うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマントリガー「アキトの約束」

ウルトラマントリガー』

第5話「アキトの約束」

(監督:武居正能 脚本:根元歳三

「どうしたんだよアキト!よせって!いつもの冷静さはどうしたんだよ!?」

「邪魔をするな!あいつは…あいつは俺の手で!!」

地球人類の前に初めて現れた始まりの怪獣・破壊暴竜デスドラゴが6年の歳月を経て再び姿を現し(火星育ちのケンゴだけいまいちピンときてないのは細かい描写)、撃退に出撃するGUTS-SELECTですが、アキトだけはどうも様子がおかしく、避難誘導そっちのけで地上からの発砲!で応戦。

状況を見かねたケンゴはマルチトリガーにブートアップ!して戦うも、デスドラゴの硬いボディにまたも苦戦を強いられ、挙句しゃしゃり出てきたアキトを庇ったことでダメージを負うも、マルチスペシウムで何とかデスドラゴ撤退に持ってくことに成功。


現場では避難が終わっていなかったにも関わらず怪獣を引きつけるような行動を取り、フォローに入ったファルコンを墜落させる遠因を作ったアキトは隊長から、ウルトラ名物・謹慎の刑を食らっていた。

だ、大丈夫アキト!3日間というだけでだいぶ優しい部類だぞ!!

「ユナ、アキトはどうしてあの怪獣を、あそこまで?」

明らかに冷静さを失っていたアキトに何があったのか、ユナはケンゴに6年前のデスドラゴ襲来の映像を見せ、そこに映っていたガッツウイングには父のシズマ会長が乗っていたこと、そのガッツウイングはシズマ財団が政府の名を借り作り上げていたこと(邪悪)から話を始め…

超古代文明の遺跡から、怪獣や闇の巨人たちの存在に気付いたお父様は、世間に対策を働きかけた。けど、相手にされなくて…」

そりゃそうだ。

そんなジャーク会長の人類に対する警告への数少ない共感者であり科学者でもあったアキトの両親は、少年期から天才と呼ばれていたアキトと共に世界を守るために全力全開!でジャーク会長に協力していたが、デスドラゴの襲撃によりアキトを遺し生命を絶たれていた。

 

 

※注意

ここから少し意地の悪い与太話が出てくるので、そういうのが苦手な人は「大丈夫かな…」くらいのところまで飛ばすことをオススメします。

 

 

えー順番を整理すると

①ジャーク会長が超古代の遺跡を発見し、人類に迫る危機を察知

②世間に働きかけるも白い目で見られる

③共感してくれたヒジリ夫妻の協力で兵器開発

④実際に怪獣出現

⑤迎撃に出たことで秘密裏に兵器開発したことがバレるのと引換に、人類に自分の説の信憑性をもたらす

⑥ヒジリ夫妻は怪獣襲撃で亡くなる

という流れだと思われるのですが、ヒジリ夫妻がいいように利用された挙句、始末されたように見えなくもない気がしてきました。

ユナの語りだけということもあってこの回想ではヒジリ夫妻側のリアクションはほとんど語られておらず、あくまで会長目線の一方的な情報の押し付けになってることで、実は会長に関する何か重要な情報を握った両親が、怪獣襲撃にかこつけ生命を落とすよう仕向けた可能性も出てきました。

更に少年期から天才だったアキトを両親の死後家族として迎え、同年代の女の子である娘と接触させその心の氷解も図り、ユナと光の巨人の話を引き合いに出してガッツスパークレンスを作らせ、期待させたところでケンゴをGUTS-SELECTに迎えアキトの闇の部分を広げているという流れが非常に鮮やかで、やはり、闇の巨人以上に邪悪さが際立っている。

少し真面目な話をすると、政府の名を借りて兵器開発を行えたことからも会長は政治的な立ち回りは冴えており、アキトをただ家族として迎えるのでなく頭脳として上手く誘導する姿はその延長線上にある有能さと、自らの手を汚してでも世界を守ろうとするストイックな姿勢を際立てようという目論見があるのかもしれません。

しかしその目的はケンゴの夢に出てくる闇の戦士に繋がっているような気もしてきており、会長の言動と行動の何でも知ってる感は苦手な要素ですが、そのゴール地点は不穏ながらかなり気がかりで面白いところ。

 

 

「大丈夫かな…アキト」

「心配無い…だって、私と約束したんだから」

謹慎の刑を受けシズマ家にやってきた時と同じように塞いでいたアキトの前に現れたのはユナ…ではなくパトロール中という名目で様子を見に来たケンゴ。

俺はユナを待ってたんだ!俺の家で…お前じゃない!!

しかし普段から好感度ポイントの選択肢を間違いまくってた影響から、側に寄り添ってくれるのが怪しいスマイル転校生しかおらず、挙句、男から雑に花を渡されてしまうアキト。

「…ふざけているのか?」

日頃の行いの影響です。

 


「あいつは必ず倒す。そのためなら俺は…!」

「本当にそれでいいの?アキトは、何のためにGUTS-SELECTにいるの!?怪獣に勝つことが…怪獣を倒すことが、本当にアキトの…」

「ウザいんだよぉ!!」

アキトに差し出された白いバラの花言葉は"約束"であり、ユナとアキトの約束に掛けて植物学者らしい場面を用意されたものの、むしろ逆効果となってしまったケンゴは珍しく声を荒らげてアキトに迫ったところ、胸ぐらを掴まれやや怯みながらもすぐに口を引き締めアキトを見つめ返すのがカッコ良く、短いシーンながら、マナカケンゴというキャラクターを掘り下げられてて良かったです。

思い返してみると、サブタイトルを見るに前回今回でそれぞれケンゴとアキトの掘り下げが行われるというように感じたのですが、前回は頼りにならないと思いながらもケンゴのことを信頼して捨て身の行動に移るアキト、に対し今回はアキトの過去を知り、奮起を促すためにあえて真正面から向かっていくケンゴという姿が印象的に描かれ、それぞれの掘り下げにおいて対極に位置する者のリアクションで、そのキャラクター性を引き出すといった形に見えるのが興味深い点。

前回はアキトの捨て身の姿が"トリガーに向けられたもの"だったこともあり上手くいってるというようには見えませんでしたが、いざとなったらアキトにも掴みかかるケンゴは主人公としても引き立っており、先程までの流れから一転、急にこの2人の関係性に引き込まれてしまいました。


ケンゴとアキトが一触即発状態になってた頃、地下に逃げたデスドラゴがカルミラによってパワーアップさせられ三度街に出現。

相手しながらご丁寧にデスドラゴの強化を叫んで説明してくれる指令室から連絡を受けたケンゴは、バラをアキトに押し付け現場に向かい、地上から援護しているユナに加勢しようとした中、謹慎を破りアキトも臨場。

しかしそこにダーゴンが何の脈絡も無く出現し(一応、前回ユザレの件を聞いてるので目的はハッキリしてるものの、エピソード単位では何の布石も無かった)、ユザレの発動を狙いユナをストーキングする!


「忘れたの!?ユナとの約束を!!」

親の仇であるデスドラゴと守りたい存在であるユナを付け狙うダーゴンの板挟みとなり身動きの取れなくなるアキトであったが、ユナに重なったケンゴの言葉が彼を突き動かす。

「分かった…怪獣は任せた!ケンゴ!!」

「うん…ユナは任せた!!」

かつて両親を亡くし塞ぎ込んでいた自分を立ち上がらせてくれたユナ、そんな彼女の好感度ポイントを得て一発逆転を目指し、アキトはユナのもとに走り、ケンゴはデスドラゴに向き直りマルチトリガーにブートアップ!

「これは俺がユナを守るために作ったんだ!俺がこの手で、光の巨人に……お前じゃない!!」

「光の巨人になる=ユナのために戦う」でしか無かった(巨人になることでしかユナを守れないと思っていた)アキトは、光となったケンゴのネガ的存在であり、笑顔のためにどこまでも戦えるケンゴに対し、ユナとの現状の関係に変化を見出そうとしないなど"諦めの境地"に到達してしまっているのが悲しいのですが、半ばその諦めに陥れたように見えてしまうケンゴがアキトに"人間として出来ること"を教えるのは王道で分かりやすかった反面、やや上から目線で、更にだいぶ割り切りが早かったことも手伝って劇的さを大きく欠いてしまったなぁという印象を受けました。


ストーカーダーゴンから逃げるユナはビルの地下に隠れて撒こうとするも、人間大にサイズ変更したダーゴンがあっさりユナを発見。

ユナのもとに急ぐアキトは、ユナにかつて掛けられた言葉を思い出す。

「アキト君、お父様が言ってた。頑張れば誰だって、光になれるんだって。一緒に頑張ろう、アキト君」

う、うーん…この局面においてもユナの言葉がシズマ会長の受け売りであり、情報をもたらし大事な場面でユザレを発動するだけの入れ物にしかなってないのが、ぶつかることでお互いを引き立てあっていたケンゴとアキトに比べ本当に残念なキャラ造形。

「私、絶対にこの世界を守ってみせる!!」

おかげで直後のこのセリフも出所が不明なことも相まって非常に空虚で、シズマユナというキャラクターの軸として全く機能しません。


「勇気ある者には、手を抜かぬのが礼儀。お相手いたそう」

追い詰められながらも果敢に銃を向けてくるユナに対し、なんだか面倒くさそうな性癖を発揮しつつあるダーゴンが迫り、そこに主役は遅れてやってくる!とアキトが見参。

ユナがエレキング電撃砲をブートアップ!した直後、アキトはガマクジラキーをブートアップ!し水流波を浴びせ、少年漫画によくありそうな「水は電気をよく通す!」の逆版を行いダーゴンにダメージを与えるもかすり傷程度。

やむなく掴みかかるアキトだが、筋トレとヒロインへの好感度が足りない影響でダーゴンにあっさり吹き飛ばされてしまう。

このままじゃバッドエンドまっしぐらだ…と絶望したアキトに迫るダーゴンの前にシールド発動したユザレ…ではなくユナが立ちはだかり、なんとダーゴンをビンタ。

「私たちは、人間は、あなたたちなんかに負けない!絶対に!!」

人間からスーツの宇宙人に直接ビンタという展開には良くも悪くも驚かせられましたが、先述の通りユナというキャラクターに何の信念も感じ取ることが出来ないので、セリフに力が全くこもってないのがもったいないところです。

「ふ、ふんっ!その意気や良し!今日のところは見逃してやろう!だがな、次は無いと思え…!!」

そして思わぬ反撃に大きく動揺したダーゴンは捨て台詞を残して退散し、あれ?レアEDルートをまさかのユナが切り拓いちゃった!?


闇の巨人の1人が新たな道を踏み出そうとしていた頃、スカイタイプにブートアップ!したトリガーは空中からアローでの射撃を仕掛けるも、パワーアップしたデスドラゴの電撃攻撃に苦しめられ墜落。

サークルアームズをソードにして盾のように使うのは戦闘スタイルに幅が出て面白かったです。

電撃を受けながらまたも唐突に「そうだ!」と閃いたトリガーは電撃を弾き飛ばし(剣で吸収した?)、マキシマムブートアップ!!アローストライクでデスドラゴを一閃し、今日も何だかよく分からない勝利を収め、こういう時のリアクションこそGUTS-SELECTの人たちにやらせればいいのに…。

(ちなみにファルコンはほとんど活躍せず今回2度目の墜落であっさりフェードアウト)


またも命令違反を犯したアキトは隊長から謹慎3日間追加と、何だかんだの気遣いから出てくる思いやりの言葉を言い渡され、合計6日間の謹慎で済んだうえに職場復帰しやすい雰囲気を作ってくれてかなり優しいぞ隊長。

そしてこんな時でも、リアクションの全く見られないヒマリテッシンマルゥルは本当に仕事仲間としてふさわしいのか疑問のまま、交流を深めたケンゴアキトユナを映し、花瓶に活けられた白いバラを最後に、つづく。

 

 

サブタイトルの通りアキトの過去が明かされることになった回ですが、先述した通り前回ほとんどバックボーンが明かされなかったケンゴにも芯の強い属性が付加され、2人してキャラクターが肉付けされていくのが作劇として気持ち良かったです。

しかし一方で、未だ黒幕疑惑の晴れない会長、その会長の受け売りしか話さずユザレの入れ物でしかないユナ、横の繋がりが皆無なせいで個性があるようで全く活きてないGUTS-SELECTの面々、導入こそ主軸ながら途中からトリガーと一緒に蚊帳の外に放り込まれるデスドラゴなど、消化すべき要素が多い本作の短所が多く顔を出してしまった回でもあります。

言ってしまえば前半は良かったものの、後半で大きく横に逸れたといったところでしょうか。

キャラが立ってきたと思ったケンゴも、結局も軸の定まらないユナに出番を取られちゃうし…。

まあユナに関してはまさかのダーゴンルート開拓の可能性が出来たので、そこでキャラクターとして完成されてくることも期待できますが、闇の巨人に二度個別で襲われたことからも、本人の心境の変化に期待したいところです。

 


今回リアルタイムで見た時はあまり心の動かない回でしたが、改めて見直すと詰め詰めだった1〜3話を上手く処理しているようにも見え、アクションや特撮方面でもあまり違和感なくパイロットを再現しようという映像の作り方が素晴らしく、作品の雰囲気を大事にしつつ、ローテ監督として現状のウルトラシリーズを支えている武居監督の長所を見た気分です。

逆に自分自身は、作品に対してあまりバイアスをかけないで見ようという姿勢を取っているつもりだったのですが、少し時間が経って見ると全く違った感想を抱いたので、何だかんだバイアスというか悪い目で見ようという考えを持ってしまっていたことに気付き、深く反省しております。

作品は楽しく見ていきたいですね。

 

 

次回、1時間、戦えますか?