うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマンデッカー「破壊獣覚醒」

ウルトラマンデッカー

第4話「破壊獣覚醒」

(監督:辻本貴則 脚本:中野貴雄

ディーフラッシャー、キャンセルできる。

怪獣が出現し、逃げ遅れた人々をビルから救出しつつ宇宙人と交戦するという何だかよく分からない状況でシミュレーション訓練を行っていた若者トリオ。

「結果が全てだ、シミュレーションでなければお前は死んでいた」

宇宙人を深追いしたカナタがフォーメーションを崩し、怪獣の前にわざわざ顔を出したことからミッション失敗になるのですが、訓練じゃなかったらウルトラマンに変身して助かるうえに、そのまま戦いに持ってこれる作品のセオリーを逆手に取った興味深いシーン。

作品をメタ的に捉えがちな中野脚本が早速スパイスを加えてきて、根元さんとは違う味付けを発揮してきております。


「ぶっちゃけ、これからどうするつもりよ?

人間を超える力を持ってしまって」

訓練でのディーフラッシャー発動未遂をチクチク指摘し、どこかのキカイノイドじみた口調になったハネジローのヒロイン力がめきめき上昇するも、昭和気質のアナログ人間の前にはそんな正論など通用するはずもなく、

「じいちゃんが言ってた、人間最後は気合いで決まるって」

直後開かれたブリーフィングにてスフィア合成獣の説明があり、元々そういう役割として生まれた感は否めませんが、さすがに副隊長が説明係としての出番が多すぎて同じような導入が続いてしまうのは、これから少し不安な要素。

「我々も、手をこまねいているワケではありません」

現在の戦力では強力なスフィア合成獣に対処できないことから、前回言及のあったファルコンとホークの合体メカ・ガッツグリフォンの運用開始が明言され、それを自慢げに語るアサカゲさんがめちゃくちゃ面白いのですが、駐車場で偉い人の男の子心をくすぐれば合体メカは作れる!

「俺、合体メカ好きだったんだよぉ……やっぱ合体はロマンだよなぁ!」

アサカゲさんの意外な男の子心に案の定シンパシーを示すカナタ、君は一体いくつなんだ。

それともあれか、この世界線では『コ○・バトラーV』とか『ガイ○ング』とか『○イオージャ』とかがつい15年くらい前に放送されていたのか。

「オモチャじゃないんだぞ、真面目にやれ」

異次元からGフォースの青木がカナタに手招きしてきておりますが、そんなカナタを宥めるリュウモンさんの口元が微妙に笑ってるように見え、男の子の抱える、強い夢に魅せられて。


男の子共が自分の夢をスパークさせていた頃、温泉地として知られるユノハナ町に謎の巨大カプセルが出現し、スフィアが影響してか出なくなった温泉を掘削ドリルで発掘していた際に現れたと堀内正美氏演じる町長が語り、怪獣(スフィア)の出現が市井にどのような影響を与えているのか、という視点が盛り込まれるのは手堅い流れ。

地球上の物質ではないと目されるカプセルは一定間隔で波長を繰り返し放出しており、そんな折キリノの口からユノハナ町には阿賀大明神の降臨伝説があることが語られ、温泉地にも足を運んでいたことから意外とスピリチュアルな面を持っているなキリノ

地層を調べた結果、カプセルはおよそ1300年前に地球に降下したものと考えられ、そんなこんなしてる内にカプセルから破壊獣モンスアーガーが出現し、火炎放射でユノハナ町を焼き払い始めたためファルコンとホークが出撃。

「ガッツファルコン、左右から挟み撃ちだ!」

そういうコミュニケーションは前回から取っといてください。

「イチかバチか、やってみないと分からないじゃないか!」

「希望的観測じゃダメなんだよ!」

しかしモンスアーガーの硬い表皮にはファルコンとホークそれぞれの攻撃じゃ歯が立たず、グリフォンに合体すればと言い出すカナタをハネジローは制止し、バディものらしさは出てきた一方、キリノリュウモンの影が若干薄くなってしまうのは、場面を分けた弊害として今後の不安要素です。


カナタとハネジローが言い合いをしている中、副隊長がカプセルの波長を解析し終え、それは町内放送となってスピーカーに流れる。

「全宇宙の皆さん、こんにちは。こちらはメラニー遊星です。 皆さんは、勝手に宇宙に進出してくる不愉快な文明に、悩まされていませんか? そんな時には、この破壊獣・モンスアーガーシリーズ! きれいさっぱり、邪魔な文明を根絶してくれます!」

原典の『ダイナ』においても明らかに人為的な手を加えられたと考えられるモンスアーガーは、侵略兵器というよりは人類の宇宙進出を面白く思わない何者かによって仕掛けられていた時限爆弾のようなものとなり、事務的ながら物騒なアナウンスを流すカプセルは「侵略や破壊行為がビジネスの延長にある」という風刺的な描写となり、何とも中野脚本。

「怪獣の通信販売かよ……ふざけるなぁ!」

頭に血の昇ったカナタはモンスアーガーに奇襲をかけるも火炎攻撃のダメージを受け、デッカーに変身し航行不能になったファルコンを抱えるシリーズノルマを達成するついで、炎上した箇所を湧き出た温泉で消火。

「すごい…我が町のお湯が、お役に立ったぁぁぁ!!」

おまけにデッカー変身をキリノリュウモンに隠すため、ハネジローの行ったカナタモノマネ(チャラ男成分マシマシ)に首を傾げたり、カプセルのアナウンスを叩いて止めたりとデッカーのリアクションが挟まれ、緊張感が端に追いやられてしまってます。


デッカーは火炎を避け組みかかるも、硬い表皮とメラニー筋肉を纏ったモンスアーガーにパワー負けし、今日もあっさりダウン。

安定の地面ゴロゴロを達成して何かに目覚めたデッカーは細マッチョストロングにチェンジし、自慢のウルトラ手刀で神経の集中している頭頂部を狙うも外付けバリアの出現でスタンになってしまい、火炎シュートで本日2回目のダウンを取られる。

「シミュレーションの結果、勝率が0.01%上昇。この作戦を選択」

登場2話目にしてピンチ属性の加速が止まらない細マッチョストロングがカラータイマーをピコンピコンさせていた頃、消耗したホークのエネルギーで最善の打開策を検討したハネジローは、データが不足しているはずのファルコンとホークの合体を進めるべく、デッカーに通信で水脈を刺激するよう指示し、それをキリノリュウモンに傍受されるという最大のガックリシーン。

先程わざわざテンポを崩すという弊害がある中で、カナタのモノマネをするというギャグを挟んでまで正体を隠すための対処をしていたというのに、ここでキリノリュウモンに通信を聞かれていたら本末転倒です。

おまけに、さっきまで地面をのたうち回っていたデッカーの前からモンスアーガーが消失し、ゆっくりじっくりと水脈を刺激するシーンも描かれるので、緊張感が地球に張られたバリアを通り越して宇宙に放り出されてしまいました。


ともあれ、デッカーの細マッチョファイヤーによって復活した間欠泉で舞い上がった無人のファルコンに、無茶を承知でハネジローのホークがドッキングアプローチを仕掛ける!

グリフォン・フォーメーション!」

接近さえすれば遠隔操作が可能という設定が布石となり、2つの翼は鷲獅子の名を冠する新たな翼へと転生!

「合体が、成功した!」

指令室でめちゃくちゃ嬉しそうなアサカゲさんが相変わらず腹筋に悪いのですが、グリフォンの参戦によってモンスアーガーの頭頂部の弱点は破壊され……なんてことはなく、何となく発動したデッカー炎の踵落としで弱点は破壊され、ひびの入った頭頂部をグリフォンビームで一閃してKOというフィニッシュに唖然。

「ハネジロー、ロンズデラ何とかがどんなに硬かろうが、やっぱり最後は気合いだっただろ?」

戦いを終え、ハネジローに勝ち誇るカナタであったが…このシーンをやりたいがために、フィニッシュをグリフォンに譲ったのか……。

その判断自体は別にいいのですが、カナタの「気合い」とハネジローの「分析」の双方を際立たせ(たうえでシンクロさせ)るのならば、ギャグシーンを挟むのではなくデッカーの奮闘を描くべきでしたし、グリフォンの登場もキリノリュウモンを無理やり巻き込んでの合体で、作劇的に本当に見せたいポイントが不明瞭で、そんな状況で迫力の映像!みたいなノリで技を決められても、何に乗っかれば良いのか判断に困るだけです。

結果的にデッカーのおかげで温泉は復活し、"ウルトラマンを救った温泉"という写真を手に入れたウッキウキの町長の前で、温泉より仕事だと帰っていくリュウモンさんに泣きつくカナタとキリノで、つづく。

 

 

パイロット版を終え、こだわりの特撮で魅せる辻本監督と《ニュージェネ》シリーズの誇る妖刀使い・中野貴雄脚本によるなかなか尖ったサブパイロット。

ファルコンとホークの合体イベントをカナタとハネジローのコンビ力アップに繋げたまでは良かったですが、詰め込み不足なオチと、これといって目新しい要素が無いうえにクドさが際立った特撮部分、カイザキを中心として単調で工夫の足りないカメラワークが目立つドラマパートなど、正直期待の割に微妙な回でした。

途中、森を切り拓いて…みたいな話があったので、メラニー遊星と絡めてよくある文明批判に繋げる狙いはあったのかもですが、情報を全然整理できていないのでカットされて正解かなと(笑)

同じ座組ということで魔の『Z』第5話がチラついた今回ですが、まあ最初ということなのか辻本監督も抑えめな印象だったので、総合的な評価は様子見といったところです。

男の子心をくすぐられまくってるアサカゲさんは、すごい面白いんですけどね!!

 

次回、画面が暗すぎる。