うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

水の心を持つ男

仮面ライダークウガ

episode.5「距離」

(監督:長石多可男 脚本:荒川稔久

 

「解読なんか、しなきゃ良かった」

研究室で古代文字の解読を行ってる際に現れた学友ジャンの報告により、新聞にて未確認生命体の存在が大々的に報じられていることを知った桜子さんは、解読作業に迷いを見せていました。

 

同じ頃、ポレポレで五代を待っていた一条さん(真ヒロイン)は彼を捕まえ、検査を受けさせるために関東医大病院に連れていきます。

ここでポレポレの主人・おやっさんが登場。

病院には以前紹介した解剖医・椿秀一がいました。

本来は死体解剖専門の椿が五代を検査したところ、装着したベルトが五代の自律神経そのものに直結しており、やがては脳にまで達する可能性があるということが分かりました。

「やつらと同じ…戦うためだけの生物兵器だ」

そしてそれが意味するものは、未確認生命体の怪人たちと同じ存在になってしまうことでした。

 

しかし五代は怯むことなく大丈夫と言い張り、呆れてしまう椿と一条さん。

椿さんも某オオタユカのような言動を取る危ない人物ですが、根拠のない狂気を見て冷静になった模様。

先に書いてしまうのですが、今回次回と五代の笑顔がなんだかすごく怖い。

今回は正義の味方という大義の下に、自己犠牲を厭わない"ヒーローの狂気"を意識的に取り込んだ節が見られるので、そういった演出プランだったのでしょうか。

 

急にヒロイン力をチャージした桜子さんは、悪い予感を覚え一条に電話するも出ず。

たまらず病院に向かい、検査を終えた五代と一条を問い詰めます。

「どうしてこうなっちゃったんですか?私止めてって言ったのに?」

言いました。

しかし五代は空気を読まず「一条さんからもらった」おニューのバイク自慢と、自身の置かれた立場を笑顔で話します。

「だってやるしかないだろ?俺、クゥウガだもん」

クウガじゃないでしょ!?五代君でしょ!!」

突飛なことをする人物とは認めているものの、戦地にまで飛び込むようなことにはさすがに抵抗を見せる桜子さんは、五代を止めようとするも一条さんとの圧倒的なヒロイン力の差により失敗。

「やりたいからやる、それだけだよ。……大丈夫!!

 

その頃、水族館でポップアップカフェを展開していた不審者チームは、次の尖兵としてバッタ怪人・バヅーを選任。

ベルトに何やら細工を施し、課題のようなものを与え、街に向かうよう指示します。

俺にも回してくださいよ〜とバラ女に迫るゴオマは、見事ビンタの返り討ちを受けておりました。

 

警察の方では、トライチェイサーを勝手に持ち出したうえ、4号に与えた一条さんが呼び出しを食らっていました。

あの場の判断は正しかったかもしれないが、4号も射殺対象に変わりないぞという警備部長に対し、言い訳もせず、真っ正面から自分の信じるものを告げる一条さん。

「何かあったら、私が射殺します」

「君を合同捜査本部の予定メンバーから、外したくないんだ…」

「今はとにかく信じてください!」

「………いいだろう」

彼の真意と本気を悟った警備部長は、前回杉田刑事が助けられたこともあり、一条と4号を信じることになります。

昨今の作品と比べると甘すぎる展開にも見えますが、こういった部分が本作のストレスが少なくて良い点。

まあ一条さんは、自分がそう信じたら止まらないタイプなので、言っても無駄という判断だったのでしょうが。

刑事部長との話しが終わったのも束の間、謎の転落死事件が多発しているという連絡を受けた対策本部は、事件を未確認生命体の犯行も視野に入れ捜査を開始します。

 

路地裏で何かから逃げる中年男性。

辺りを見回し、撒いたと一息ついたところ、謎の男に捕まり、上空に連れ出され、そのまま落下。

今回の流血表現も容赦ないです。

その後も事件は立て続けに発生し、警察官がその犯人を発見。

阿佐ヶ谷において発生した事件現場で、未確認生命体第6号=バヅーの存在を確認した警察官たちが拳銃で立ち向かうも、やはり歯が立たず。

バヅーに捕まり、ビルから落下させられそうになった警察官ですが、そこにトライチェイサーから流れた警察無線を聞き駆けつけたクウガによって助けられます。

 

クウガの出現にテンションが上がったのか、やたらと喋り挑発するバヅー。

冒頭で、五代がいつか怪人と同じ存在になるという布石を打ってたのもありますが、今回は怪人の感情表現が実に豊か。

特にバヅーは、前回もメビオに仲間意識のようなものを見せていたので、割と楽しいやつなのかもしれません。

 

跳躍力とキック力に秀でたバヅーに苦戦するクウガは、蹴られ落とされ今日もすごく痛そう。

「もっと…飛べたら!!」

五代の叫びに応えるように、急に段違いの跳躍力を発揮したクウガの体色が青く変化。

「青くなった!?」

着ている服が青かったから?

 

中国拳法のような構えで戦う青のクウガ=ドラゴンフォームは、普段以上のスピードと跳躍力を発揮しバヅーと渡り合うものの、攻撃力は著しく低下しており、結局優勢には立てず。

「ジャンプ力が、増してる!?」

「パンチ力が、弱くなってる!?」

といちいち説明してくれる親切なドラゴンクウガは、バヅーにビルの屋上から地面に投げつけられ、本日だけでも3回目の落下ダメージ。

 

新しい姿になったものの、苦戦を強いられるクウガでつづく。

 

 

episode.6「青龍」

(監督:長石多可男 脚本:荒川稔久

 

「4号なのか?何故青いんだ!?」

苦戦するクウガを手助けに向かった一条さんと杉田刑事は、体色が青くなったことに驚いていました。

やはり変身前の私服が青かったからか…?

 

一条さんは拳銃でクウガをアシストしようとするも、タイミングが悪く狙いが定まりません。

警察がモタモタしてるうちに、バヅーは止めのキン肉ドライバーをクウガに食らわせようとしますが、風と煙突を気にしたことで撤退。

傷ついた五代は病院へと連れていかれます。

 

その夜、桜子さんに電話をする一条さん。

「解読し終えている範囲で構わないんですが、青い戦士というような記述はありませんでしたか?」

戦いの中でクウガの体色が青になったことを告げ、この期に及んでまだ古代文字に拘る一条さんに、桜子さんは鉄拳をかましても許されると思います。

もちろん桜子さんは、五代が戦いに向かったことで何かが起きたことを察し、病院に駆けつけます。

 

しかしそこにやってきたのは、何事も無かったような顔をした五代。

前述しましたが、ここの笑顔も狂気じみてて怖い。

明日の朝仕事で早いから帰る、とその場を逃げるように去った五代の後にやってきた一条さんと椿医師。

「…全身打撲で、普通なら死んでるところです!」

五代は人目につかないところで、一人苦痛の表情を浮かべていました。

 

「……似てるんです、彼は私に。

だから、止めても止められないということも、分かってしまって…

五代が苦しむシーンを、あえて前回の一条さんと被せてきて、五代と一条さんのシンクロぶりを重ねて強調。

『中途半端』をしない男たちの、妙な結束についていけない桜子さんは一人でその場を去ります。

 

一方その頃、水族館カフェでお茶を嗜んでいた不審者チームのもとにやってくるバヅー。

クウガを圧倒したことを誇るように、メンバーたちに対して偉そうな態度を取ります。

 

前回6号が撤退したことを不思議に思った一条さんは、煙突と風向きにヒントを見出し捜査。

更に五代の安否を気にした一条さんは、ポレポレに電話を掛け、ぐっすり眠っていることを確認します。

ゆっくり寝かせてあげてください」

第2話でも寝ることで疲れを取っていた五代が描かれていましたが、旧知の人物でも驚く眠り様を見せることで、五代が決死の戦いに挑んでいることが分かり、緊張感の引き立ても相変わらず丁寧。

 

思い悩む桜子さんは、五代の妹みのりに会いに行きます。家族ぐるみの付き合いでした。

「危ないことしないで、お互いに理解し合えないのかなって思うけど、きっとそうできる相手ならそうしてるだろうし、今までお兄ちゃん信じてダメだったことって一つも無かったから!」

今回は妹の笑顔もすごい怖い。目力もあって更に怖い。

「私、逃げてきちゃったの」

「逃げてきた?」

「五代君の助けになるようにしっかりしなきゃって、分かってはいるんだけど、色んなことがあって…怖くなって…五代君が怪我までして頑張っているのに!自分だけ逃げたいだなんて思って…」

0号が蘇り夏目教授が亡くなったことだけに留まらず、友人が戦いに向かうことになり、急に世界が変わったことで脳の処理が追いつかない一般人・沢渡桜子の視点を盛り込んだセリフには、とても重みを感じます。

 

「いいんですよ!いいんです、それで」

「でも…」

「普通に考えて、普通にすればいいんですよ!」

「普通…?」

とりあえずポジティブにいきましょうと目力スマイルを見せたみのりと、五代を心待ちにする園児の様子を見てなにか吹っ切れたような桜子さんは、五代直伝のサムズアップ(横向きにし、可愛げを増してヒロイン力チャージ)をみのりに送ります。

そして研究室に戻った桜子さんは、新たに解読された"水の戦士"の記述を見ることになります。

水 のように 敵を 長いものでなぎ払う 戦士クウガ

 

一条の捜査で煙突の煙が流れない方向でしか犯行が行われないことに気付いた対策本部は、その地点を重点的にパトロールすることを決定します。

対策本部の会議が終了した後、一条さんに駆け寄る警備部長。

「一条君」

「ハイ」

「高性能ライフルが配備されている。持っていけ」

「…ハイ!」

我こと、為れり……!!

 

一条さんが新たな武器を手にしたとも知らず、五代は自身の色の変化に悩んでました。

ところで着替えないんですか?

「雄介、そんなに悩むな。こっちか、こっちか、それはその時の状況次第だよ」

醤油とソースを引き合いに軽く五代を励ますおやっさんに対して、素直にありがとうを言える五代の爽やかさが眩しいです。

そんな五代のトライチェイサーにパトロール中の警察無線が入り込んでおり、警察の情報が垂れ流しになってるという恐ろしい状況で、そのバイクは屋外に放置してはいけない代物です。

 

杉並区に再びバヅーが出現したことにより、高性能ライフルをぶちかましてやるぜと意気込む一条さんは、車の陰からバヅーに狙いをつけたところ…携帯電話が鳴ったことにより、またも返り討ち。

誰かマナーモードにするよう教えてあげて。

水の戦士のことを伝えようと桜子さんからの電話でしたが、ひっくり返された車の下敷きになり今回もヒロイン力の供給を怠りません。

すぐに伝えるべく桜子さんは、井荻7丁目付近にウチも行く〜と原チャリを走らせるのでした。

 

今回も大勢の警察官が、未確認の犠牲になっているところに駆けつける五代は変身。

しかしその姿は前回苦戦したドラゴンフォーム。

「いきなり青か!?」

だから着替えてくるべきだったんだ……!!

 

前回同様攻撃が通用せず、苦戦するクウガ

そこに警察の通行止めを振り切った桜子さんが、原チャリで転倒し、ヒロイン力を最大限発揮しながら駆けつける!!

五代君!五代君!!

水の心の戦士、長きものを手にして敵をなぎ払えッ!!!」

若干脚色したぞ、この人笑笑

 

「水の心…長きもの……そうか!!」

手すりを蹴り上げ、鉄棒にしたクウガはそれを振り回し、長き棍・ドラゴンロッドに変化させる!!

ロッドを手にしたことで水を得た魚ではなく、青龍の如く怒涛のラッシュを見せるドラゴンフォームは、そのまま必殺・スプラッシュドラゴンでバヅーを撃破。

今回は右足ではなく、右手が熱かったようです。

 

「大丈夫?桜子さん」

「うん、でもお腹減った!」

戦いが終わり、笑顔になる2人のもとを去る一条さんの「今回は譲ってやる」という圧倒的な正ヒロインムーブ(ちなみにバヅーに襲われ気絶した後、自分で起きて現場に駆けつけてました)で、つづく。

 

主役ライダーが初期からフォームチェンジをするという(当時としては)新たな試みにおいて、長所と短所が明確に描かれるという斬新な展開。

またそれらを描くことで、玩具販促の弊害ともいえる「武器を持つこと」に必然性も見出し、武器の出現にもそこにあるものを利用する(錬金術のようなもの)とすることで、あらゆる部分において隙なしの完全投球。

 

また新フォーム登場をただのパワーアップと処理するのではなく、戦い続ければいずれ怪人と同じ存在になるという可能性が形になったとも取れる描写になっており、いい話風に終わらせた中で不穏な要素も仕込まれているのが本作の怖いところ。

 

それでいて、今回は人知れず傷つきながら戦う五代、そんな戦いに巻き込まざるを得なかった一条、色んなことが起きて現実から逃げたくなった桜子それぞれが苦悩を見せており、それをあらゆる人間関係(おやっさん、警備部長、みのり)で埋めてくるのがスムーズかつ、本作の特色が出てて面白かったです。

 

80・90年代においてスーパー戦隊シリーズを支えた敬愛する長石多可男監督の(後にそう呼ばれる)平成ライダー初監督作品。

改めて見ると、人物の表情を正面から見せたりと単調な部分も感じられたのですが「手すりを蹴り上げ、鉄棒を振り回したらロッドに変わる」という演出は文句無しのカッコ良さ(アクション監督の領分でもあるかと思いますが)。

長石階段ももれなく登場しているので、今後も担当回を見直すのが楽しみです。

 

 

次回、トラウマの胎動が聞こえる。