うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

ウルトラマントリガー「スマイル作戦第1号」

ウルトラマントリガー』

第18話「スマイル作戦第1号」

(監督:田口清隆 脚本:根元歳三

ケンゴが久方ぶりにダーク時代の夢を見ていた頃、海底のカルミラ大先輩の前にもトリガーダーク?が姿を現し、夢のようなひと時を過ごしていた。

TPUの方ではアジア全域の防衛を担うGUTS-SELECTアジアの新設が決まり、その総司令官に任命されたことを隊員たちに報告するタツミ隊長。

「これは我々全員の働きが認められた証だ。皆、本当によくやってくれた…感謝する」

さすがに隊長の栄転には祝福ムードになったシズマ以下GUTS-SELECT(社会的ヒエラルキーとしてはユナが二番手)は、いずれいなくなるから好き放題やろうぜ!とテンションMAXになり、さよなら隊長サプライズパーティーを仕掛けるべく"スマイル作戦第1号"を開始する。


ユナ主導でパーティーの準備がひそひそと進められ、以前のユナバースデイ回を下地にしつつテッシンたちに出番を与え、同じ場にいなくてもそれぞれの行動で考えの相違が明確になり(ヒマリがまとも寄りのムーヴをするのが手堅い)、キャラクターに愛嬌付けを施していくのは田口監督らしい目配り。

その中でも隊長へのプレゼントを考えてるアキトに対する、

ケンゴ「大丈夫かなぁ…」

ユナ「大丈夫だって。前にもらったスタンガン、役に立ったし

という2人の会話がとてつもなく酷く、ユナのセリフで初めて面白いと思いました(笑)

その後「隊長専用の新しいハイパーキーを作ることにした」としっかりとフラグも回収し、君は、本当に、仕事が出来るなアキト…!!

まああまりにサプライズパーティーの手並みが鮮やかなので、この人たち普段全く仕事してないのではという疑問が拭えないのはさすがのGUTS-SELECT。


その頃海底ではトリダーと再会?し1人でなよなよしてるカルミラ大先輩…

とうとう大先輩を見限った?ダーゴンの甘く熱い言葉にそそのかされ闇の一族トップの座に興味を示すヒュドラム…

「今は無理だけど、いつかは一緒に…」

地上にて隊員服で大量のお菓子を抱え花屋を訪れている若い男女2人のストーキングに勤しんでいたところ、悶々としているうちにユナ?に花を差し出されてしまうダーゴン…。

「いや、本当…楽しいなって……ありがとう」

ケンゴが平和な世界に喜びを見出していたその一方で、GUTS-SELECTでも新入隊員募集ポスターのモデルに選ばれたテッシン、宝くじに当選したヒマリ、住みたい部屋が見つかったマルゥル、宝の地図を手に入れたイグニスと次々に幸せが舞い込んできており、光も闇も関係なくそれぞれが夢のような時間を体験していた。


GUTS-SELECT内でバブルが発生し一騒ぎあったことから隊長にもサプライズが知れ渡ったところで、超古代闇怪獣ゴルバーⅡが街に出現しGUTS-SELECTは撃退に向かう……も奪われた笑顔、モデル撮影のスタジオ、宝くじ監禁のための銀行、木造二階建のアパート……あらゆる煩悩がチラつくことからいつも以上に連携を乱してしまい、ブートアップ!したマルチトリガーも火星出現時より強化されたゴルバーⅡに大苦戦。

明らかに異常な状態でGUTS-SELECTが乱れている姿をコミカルに演出しているのですが、普段真面目に仕事してる印象が限りなく薄いので、ギャグになりません。

一本調子な芝居を強いられるヒマリ隊員を特に崩しに来たのは役者への配慮も感じられますが、「大声を上げてファルコンを墜落させる」はいつものことなのでパニックになっているという描写に面白みがいまいち足りてないのも本作らしい残念な部分で、エピソード単位で仕込みが上手な田口監督でももはや手遅れな様子。


ゴルバー襲来によって、せっかく手に入りかけた夢の切符を次々と失ったナースデッセイ内、現場でいきなりブートアップ?ごっこを始めたアキト、それらが重なり遂にパニックに陥る隊長、とGUTS-SELECTで徐々にカオスが侵食していく中、ナースデッセイで起きた振動で正気に戻ったイグニス(前回拘束されてから手錠はされてるものの、出入り自由なガバガバセキュリティの独房イン)は宝の地図、に見えていたチラシをユナに差し出す。

「何者かの…精神攻撃を受けていたみたいだ」

GUTS-SELECTの見ていた夢は全て幻と消え、隊長のアジア本部総司令官就任の辞令も健康診断の結果と変わってしまい……ってイグニスがいなかったら集団幻覚を見ていたということで全員病院送りにされるところだったのでは。

同じ頃ゴルバーの尻尾首絞めを受け、頭の中で走馬灯が流れ始めていたケンゴも真実を悟り、"笑顔溢れる平和な世界が偽りであった"という事実がケンゴに重く突き刺さるのは要所要所に挟まれた光の演出、演じる寺坂さんの芝居も相まって印象的に仕上がりました。

一歩間違えれば、めちゃくちゃ危ないやつになるので病院送(ry

 


やっと平常運行に戻ったGUTS-SELECTの援護を受けトリニティキーをブートアップ!したトリガーは形勢逆転、エタニティボンバーでゴルバーⅡを爆殺し、トリニティが強化形態としての存在感をしっかりと発揮して活躍するのはヒーローフィクションとしてメリハリが効いてて良かったです。

そのトリガーの勝利を喜ぶナースデッセイ内で、有頂天から地獄に叩き落とされながらも「次は負けねぇ…!」と筋肉研鑽に意気込むテッシンの前向きさが語られ(多分アドリブっぽい)、細かいながらやはり本作にはこういう細かい積み重ねが足りないなと思う所存。

ユナの気付によってGUTS-SELECTは平穏を取り戻し、その援護で勝利を収め飛び立ったトリガーを見つめる謎の男は左胸に炎を燃やしていた…でつづく。

 

 

メインを務めた作品以外では、なんと『ギンガS』以来にサブでの再登板となった田口監督渾身のパニックコメディー回。

何者かの干渉によって夢と現実の狭間をひた走るキャラクターの動向が肝ということで、あえて繋がりを保たずに場面を繋げ、夢と現実を曖昧にする構成はさすがの手腕でした。

コロナ禍の影響で人数が多い場面での撮影は未だ厳しい段階かと思われるのですが、同じ場面に人物を置かずともそれぞれのキャラクター性を引き出し、愛嬌に繋げる目配りとアイデアにも改めて驚かされます。


反面、GUTS-SELECTの動向がコミカルに描かれ過ぎると地球を守る防衛隊としての威厳と使命感が損なわれてしまい、根本的にキャラクターの好感度が下がってしまうのは本作の設定段階からの初期不良と言えます。

今回はそれを承知であえて踏み切った感はありますが、比較的真面目に職務に励んでいたはずのGUTS-SELECTが少し崩れただけでものすごく無能な集団に見えてしまったのは、これまで常に緊張しっ放しで弛む瞬間が二の次にされたことで「やる時はやる」という部分があまり見えてこない部分にあるのかなと。

だったらミッション中以外は仕事サボってりゃいいのかと言われたらそうではないのですが、「この人たちは普段何を考えて地球を守っているんだろう?」という部分が見えてこないと感情移入が難しく、かと言って隊員1人ごとに主役回を用意できるほど話数も無い現状は想像以上に厳しい環境なのかもしれません。

唯一の手段として先程触れたテッシン隊員の「次は負けねぇ…!」といった細かいシーンを入れ込むというやり方もあるのですが、もう既に2クール目の後半部分に差し掛かってきているため作品の評価をひっくり返すレベルの軌道修正は不可能に近く、最後のシーンに一言入れるかまたは無言で終わらせるか、のどちらかでひたすら後者を選んできた本作の積み重ね不足が重く作劇にのしかかってきております。


また今回コメディー寄りの単発回と思いきや、またも外的要因が干渉してくるストーリーで2話連続となっており、後半に入ってからは毎回2話完結という流れはさすがに食傷気味。

多くのイベント消化が絡み、制作側としては縦軸中心の作劇っぽい認識の本作ですが、だとしたら作品を彩る細かいキャラ描写を何故放っておいたまま進んでしまったのか。

田口監督の目配りも効いてて、ここ数話の中では比較的面白いエピソードでしたが、前作で栄華を誇ったキャラ描写に関するノウハウが蓄積されておらず(そう見えない)、今後の制作体制に疑問は積もっていく一方です。

 

 

次回、悪魔の再来。