「騎士竜戦隊リュウソウジャー」2回目になります。
色々考えた末にひとまとめにしようと思ってたスタッフ関係はバラして書いていこうと思います。
参考図書:
・「リュウソウワールドへ行こう!」
・「トリプルレッドが出会ったら」
・東映特撮ファンクラブ会員限定
「騎士竜戦隊リュウソウジャーテレビシリーズ完結記念 東映プロデューサースペシャル"ケボーン!"鼎談」
・「騎士竜戦隊リュウソウジャー公式完全読本」
今回のポイント:
②スタッフたちの動き(監督編)
「リュウソウジャー」には多くのスタッフたちが携わっております。
スタッフといっても色々な種類があるわけですが、ここでは監督・脚本・アクションスタッフに絞って書いていきたいと思います。
今回は監督編です。
本作演出陣は戦隊初参加にして初パイロット演出の上堀内佳寿也監督を始め、特撮初参加の柏木宏紀監督、脚本兼任のたかひろや監督など新しい勢力が拡大されつつありました。
その中で前作から引き続き中澤祥次郎監督、渡辺勝也監督、加藤弘之監督や「獣電戦隊キョウリュウジャー」以来に本編参加した坂本浩一監督などお馴染みのメンバーもローテを担っておりました。
ローテは基本、上堀内→坂本→柏木→加藤の4人体制でした。
年間通してローテを守ったのは坂本監督と加藤監督の2人。
序盤から参加していた中澤監督は「仮面ライダーゼロワン」参加により、渡辺監督はVS冬映画参加により2クール目で離脱。
たか監督も2話だけのスポット参加でした。
一人ひとり見ていきましょう。
まず上堀内監督ですが、パイロット演出は初ということで少し要領を得てない印象はありました。
特徴的な間から放たれる独特な空気は健在です。
パイロット演出してから夏映画の撮影に行ってしまったので、本編で次に演出したのは19話という恐ろしい開きっぷりです。
前作の杉原輝昭監督はパイロット後夏映画参加するまでに6本担当していたので、どうしてもフットワークが重いと感じてしまいます。
丸山Pが掲げていた「今年は変える」という信念のもとに新しさを追い求める演出ラインは良かったのですが、正直、戦隊には向いていないのではという思いは消せませんでした…。
好きな回は第19話「進撃のティラミーゴ」です。
ホームランを打つティラミーゴ、プールを泳ぎモサレックスと交信するカナロがお気に入りです。
最多演出は坂本監督の11本。
メイン監督を務めた作品こそ最多はよくありますが、サブとしてローテを守り最多演出というのは坂本監督としてはかなり珍しいと思います。
坂本監督の参加により役者がアクションに目覚めたようで、役者のインタビューでもアクションに関する言及が多い印象です。
大胆な演出によって本作後半の方向性を大きく変えた立役者とも言えます。
担当回は概ね良回なのですが、特に好きな回は第31話「空からのメロディ」です。
ヒエヒエソウルとヨクリュウオーの初登場回であり、コウのリュウソウ族らしいポジティブ思考がいい感じです。
戦隊には不可欠の加藤監督。
初担当は11話と1クールギリギリでしたが、そこからは43話まで抜けることなく一年間ローテに参加しておりました。
主に新しい騎士竜やロボの登場エピソードを演出していた印象です。
脚本家の山岡氏が慣れてきた辺りでの初参加ということもあってか、担当回は抜群の安定感を見せておりました。
好きな回は第34話「宇宙凶竜現る!」第35話「地球最大の決戦」の前後編。
ウルトラシリーズファンである加藤荒川タッグによる小ネタの数々、最強ロボ・キングキシリュウオー初登場でスケールの大きい演出が見られます。
1時間ドラマで丸山Pと仕事していた縁で特撮初参加となった柏木監督。
担当回においては合成などに戸惑いを感じられたものの、アクションに見応えのある回が多かったのは見ててワクワクしました。
今後も東映特撮での活躍を見てみたい監督です。
好きな回は第37話「誕生!最恐タッグ」
丸山Pのアイデアでティラミーゴに乗るマックスリュウソウレッドがバンバンアクションする回です。
7本演出のベテラン渡辺監督。丸山・山岡両氏の「今年は変える」という空気に少し戸惑いが感じられました。
第5話での治療薬が無い毒、第14話での水商売など今まで扱うことの無かった題材をなるべくマイルドに解釈して落とし込んでいたのはさすがの仕事。
好きな回は第5話「地獄の番犬」
ブラックの活躍が大いに描かれており、夕焼けでのキシリュウオーミルニードルの相撲アクションは見どころです。
また「ルパパト」に参加してたことで冬のVS映画も担当しており、脚本が前作メインライターの香村純子氏(荒川稔久氏が連名)が書いていたこともあり、こちらも好演出でした。
2クール目で離脱したもののサブパイロット監督として立ち上がりに携わった中澤監督。
ティラミーゴを気に入っていたようで、インタビューでは可愛いと連呼しておりました。
そのインタビューですがとても素っ気なく回答されており、あまり深く関われなかったのかなという印象だったのが少し残念です。
あと諸田敏監督並に雨や水落ちが好きな監督だと個人的には思います。
最後に、脚本家として呼ばれ監督としても活動してることから担当回を設けられたたかひろや氏。
ツヨソウルブラックのジャンプキックやメラメラソウル強竜装からマックスチェンジするレッドなど、アクションの撮り方が面白く思わぬ収穫でした。
また機会があれば演出を見たいです。
上記のように新旧入り乱れる混沌とした布陣になりました。
丸山P主導で新しい人材が採用された中でも、坂本監督や加藤監督が経験値高めの監督が入ることで安定感を保っておりました。
しかしそれは後半においての話で、前半は初参加の脚本家が多かったことやローテの安定しない演出陣で苦労してた印象です。
特に筆者お気に入りの中澤祥次郎監督については、前述の通りあまり熱を感じられなかったのが残念でした。
演出にやる気が無かったということではなくて、関わった回数が少なかったことで自身のアイデアが詰めきれなかったことが原因なのでは、と勝手に考えております。
現在ライダーの方で演出をしておりますが、また戦隊での中澤監督が見たいです。
本作の演出に関して前回も言いましたが、演出陣全体として本作のコンセプトを掴めきれていないという空気を感じました。
丸山Pの目指した"王道"は良くも悪くもどこかズレており、渡辺監督も「そう来るか!?」と驚きがあったとのことなので、熟練のスタッフも新しいスタッフも戸惑いながら製作していたのでしょう。
その中で王道と変化球のバランスを調整していった後半は、評価の高い印象です。
重ね重ね言いますが、坂本監督はアクションとキャラ描写をとことんまでに引き出す演出をしており、本作復調に多大なる貢献をしております。
上堀内監督は33話での演出が話題となりましたが、「最後のビデオメッセージのシーンは、撮る前に絶対ナダを皆に会わせないようにしてた」などこだわりが強く、いわゆる"エモい"演出を多く作り出しておりました。
個人的には演出にこだわることも結構なのですが、メイン監督としてもう少し本数をこなして引き出しを増やしてほしかったかなとも思います。
それとライダーでは気にならなかったのですが、戦隊の演出において"タメ"というかメリハリが無かったのもマイナスポイントでした。
例を挙げると第1話においてのWレッド登場(変身済み)は良いのですが、マイナソー出現によりコウが走りながら初変身を見せてしまいます。
初変身が、唐突に森を走りながらです。
その足は村を守るために向かっているものではあるのですが、その村の描写もまともに描かれていない(またはカットされた)ので全く劇的ではありません。
その次のシーンでも既に変身してるブルーとピンクが、何の説明も無しにいきなり竜装している姿で登場など、ギミックの使い方が下手です。
変身後はマスターたちが剣とチェンジャー以外全く同じ姿だったので差別化の意味もあったのでしょうが(インタビューにて丸山Pがマスターたちを変身させることは現場から大反対されたと語っており、監督のせいではない可能性は高いです)。
しかしこれは上堀内監督だけの責任ではありません。
Wレッド登場を決めたのは丸山・山岡両氏なので、初パイロットを務める上堀内監督に難題を与え過ぎたと思います。
インタビューにて「Wレッドがいきなり登場したらインパクトありますよね!?」と語っていたのですが、あなたたち前作見ました?
自分たちの強い主張は初めての若い監督に渡すバトンでは無かったですし、若手を育てるうえでの試練だと捉えるのならば崖っぷちの戦隊シリーズでやることではない。
上堀内監督にとって本作が大きなステップになったとは思いますが、シリーズとしては何か大事なものを失くしてしまったような気分です。
また否定的な意見が出てしまいましたが、演出陣はいつ抜けるかも分からない状況で全力を尽くして面白くしてくれたと思います。
良くも悪くも安定しないコンセプトに引き摺られてしまった監督もいれば、独自の道を見出し雰囲気を変えてくれた監督もいます。
どの作品にだって合う合わないはあると思うので、一つだけを見て判断はしたくないです。
上堀内監督は戦隊向いてないのでは?と前述しましたが、あくまで本作を見た結果論でしかなく、少し落ち着いた時にまた演出を見たいなとは思います。
また本作が初参加になった柏木監督やたか監督の演出も面白かったので、また機会があれば是非参加してほしいです。
これを機会に、皆さまも少しだけOPの最後に出てくる監督名に注目してみてはいかがでしょうか?
作品の方向性を映像で表現する職人たちの名前が堂々と表示されるので。
以上、監督編でした。
次回に続きます。