『ウルトラマントリガー』
第8話「繁殖する侵略」
(監督:田口清隆 脚本:小柳啓伍)
とうとうイグニスの不法侵入にリアクションを示さなくなるGUTS-SELECTの面々。
慣れというものは恐ろしいのです。
「さすが僕の相棒アキトだね!」
「は?いつから俺がお前の相棒になった」
前回同様、ウルトラあるあるを共有していたケンゴとハルキの大声に挟まれビクッとしながらも、淡々とウルトラメダルを解析しゼットのタイプチェンジキーを作成するアキト君がツンデレ属性を発揮しヒロインレースに参加しようとしていた頃、昨晩突如発生したシステム障害によって街はパニック状態となっており、更に世界各国のTPU支部(初の言及だと思いますが今後絡んでくるのでしょうか)もサイバー攻撃を受け、なんとナースデッセイ号のシステムまでコントロールを奪われてしまう!
"ダダ"と自ら名乗るコンピューターウイルスのような謎の来訪者からナースデッセイ号を守るため、前半はGUTS-SELECTのメンバー総動員でシステムの独立を図り対処するドタバタを描くという趣きで、話の中身というよりは、キャラの動きとアナログとデジタルのギャップによって生じる可笑しさを引き出してきます。
前回は冒頭から『Z』による番組ジャックを敢行していましたが、田口監督得意のパニックにおけるプロフェッショナルの立ち回りをテンポ良く展開し、色々と影の薄くなりがちなGUTS- SELECTに見せ場を用意したのはさすがの手腕で、これまで筋トレマニアという「個性」を与えられながらそれが活きることなく置き物と化していたテッシン隊員の
「こいつの操舵は、パイロットの俺に任せてとけ!!」
と叫ぶシーンは特に光った部分かと思われます。
GUTS-SELECTが総力を上げダダに対処するも、ナースキャノンの発射システムが乗っ取られてしまい地上に向け発射!!される直前にテッシン隊員の筋肉が船を傾け何とか空砲に終わり、シズマ財団の行き過ぎた科学が地球文明を崩壊させるところを筋肉が救った!!
ダダがナースキャノン2発目の充填を始めたため、ケンゴとハルキは直接システムシャットダウンに向かい、ヒマリ隊員はアキトの組んだプログラムによってファルコンの操縦によるウイルス撃退…とは名ばかりの鬼畜レトロゲームの攻略を任される羽目になり、田口監督の遊び心が出ると同時にヒマリ隊員のスキルと可愛げアピールにも繋がり、今回のゲーム描写を見てヒマリ隊員の操縦時の性格は、Eスポーツ辺りのイメージも汲んでいたりもするのかと少し思ったのですが果たして。
ダダの妨害をかわしながら自慢の筋肉で何とか操舵するテッシン、鬼畜ゲーに困惑しつつも意外な腕前を見せるヒマリ、邪魔してるようで何だかんだ手伝ってくれるイグニス、各種ケーブルの処理を担当するマルゥル…の中で隊長だけが無表情で何もしないというのはギャグだとしてもやり過ぎだと思われるのですが、ともあれGUTS-SELECTの団結によってナースデッセイ号のコントロールを奪いきれないダダは、今度はキングジョーを乗っ取りナースデッセイ号を落とそうとペダニウム弾頭弾で街を蹂躙。
「世界侵略には、俺たちが邪魔だと気付いたらしい!」
相手の事前分析は欠けていたもののこれ以上ない理不尽な悪意に、2人の英雄が神器を構えブートアップ!
「未来を築く、希望の光!!」
「宇宙拳法、秘伝の神業!!」
『アルファエッジのテーマ』をバックに並び立ったマルチトリガーと師匠三倍盛りことゼットアルファエッジは果敢にキングジョーに立ち向かい、『Z』にてありそうで無かった特空機が敵に回るという展開がベタながら目を引きます。
機械の扱いを熟知しているということからか、ダダの操るキングジョーはセパレートモードからタンクモードまで使用し、現行主人公の苦戦属性に引きずられてしまうのか?と思いましたが、そういえばゼットさんも割と苦戦が多かった印象です。
「真っ赤に燃える、勇気の力!!」
「勝利を掴む、剛力の光!!」
田口後光まで背負い始めて大暴れのキングジョーに対し、「鉄が鍛えた身体に勝てるワケないだろ」とラーメンの絆を得たゼットリガーはパワータイプとベータスマッシュの筋肉四倍盛りで、最強モードだ!からのゼットファイッ!!
…と思いきや2人まとめてビルに叩きつけられ、筋肉の壁、電撃に敗退する。
同じ頃、ヒマリ隊員が鬼畜ゲーをクリアしナースデッセイ号のメインシステムを奪い返されたことでナースデッセイ号のブレインであることを見抜いたのか、ダダが研究室に現れ窮地を迎えたアキトの前でユナがユザレに覚醒し、ダダを撃退!
アキトのヒロインゲージが急上昇!!(おい
研究室と指令室を往復していたユナが、ユザレとなってアキトの危機を救うという流れは、これまでのシールド要員と比べとても自然で良かったところ。
「変幻自在、神秘の光」
筋肉の敗北したところをヨウコ先輩に見られたら腕立て伏せ100000万回だ…とゼットは平成三倍盛りのガンマフューチャーに、トリガーはマルチタイプにブートアップ!し光線バトルに持ち込もうとするも、戦場に姿を現したダダ(今回の個体は"PDO-3A"と呼称)の伝家の宝刀・サイコキネシス自動車アタックver.Tで動きを封じられ、ついに2人はピコンピコン。
「闇を飲み込め!黄金の嵐!!」
「天空を駆ける、高速の光!!」
唐突にキングジョーと同化しようとしたダダが作った隙を見逃さず、地球を守るのはウルトラマンだけではないという言うかのごとく発射されたナースキャノンで同化は阻止され、2話連続登場の主役三倍盛り・デルタライズクローとスカイトリガーにブートアップ!した2人は高速空中戦を展開し、やっと攻略法が分かった!
ゼットの最強形態であるデルタライズクローと並び戦いを優位に進めるスカイタイプはこれまででも特に印象的な活躍が多く、「そうか!」と思ったらハサミを叩きつけただけ、海上でサタンデロスに敗北していた、先輩と一緒にビルに叩きつけられるなどパワータイプと今回一切出番の無かったカルミラさんがだんだん可哀想になってきました。
「ごめんなキングジョー…また直してやるからな!」
レッドキング、グルジオライデンとの出会いによって生じた壁を父の言葉、そして仲間と共に乗り越えたハルキはキングジョーに一旦の別れを宣言し、三度マルチタイプにチェンジしたトリガーと並びW光線で爆☆散
「何から何まで、ありがとうございました!」
「お礼を言うのはこっちです!僕にも最高の相棒がいて、最高のチームがいるって気付かせてもらいました!!」
バラバラになったキングジョーをひとまとめにし終えたラーメンの使徒2人は互いに感謝の弁を述べ、ケンゴの隣にはヒロイン候補のアキトが、そして元の次元への帰り方に悩むハルキの手に「俺様が次元を切り裂けば、どうとでもなる」と相変わらず便利キャラ過ぎて色々台無しな魔剣さんが今更現れ、ウルトラマンの重圧に囚われていたように見えたケンゴは自分が1人で戦っているのではないと改めて気付く。
「そんな皆のためにも、ウルトラマンとして頑張っていきたいと思います!!」
前作の「リクくん先輩、俺が力を貸すって言ったじゃないっすか!」に比べややインパクトに欠けますが、"ウルトラマンの一員"としての第一歩を踏み出したハルキと違って、ケンゴがウルトラマンと共に戦う仲間の存在を強く実感するのは対照的ともいえ、前作の終わり方には少し思うところがあったのでここをどう広げたうえで畳んでくるのかすごく楽しみです。
ゼットに変身(ガッツスパークレンスはレンタルしたまま)し、自身の手のひらサイズに圧縮しながらも重そうにする小ネタを挟み、光の戦士・ナツカワハルキは元の次元へと帰還。
礼儀正しくお辞儀とZ字飛行を見せたゼットさんが去り、一息着いたケンゴは
「アキト、お腹空いた…ラーメン食べに行く?」
「…あぁ」
「え…ほんとに?行くの!?」
スキル:ラーメンマニアを覚醒させ、無事、新たなラーメンの使徒を誕生させていた。
そんなアキトが豚骨醤油のマシマシラーメンを食べ終え研究室に戻ったところにもう一人、自らの覚醒に勘づいている者がいたーーー
「私の意識が途切れる瞬間、ダダを吹き飛ばしたのを覚えてる!…ねぇ何であんなことできるの?私って何なの!?」
ニンニクマシマシの影響で…でなく秘密に迫られたことで言葉に詰まったアキトに、ユナが激しく詰め寄り、
「"ユザレ"って…何なのよ?」
思わぬところで、遂に自身の秘密に気付いたユナの問い掛けで、つづく。
『Z』客演回の後半エピソードであり、ガッツスパークレンスを用いたゼットの変身バンクを全パターン撮り直すという田口監督が非常に気合の入った演出を見せてくれました。
逆に言えばハルキとゼットの出番はそれくらいで終わっており、基本はGUTS-SELECTのメンバーの活躍が描かれ、ケンゴがその仲間の存在を改めて大事に感じるという『Z』において復活した防衛隊要素を続投させ活かした形にし、本作の特徴を押し出す方向性のエピソードとなりました。
暑苦しい新旧主人公2人に挟まれるヒマリ隊員や、意外と正確な射撃の腕前を持つテッシン隊員などの細かい描写もキャラの掘り下げに貢献し、逆に良いところだけ持ってくために地蔵と化していた隊長がものすごく失策で、今回の残念なポイントです。
また、客演回において本筋における大きな動きを仕込むのは昨年同様で、今までで一番まともな仕事をしたユザレの存在に気付くユナという爆弾を最後に投下。
「本筋に絡まなそうな回において、重要な情報を提示する」という手法は『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』などでもよく見られたものですが、ケンゴやアキトがユナ本人にユザレのことを隠す、みたいなシチュエーションを期待していた身としては早めの真相公開でやや拍子抜け。
というものの、これからは自身の中のユザレと向き合っていくことで、シズマユナというキャラクターに芯が通ることを期待したいと思います。
今回特筆すべきは、遂にニュージェネ作品において『ウルトラマンパワード』の怪獣が採用されたことで、一応スーツが現存しているパワードダダがほぼ原典通りの描写で令和の世に復活。
スマホやPCの画面に特有の模様を映し出し、突如真後ろや横に登場するなど怪奇性の強い部分と、やや理解に困る行動と自動車を浮遊させてファンネル代わりにぶつけるというギャグのような使われ方で、キャラとしてはなかなか面白い存在でした。
しかし個人的に、原典では目的がしっかりとしていた(喋ることが出来た)のに対し、今回の個体はアキトが行動を推測していたのみで、悪役というよりはちょっとした舞台装置(もしくはファンサービス以上のものにはならない何か)としての側面が強まり過ぎたとも感じられ、サブタイがカッコ良すぎたこともあってやや名前負け感は拭いきれませんでした。
まあ現役の作品にほぼ原典通りで再登場し、ソフビ人形まで発売されたという時点でもはや勝利とも言える状況なので、悪い判断では無かったと思います。
そんなところで次回、ジャーク会長再登場。