うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

大激闘マッドポリス'80 まとめ感想

『大激闘マッドポリス'80』

『特命刑事』

 

まとめ感想

 

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「1980年代、日本の暴力団は幾多の内部抗争と政治との黒い癒着の末、全国統一を成し遂げ、更に海外のマフィアと手を結び、日本全土を制覇する巨大な犯罪組織を形成した。

 

ーーージャパンマフィアの誕生である。

 

 警察庁はこの巨大組織の壊滅を目的とし選りすぐりの精鋭部隊を編成、ジャパンマフィアに戦いを挑んだ。

 この部隊の唯一の目的はジャパンマフィアの壊滅であった。

 恐れを知らぬ彼らの行動を、組織は"MP"すなわち"マッドポリス"

命知らずの警官と呼んで恐れおののいた

 

 

登場人物(レギュラーのみ):

 

マッドポリス(特命刑事)

ジャパンマフィアを壊滅させるために編成された警察庁の精鋭部隊。

警察手帳を持ってないことからその捜査活動の大半は非合法的なものであり、警察側の人間でも存在を把握しきれてない(黙認されている?)。

大量の銃火器をもってジャパンマフィア制圧に向かう。

 

氷室健一(演:渡瀬恒彦

曲者揃いのマッドポリス(以下MP)を率いる二代目キャップ。

射撃を始めとしてドライビングテクニック、ダイビング、ハングライダーとあらゆる面で多彩な才能を見せつける。

口数が少ないクールガイであるが情に厚く仲間想いであり、自分一人で突っ走りがちな面も見せるなど熱血漢でもある。

 

松村兵助(演:梅宮辰夫)

氷室を陰に日向に支えるMPの参謀格。

冷静沈着な頭脳担当でもあり、氷室が時に暴走してしまう場合でも落ち着いて対処し仲間たちを引っ張る優秀なサブリーダーっぷりを見せる。

警察庁のお偉方と面会するなど対外的な部分を担うこともあり、『特命刑事』になってからは現場よりもアジトで指示を出すことが多くなった。

 

芹沢末八(演:志賀勝

元マル暴刑事で、巻舌の関西弁で話すおよそ刑事のイメージから程遠い見た目の男。

爆弾や銃火器の扱いに精通しており、押収した武器の確認なども行なっている。

ひょうきんな性格で短気で騙されやすい面もあるが、腹を撃たれても犯人を追跡するといったタフネスの持ち主であり、新田と進司からは先輩と呼ばれ慕われている。

 

新田吾郎(演:片桐竜次

気さくなチリチリ頭の若手実力派刑事。

強靭な肉体と即座の判断力が光る男で、手先が器用なことからピッキングなどもこなすなどマルチの才能を持つ。

窮地に陥った際に、真っ先に自分を犠牲にしてその場を治めようとするなど発想が氷室のそれに近く、シーズンがもっと続けば次期キャップになっていた可能性もあったかも。

 

原田進司(演:中西良太)

MPの最若手であるリーゼント刑事。

バイクで敵陣に特攻を仕掛けるのも彼の仕事。

潜入先や闇討ちの際にヘマを犯すことはちょくちょくあるが、強い使命感と持ち前の若さを活かした行動力は氷室たちにも認められ可愛がられてる。

 

緑川悠子(演:堀川まゆみ

煙草と銃火器の香りが色濃く漂うMPの紅一点。

容姿端麗かつ英語も流暢に話せることから、潜入捜査や情報収集に大きく役に立っている。

戦闘においても男性陣に劣らない活躍を見せるが、メンバーからは女性だからと止められがちで本人も少し不満を覚えている。

氷室に気があるような描写も少し見られる。

 

八代浩幸(演:土屋嘉男)

MP初代キャップ。

抜群のリーダーシップと判断力で部隊を率いていたが、JM最高幹部の一人である神崎の凶弾によって殉職。

しかし彼の意志は氷室以下MPのメンバーに受け継がれ、より堅い結束を生むことになる。

 

清川大作(演:桜木健一

『特命刑事』から加入した新メンバー。

金塊密輸団の凶行を暴くために、スキューバダイビングのスキルを必要とした氷室に見込まれ訓練生としてMPに加入。

元交番勤務の巡査ということで当初は生真面目な面が目立っていたものの、徐々に口調が砕け始め他のメンバーと大差ない言動を取るようになる。

 

山南譲(演:山岡健)

清川同様ダイビングスキルを見込まれメンバー入りした最年少刑事で、通称"ジョー"

ボンバーヘッドの長髪と革ジャンという格好が特徴で、若さ故の軽率な言動が多いことから芹沢によく怒鳴られている。

最年少であるが悠子のことは何故か呼び捨てにしてる。

 

ジャパンマフィア(以下JM)

かつては敵対していた多くの犯罪組織が統合された巨大な犯罪組織。

その犯罪行為は暗殺、麻薬の製造密売、拳銃密輸、贈賄など多岐に亘る。

三田村と富樫をトップとしてそれぞれが独立したチームとして活動しているため、情報共有など横の繋がりはほとんど見られない。

 

田村亮(演:島田正吾

政界の影のフィクサーにしてJMの最高権力者。

JMという巨大組織を立ち上げた人物であり、その日本制覇を達成するべくMPをあらゆる手で潰しにかかる。

 

富樫謙司(演:仲谷昇

表向きは富樫法律事務所を構える元検事であるが、その実態は三田村の右腕としてJMに多大な影響を及ぼす実力者。

三田村の指示に従い、MPと戦う幹部に毎回圧力を掛けるのも彼の仕事。

 

 

ポイント:

コンセプトが「10秒に一発撃ち、1分に一人の犯人が死ぬ」という大変穏やかなものではないところから始まった本作。

当時アクション映画や犯罪映画がヒットしていたことから刑事ドラマでありながら、任侠映画のような要素も汲んだ非常に尖った作品として制作されました。

 

普段あまりこういったドラマを見ない筆者ですが、本作が突然Youtubeのおすすめ欄に出てきたことと、ちょうど『青のSP』『レッドアイズ』といったややクセのある刑事ドラマを当時視聴しちいたことから試し見をしてみました。

…開始5秒で「マシンガンが火を噴き、スーツ姿の男たちが爆発で吹き飛ぶ光景からOPナレーションが流れ、そのままキャストロールに繋がる」というオープニングに、これ以上ない魅力を感じ、これは感想を残さなければなるまいと思いそのまま視聴コースに。

 

本作で最も注目した部分として、刑事ドラマでありながら明確な敵組織が存在していること。

あまり過去の刑事ドラマを見るタチではないので勝手なイメージでしかないのですが、選りすぐりの精鋭部隊と凶悪な犯罪組織の対立構造というものが非常に珍しく感じ、言ってしまえば普段筆者が視聴しているいわゆる"ヒーロー番組"のそれに近いと思いました。

そしてその対立構造は、冒頭のOPナレーションで簡潔かつ丁寧に説明され、第1話の内容もMPがJMと戦い叩き潰す意志を表明する場にもなっており、マッドポリス(ヒーロー)VSジャパンマフィア(悪役)という図式が物語の導入として大変魅力的なものになりました。

 

基本的なストーリーとしては、かつてはバラバラだったあらゆる犯罪組織が統合されたJMが要人暗殺、麻薬の製造・密売、拳銃密輸等々多くの犯罪行為を働き、それをMPが察知して実力行使に入るというもの。

特徴として毎度行われる犯罪行為の描写がえげつなく、各エピソードの持つインパクトを重視した作風。

一方で縦軸の物語としては連動性が薄く、この時代のスタンダードはよく分かっていませんが、あえて同時期に制作されていた特撮作品で似ているものを挙げると『バトルフィーバーJ』に近い印象を受けました。

しかし本作特有の要素として、ヒーロー作品における「敵組織は何故一気に攻勢をかけないのか?」という問いに、あらゆる犯罪組織の寄せ集めだから各自が好き勝手に動いている、横の繋がりが皆無という斬新かつ納得度の高い答えを提示しており、"JMとはどういう悪役なのか"という面を劇中描写で炙り出しているのが秀逸な構成です。

 

対して"ヒーロー側"に位置するMPの方ですが、警察に身を置いていながら公権力による支配を免れ、超法規的な捜査活動によって社会のあらゆる場所に潜んでいるJM連中を人知れず始末するという、ダークヒーロー的な描かれ方をされています。

ダークヒーローとなると、その活動に根深い情念が絡んでいたりするのですが(にわか知識覚悟で挙げさせていただくと『バットマン』のブルース・ウェインは両親を殺された過去があることで、ゴッサムシティから犯罪を無くそうと行動することに理由を付けている)、本作においては個人的な情念が描かれることはなく、使命に対して真正面に突き進んでいく姿しか見られません。

それでは彼らは何のために命を懸けてJMと戦っているのかという点ですが、それはOPナレーションで語られる「この部隊の唯一の目的は、ジャパンマフィアの壊滅であった」という一点のみ。

 

劇中でも刑事としての正義感や、一般市民に対する情(一応巻き込まないように配慮はしてます)といったものはほとんど見られず、あくまで「ジャパンマフィアを叩き潰す」という使命感が彼らを動かしています。

一歩間違えれば、物語のために動かされている舞台装置になってしまいそうな設定ですが、MPメンバーには"仲間想い"という要素がプラスされており、そういった軸が機能することでただの戦闘マシーンになることを避けつつ、横の繋がり=仲間意識が欠如しているJMとの、鮮やかな対比を見ることができます。

 

またもう一つ会心なのが、第1話において先代MPキャップの八代を射殺し、勝ち誇るJMきっての暗殺者・神崎と氷室のやりとり。

「どうしてそんなにムキになるんだ?八代は死んだんだよ!マッドポリスは大黒柱を失い、バラバラになっちまった!所詮貴様たちに勝ち目は無いんだ!!」

 

「神崎!貴様は考え違いをしてる!俺たちはバラバラにもならんし、勝ち目が無いとも思わん!!」

その後2人はすれ違いざまに撃ち合い、神崎は何とか氷室から逃亡するのですが、腹に銃弾を浴びていたことでJM最高幹部が集結する会議の場にて絶命。

クールな氷室の熱い宣言がマッドポリスというヒーローの新たなチームアップに繋がり、かつその宣言が、瀕死の神崎を三田村富樫を始めとする最高幹部たちの前に登場させることで、間接的にJMという組織そのものに大きく叩きつけられる、という展開が見事の一言でした。

この第1話があったからこそ、MPという組織に"生"を見出せたと言っても過言ではありません。

 

しかしそういった展開は長く続くことは無く、『マッドポリス』終盤以降はネタ被りや突飛なアイデアに食いつきすぎるような場面が多くなった印象です。

先述の通り、本作は縦軸の物語がほとんど意識されてないことからも、一話ごとの盛り上がりはありながら全体を通してみると、何をしたかったのかよく分からないという見方もできてしまいます。

極め付けは『マッドポリス』最終回。

MPが無人島にて雲隠れしながら、麻薬の密造と趣味の人間ハンティングを行っていた西岡という構成員を始末し、最大の収益源である麻薬部門を叩き潰されたJMはその後崩壊、という内容をなんとEDナレーションで説明。

直前の第15話にて、意味ありげに悠子と対面した三田村富樫は影も形もなく退場し、MPが死命を賭けて追いかけていた巨大組織があっさり崩壊してしまうのは、さすがにショックの一言でした。

 

その後、JMが滅んだ後もMPは"特命刑事"という別称を与えられ、引き続き凶悪犯罪の撲滅に臨むのですが、JMが壊滅したことでMPの存在意義が根底から崩壊してしまっており、更に新メンバーの清川とジョーが加わり全体の雰囲気が柔らかくなったことからまるっきり別物になってしまい、面白く見ることが困難になりました。

以前、別の記事でも話したことなのですが、この最終回ショックは本当に大きく、また清川とジョーの2人も無個性に近い活躍だったことから一気に冷めてしまい、『特命刑事』の各話感想は諦めた次第でありました。

悪い部分に話が傾いてしまいましたが、本作を語る上で外せない部分だと思ったのでこちらは記載させていただきます。

 

ストーリーやコンセプトの他に魅力的な点としては、やはりキャスティングが挙げられるでしょう。

特に主役の氷室を演じた渡瀬恒彦さんの2枚目っぷりが非常に好みで、OPで拳銃を撃つ場面は何度見ても痺れました。

脇を固める梅宮辰夫さん、志賀勝さんと今はもう亡くなってしまった方のバリバリ現役だった頃を見ることができ、そこはかとなくノスタルジーに浸れるような不思議な感覚もありました。

そんな役者たちが刑事役として繰り出す数々の名言は枚挙に暇がなく、感想を書く際は

※警察官のセリフです。

という注意書きを付けずにはいられませんでした(え

現在でも俳優を続けられてる方も多数出演しており、中でも第15話にゲスト出演した岩城滉一さんは色々驚きで、毎回誰が出るのかが楽しみだったのも本作の長所だと思います。

 

 

エピソードリスト:

ここからは『マッドポリス』各話のポイントを紹介したいと思います。

各話評価:

◎…すごく面白い

○…面白い

無し…普通

△…微妙

×…ダメ回

 

第1話「マフィアからの挑戦」◎

(監督:関本郁夫 脚本:永原秀一)

・衝撃の第1話

・氷室、熱い宣言

「罠にハマってやろうじゃないか!我々はこれまで、命を張ってジャパンマフィアと戦ってきた。これからだって同じだ!危険は覚悟なはずだ」by八代浩幸

 

第2話「No.1抹殺計画」◎

(監督:関本郁夫 脚本:柏原寛司

・氷室の先輩刑事・坂本登場

・麻薬密輸のトップ通称"No.1"の正体とは

・ヘロインを屋上からばら撒く(捨てる)MP

「罠ならハマってやろうじゃねぇか、どうせ一度はケリつけなきゃいけねぇんだ」by氷室健一

 

第3話「狙撃者を撃て」

(監督:長谷部安春 脚本:峯尾基三

・強調されるJMの凶悪さ

・身勝手な男、神保雷蔵

・スナイパー古賀

「要求は無視」by氷室健一

 

第4話「切り札は黒いクイーン」

(監督:長谷部安春 脚本:山本英明

・女ボス登場

・MP壊滅の危機(1回目)

フェミニスト松村

「俺たちマッドポリスっちゅうくらいだから、あんた一人消すくらい、ささやかな冗談で済むのよ」by新田吾郎

 

第5話「シンジケートの女」

(監督:野田幸男 脚本:高田純)

・突如バーで銃を乱射するMP

団次郎、2人目の女ボス参戦

・氷室縛られる、MP壊滅の危機(2回目)

「芹沢、あのうるさいゴキブリどもをどっかに誘い込め」by松村兵助

 

第6話「殺しの追跡」○

(監督:野田幸男 脚本:永原秀一)

・カラー分けを始めたMP

・郷さんに続き伊吹隊長参戦

「赤木と協力して、全力を尽くしましょう」by植村正樹

 

第7話「地下銀行襲撃」

(監督:村川透 脚本:宮田雪

・鍵開けのプロ新田

・クセの強い蛭田夫婦

・強盗犯も人手不足

「予定通りやる、やらなきゃならねぇんだよ。お上からの命令でな」by影のブローカー高森

 

第8話「破壊」△

(監督:村川透 脚本:柏原寛司

・OP映像変わる

・強敵大幹部出現、MP壊滅の危機(3回目)

「俺はムラさんを信じてる。ちょうど18時に、敵の武器庫は爆破されるさ」by氷室健一

 

第9話「殺人刑務所」○

(監督:西村潔 脚本:峯尾基三

・氷室、賞金首になる

金子信雄氏演じる浅倉、大物の風格

東映名物いつもの坂

「今の世の中、銭さえ出せば一人や二人平気で殺す。そんな連中がゴロゴロしてるからね…」by浅倉泰造

 

第10話「処刑儀式」

(監督:野田幸男 脚本:高田純)

・超異色回

・最強の斬られ役、福本清三氏出演

・微妙に人間の小さい氷室

「まあ、遠慮しとこう…君たちの"パーティ"は我々の神経には耐えられんよ」by富樫謙司

 

第11話「爆殺マシーン」△

(監督:野田幸男 脚本:宮田雪

・フルスロットルなMPの非合法っぷり

・進司、操られる

・氷室以下、ギャグ時空に入り命拾い

「俺が撃つんじゃないんだぜ…俺の耳で、誰かの声が撃て…撃てって言ってんだよ……!!」by原田進司

 

第12話「潜行大作戦」

(監督:長谷部安春 脚本:峯尾基三

・悪役のプロ黒部進参戦

・地味な拷問を受ける新田と進司

・ダイビングスーツとボウガン

「ぶっ倒れたやつはクスリを打っておけ。生産を上げるんだ」by南雲利三郎

 

第13話「スカイライダー大作戦」×

(監督:長谷部安春 脚本:永原秀一)

・変身はしない

・ヘリコプターとバングライダー

・松村、やらかす

「幹事長、私は警察官です」by氷室健一

 

第14話「ハンター・キラー」

(監督:田中秀夫 脚本:柏原寛司

・『ギャバン』の田中監督参加

・MP壊滅の危機(4回目)

・最強の暗殺グループ、ヒットチーム

「なかなかいいアジトだ。ここを探していたんだ……我々がヒットチームだ」by西山兄

 

第15話「005便で来た狙撃者」○

(監督:田中秀夫 脚本:高田純)

・"吸血鬼の息子"の異名を持つスナイパーダンヒル

岩城滉一登場!

・悠子、三田村富樫と接見!

「現場100回の例えもある。洗い直せば何か掴めるハズだ」by氷室健一

 

第16話「人間狩り」×

(監督:舛田利雄 脚本:峯尾基三

・メイスン中田登場

・快楽を貪る男、西岡竜

・唐突な麻薬Gメン

「もったいねぇな…」by松村兵助

 

 

総評:

東映刑事ドラマにおいても異色作とも言える本作。

恐らくYoutubeで配信されなかったら一生目にすることは無かった作品だと思われるので、出会えたことに運命じみたものすら感じられてしまいます。

このまとめ感想をもって本作とも一区切りを付けられます。

2021年前半において間違いなくトップの破壊力を持っていた本作、なかなか視聴の機会は無いかと思われますが、もし目にする機会があったら是非見ていただいて、罠に嵌めようとしたら返り討ちに遭う世界線を楽しんでほしい作品です。

 

2021年後半、またこのような出会いがあることを期待しながら締めとさせていただきます。

お付き合いいただきありがとうございました。

 

 

 

「前島は殺して構わん、しかしNo.1は生かして捕まえろ。いいな?」

 

※警察官のセリフです。