うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマントリガー「青いアイツは電撃と共に」

ウルトラマントリガー』

第20話「青いアイツは電撃と共に」

(監督:辻本貴則 脚本:継田淳

ユナの中で覚醒したユザレの力を大先輩より先に得るべく、ヒュドラムは電撃獣人バリガイラーを宇宙から招聘。

「実は、ある少女を誘拐してほしいのです」

お巡りさん、こっちです。

更にヒュドラムは稀少な彗星まんじゅう(ネーミング的に何だか不穏)を1000年分進呈するという大盤振る舞いを見せ、あまりにも気前が良すぎることから俊敏策士がロリコンに目覚めた…?とさすがに訝しむバリガイラーはただの馬鹿ではないみたいで、少しホッとしました(笑)

「あかん!ユザレはあかん!」

大昔に地球を攻めたバリガイラーは邪悪パワーによって見事返り討ちにされており、宇宙に轟く地球星警護団リーダーの悪名!!(違う

「今度の戦いは頭を、いや…お・へ・そを、使うのです」


そのユザレ=ユナはと言うと先日のキリエロイド戦の翌日いきなり倒れてしまい、もう3日も目を覚ましてない状態に陥っていた。

キリエロイドとの戦いによってユザレが完全に目覚めた…って、う、うーん?ユザレが目覚めたのは3巨人からトリガーを守る時では無かったか?

「戦いの翌日に倒れた」というシチュエーションもセリフだけで聞いてても違和感しかありませんし、前回で実はそういう流れがあったけどやむなくカットされたか、あるいは変更でもあったりしたのでしょうか。

「ユナ1人で背負うには、あまりに大きな運命だよね…」

エタニティコアに繋がる鍵であるユザレとしての宿命を背負ったユナの悲劇性とそこから来るヒロイズムを描写したい意図は分かりますが、本作の世界観において「ユザレとは何か?」という視点が欠如してしまっているため、ユナの背負う運命がどのように重いのか測り知れません。

『トリガー』世界においてユザレが一般にどのような認識で語られているのかを描いてこなかったおかげで、「ユザレを背負うことは辛い」という事実が客観的な視点で裏打ちされておらず、内輪で(言ってしまえばメタ的な目線で)勝手に不安を煽ってるだけにしか見えません。

序盤から感じていた違和感ではありますが、「シズマユナ」というキャラクターは"ユザレである"という基礎の下に設計されており、それ自体は悪いことではないのですが、だったら前半で「ユナ」としてのキャラクターをもっと全面に押し出せば覚醒後との対比を明確にできたのではないかと。

しかし本作前半で目立ったのは、度重なるイベント消化による皺寄せとしての細かい描写の不足であり、前半のユナはここぞの時に会長の受け売りしか話せなかったため、独自の信念が感じられないまま運命を背負うことになってしまい、セリフの割に背負う方も、背負わせる方も、荷物を軽く考え過ぎです。


「ユナは守られる一方のか弱い存在じゃない。俺にはそう見えるけどな…」

僕たちには守ってあげることしかできない…と力強く心のクロスタッチを交わすラーメンの使徒たちであったが、そこに出入自由な独房を抜け出したイグニスが茶々を挟み、ラーメンの絆、脆い。

そんなタイミングでユザレを引き摺り出すためにバリガイラーが街を破壊し始め、撃退に向かうファルコン。

「お前なんか呼んでへんわい!」

ファルコンが適当にバルカンを撃った後、地上にいたケンゴがブートアップ!してバリガイラーと一当たり。

バリガイラーがユザレを挑発しながら街を破壊→ファルコン到着時間を問う隊長→ファルコン到着→関西弁の怪獣にヒマリがリアクション→ちょっと攻撃した後にケンゴ変身という流れになっているのですが、ファルコンの到着を待ってケンゴがすぐ変身しないのが不自然であり、これなら隊長の「ファルコンの到着時間は?」のシーンを挟む必要は無かったと思います。

ケンゴがファルコンを信頼していてギリギリまで手を出さないでいた、と考えることも可能ですが、そのファルコンへの信頼はこれまでに1ミリも描かれていないどころかどういう目線を向けてるのかも不明であり、ヒマリに「こいつ何やねん」を言わせたいだけのために余計なシーンを挟むことで少なくともこの場面では見ないフリをしても良かった本作の初期設定のミスを見事に炙り出してしまっており、挙句トリガーが登場してからはそのファルコンが行方不明になるというお粗末っぷりに目眩がしてきます(正面からドアップで映されるヒマリ隊員も全く可愛げが無く、役者が可哀想)。


平成顔の令和ウルトラマンに一発食らったことで昭和2期魂に火が着いたバリガイラーは、伝統の相撲で決着を付けるべく工事現場の盛り土を塩のようにして街という土俵に振りまく(このアイデアは面白かった)。

相撲といえば筋肉、筋肉といえばパワータイプにチェンジし文字通り相手の土俵に乗るトリガーですが、急にエピソードの雰囲気を転換したことで先程までの緊張感はどこへやら。

トリガー山とバリの富士の一進一退の取り組みは土俵際での争いの末、マワシを取ったトリガー山の上手投げでごっつぁんとなり、真正面からパワー負けしたバリの富士は奥の手として地上任務に当たっていたアキトをおへそに吸収し人質にする!

ユ、ユナ…!ユザレの覚醒によって元々低かったヒロイン力がますます低下しているぞユナ…!!

「さあ、お仲間のピンチやで〜早よ出てこんかい、ユザレぇ〜!!」


人質を取って踊り出したバリガイラーに対し手が出せずボーっと見ていたパワートリガーが光の輪に拘束されえらく間抜けな経緯で反撃不能になっていた頃、ユナが目を覚まし現場に出張を申し出るも、「その肩には地球の運命が懸かっている…君の身の安全を守るのは、我々の責務だ!」ユザレ遺伝子防衛のために隊長から却下を食らってしまい、ヒジリ隊員はこのまま見捨てられてしまうのかな…と医務室で待機していたところにイグニスが現れる。

「行けよ、助けたいんだろ?」

空飛ぶ箒をこっそり渡されたユナは単身、ヒロインアキトの救出に向かう(え?

イグニスの行動にはメツオーガ回で見せた仲間への意識も働いて説得力はありましたが、どうやら自らの心にタップしたことで、リブット信仰を切り拓いたのはケンゴだけでは無かったみたいです。


緊迫した状況と全く釣り合いが取れていないバリガイラーとパワートリガーの第2ラウンドが繰り広げられる中、臨場したユナがバリガイラーの前に立ちはだかり、おへそに吸収され「ユ、ユナとおへそに二人っきりに…!!」とはならず代わりにポイ捨てされるアキトが少しだけ哀れ。

「エクセレント!さぁバリガイラー、さっさと引き上げましょう!」

ユナを拉致ったところでヒュドラムがしゃしゃり出てきましたが、おへその中で邪悪遺伝子を発動したユナはバリガイラーの心に強制タップし、まるでウルトラマンのインナースペースのような空間でいきなりの説得フェーズに突入。

「バリガイラー…あなたの姿は、ユザレの記憶の中で、すごく鮮明」

「あ、ユザレ!?」

「あなたは乱暴者だけど、戦士としての誇りがあった」

説得力の一切無いフォローがバリガイラーに入りヒュドラムの企みの末に永遠の虚無が訪れるから彗星まんじゅうの望みが果たされることは無いことを追求。

「空に疾る美しい雷も、耳に轟く雷鳴も、全てが永遠に消え去ってしまう」

「な、な…何やてぇ!?」

「むっちゃ騙されてんやでぇ…

フフッ…あははははは!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

……そう来たか。

 

 

 

 

 

 


ヒマリ隊員のリアクションで布石は打たれていましたが、世界観を壊すとかいうレベルでは収まらない大・大・大事故。

第一にヒュドラムの目的は視聴者目線からも語られていなかったはず(カルミラの目的は一応ありましたが、道を違えたはずのヒュドラムが同じ動機を持っているとは思えない)で、何故ユザレ=ユナがそれを知ってるのかが謎であり、それに加えてバリガイラーに対し「ヒュドラムの目的は永遠の虚無だから、お前は騙されているぞ」という納得度の薄い論理を強引に叩きつけて、とんだひっくり返しだ!みたいなテンションで描かれてもエピソード内で成立してない論理に?マークが消えることはありません。

おまけに今回、あえてシリアスとギャグをごちゃ混ぜにしたような演出を取っているように感じるのですが、シーンがツギハギになって展開に無理が生じているためバランスが取れておらず、前回との繋がりが微妙な点からも、脚本家が真面目に書いた脚本を演出方面で勝手に上塗りしたギャグで誤魔化しているのでは。

バリガイラーの方もヒュドラムに操られたとかではなく、腕っ節で負けてからは自身の能力を活かして搦手を使っているのが明らかなので、誇りのある戦士と評してたユザレの節穴っぷりも急加速しており、元の脚本が悪かったのか演出の都合で色々捻じ曲げた結果なのか、いずれにせよ監督がストップをかけるべき内容かと。

ほとんど推測なので話4分の1くらいの気持ちで書いてますが、「関西弁の怪獣に関西弁で説教したら面白くね?」という魂胆が見え見えで、全く笑えない場面でした。


その後のクローを手にしたパワータイプVSヒュドラムは珍しいマッチアップで良かったですがあっさり終わってしまい、騙されたことに気付いたバリガイラーの協力によってユナを救い出し、トリニティのエタニティゼラデスでヒュドラムは撤退を余儀なくされましたとさ。

「私は自分でこの運命を選んだの。これからも一緒に戦っていこう、皆の笑顔を守るために」

ほとんど役に立たなかったラーメンの使徒2人にもにこやかに声を掛け、自己犠牲の精神が高まったことでヒロイン力より主人公力の方が強まってきたぞユナ…!!

そんな光の3バカトリオの前に、やけに爽やかになったバリガイラーが等身大で出現。

「ユザレぇ!お前えらい変わったなぁ、強いだけやのうて、めっちゃええ仲間に囲まれとるやん

え?地球星警護団は仲間じゃなかったの??

もしくは、1人で活動してたのに警護"団"名乗ってたの???

何だろう…イマジナリーフレンドみたいな仲間がいっぱいいたのでしょうか……やっぱりすごく怖いよ邪悪遺伝子…。

どう見てもタチの悪い迷惑怪獣だったバリガイラーをこんな爽やかに見送っていいのか、というところでつづく。

 

 

エピソード単位で矛盾してる発言の数々、中途半端で面白くないギャグ、行方不明になりそのまま忘れ去られるGUTS-SELECT等々、これまでに比べても看過できない粗が目立つ、見どころほぼ無しの残念回。