切り替えるのも頷けるのですが、だとしたらその"一歩"を描いてほしかったところ。

また今回、HANE2とフォーメーションを組むための訓練からのスタートだったと思うのですが、訓練の様子は描かれたものの、そのコンビネーションが磨かれたシーンがほとんど差し込まれなかったため、変身をあっさりバラす程の信頼関係は全く構築されていません。

サポートAIとはいえカナタがウルトラマンである事実を提示する葛藤が「スフィアへの対応」と「HANE2への信頼」の綱引きにしようとしてどっちつかずになってしまいました。

その結果、カナタの定まらない心情に合わせて出てくるディーフラッシャー=Dさん(中の人)のポンコツっぷりも急加速することとなり、丁寧な反面、肝心なところで粗が目立ってしまう点は『Z』に近づいてきてます。


ともあれカナタはフラッシュして先制のヤクザキックを叩き込むが、強靭な肉体を持つスフィアゴモラに顔面膝蹴りをもらい今日も今日とてのたうち回るデッカーだったが、避難の完了していない病院を庇いながら戦うことで更に苦戦し、スフィア振動波からの再生尻尾撃でまたも地面にダウン。

「力が…力が、足りねぇ……!!」

日々の筋トレ不足を嘆くカナタであったが、そこに目を覚ましたポンコツ(二代目)が新たなカードを提供する!

「またきた!」

(カナタ、このカードを使えば、筋肉が強化されるでございます)

「こいつで、力が……?」

(そうだ。真っ赤に燃える勇気の力で、ウルトラ燃えていくぜぇ!!)

「……よし! うわぁぁぁぁぁ!!すげぇぇぇ!! 身体の底から力が、力が弾けてぇぇぇ!!!」

Dさん提供のストロングカードを掴んだカナタの全身を筋肉の炎が包み込み、ストロングパワーが!全身に溜まってきただろぉ!!!!!

 

「弾けろストロォング!!

 デッカァァァァァ!!!」


近年の筋肉モリモリ系とは一線を画す、グラディエーターの鎧じみた外装を纏うデッカー・ストロングタイプはスフィアゴモラとガッチリ組み合い、パンチラッシュをかけた後に尻尾を掴んでジャイアントスイングかます豪胆っぷりを見せつけ、これからの時代は細マッチョだ!

反撃のスフィア振動波すらも拳で受け止め、ナースキャノンで隙が生じた(前作消えがちだったGUTS-SELECTが地味ながら活躍して良かった)ところで、細マッチョデッカーは炎の必殺拳・ドルネイドブレイカーを食らわせ、スフィアゴモラを空中で爆砕。

かくして新生GUTS-SELECTは初出動でデッカーと共に勝利を収め、ナース指令室でアサカゲが隊長に握手を求める(意外と表情豊か)のですが、HANE2の件も含めて描写不足だったので、唐突過ぎて変な笑いが止まりません。

まあアサカゲさんに関しては今回は顔見せに近い扱いなので、今後の掘り下げに期待したいところです。


「無事に帰還できたことが最大の成果ですよ。まずは休息を取ってください」

「よーし、じゃあ英気を養うために…ご飯でもいきますか!」

ホスピタリティ溢れる職場にT.Sさんが情報部で涙を流している中、HANE2にウルトラマンである口止めをするカナタ…ってうーん……データベースに保存されたっぽいので今後の展開で何かありそうですが、現状ではあまり面白くない正体バレの処理。

ついで呼びづらいから別の名前付けようぜとなり、原典通りハネジローと名付けられるHANE2は書き手としても大変ありがたい改変で、こんなところにもホスピタリティの伝染を感じ取れてしまいます(笑)

いざゆけ! 反シズマ同盟!!(待て)

「カナタぁ、お前さ、操縦荒くね?」

敬語だと調子狂うからタメ口でいいぞと言ったカナタに対し、いきなり崩しまくった口調になったハネジローと少し距離が縮んだところで、つづく。

 

 

『R/B』以来4年ぶりにメインを担当することになった武居監督でしたが、持ち味のドラマパートの見せ方が功を奏し、キャラクターの魅力を引き出せた良いパイロット3話となりました。

前作は販促スケジュールの影響でキャラクターの心情描写が不足して付いていけない展開がほとんどでしたが、その反省を活かしてかほぼ同じようなメンバー構成でもそれぞれの立場が明確になり、スッと物語に入りやすくなっていたのは良かったです。

本作を見てるとキャラクターを立てる行為は出来事を自分で語らせるのではなく、やはり他のキャラクターとの細かいやりとりにあるのだなと。


ドラマパートが丁寧な反面、ここ3話に共通して言えるのですが、いきなりカードが目の前に現れる、身体が炎に包まれるなど玩具販促に関わるイベント消化が少し投げやりな点は気になります。

初メインライターの根元さんは『エピソードZ』を見る限り納得度の高い展開は用意できているようなのですが、情報のまとめ方に少し難があるような気もするので、期待半分不安半分で見守っていきたいです。


肝心の特撮パートは前作パイロットに比べれば控えめな印象ですが、第1話のスフィアソルジャーを蹴散らす場面など印象的な部分もいくつかあったので、これから多くの監督が入って、更なるスパイスを加えてくれることを期待したいと思います。

 

 

次回、駐車場で博士の男の子心案件。