うらひろの日記

その場で思ったこと、好きなもの、書いてみます。

生命のヒーロー

 

※本文はあくまで劇中設定の羅列ではなく個人の感想を書いてるものであり、ネタバレや不快感を覚える内容もあるかもしれませんので、事前にご了承ください。

 

 

 

 

スーパー戦隊勝手にまとめ

第12作目

超獣戦隊ライブマン(1988〜1989)

 

あらすじ:

「友よ。君たちは何故、悪魔に魂を売ったのか」

2年前、学友を手にかけアカデミア島から去った3人の天才。

彼らは、選ばれた天才による支配を企む武装頭脳軍ボルトの博士となり、襲撃者としてアカデミア島に帰ってきた。

そんな悪意に立ち向かったのは、同じく科学アカデミアの生徒であり、2年前生命を奪われた友の仇討ちを誓う正義の科学者たちであった。

かつての友を相手に、生命を守るヒーローの青春を賭けた戦いが始まる。

 

登場人物:

ライブマン

天宮勇介/レッドファルコン

リーゼントヘアーと真っ赤なシャツが特徴的なライブマンのリーダー。

熱血漢で情に厚く、子どもとも交流が多い好青年。

科学アカデミアの中で成績は下の方ではあるものの、ライブクーガーの作成などに携わるなど科学者としては意外としっかりしてる。

剣史とは夢を語り合った仲でもあり、最も交流が深かった。

序盤はやや頼りない面も目立ったが、後半は鉄也と純一の加入もありリーダーらしさを発揮していた。

変身後の武器はファルコンソード(中盤からは強化版のファルコンセイバー)であり、必殺技ファルコンブレイクは多くの敵を葬ってきた。

 

岬めぐみ/ブルードルフィン

芯が強くしっかり者の紅一点。

男2人と違い成績も優秀で、清く正しく料理も上手なミスパーフェクト。

人間の心の奥底にある優しさを信じており、その想いはケンプやビアスにすら向けられたことも。

終盤、髪にパーマをかけた影響で何だか微妙な感じになったのはここだけの話。

父に弓道を叩き込まれていることから、変身後はドルフィンアローという弓矢で戦う。

 

大原丈/イエローライオン

勇介と同じくリーゼントヘアーの熱血漢。

しかし勇介以上に情に厚く、序盤は仇討ちを誓っていながらも非情になりきれずにいた。

スケボーが得意であり、それを活かしてピザの宅配などを行ったことも。

かつての豪と交流が深く、彼が人間に戻ろうとしてる姿を見た際に最も嬉しそうなリアクションを見せていた。

変身後はガントレット型の武器ライオンパンチ(中盤でライオンバズーカに強化)を使う。

他にも、ジェットスケボーを利用したトリッキーな戦法も得意としている。

 

矢野鉄也/ブラックバイソン

剣史たちによって殺められた矢野卓二の弟。

卓二の遺した設計図からバイソンライナーを完成させ、復讐のためボルトに立ちはだかった新たな戦士の一人。

無骨でやや怒りっぽいところがあり、ライブマン加入直後はちょくちょく勇介たちに反発していた。 しかし根は真面目で目下の者にも優しく、純一を弟のように可愛がってる。

本人はボクサーであるが、変身後はバイソンロッドという伸縮自在・エネルギー波を出せる槍型の武器を使う。

 

相川純一/グリーンサイ

卓二と同じように生命を落とした相川麻里の弟。

力自慢のラガーマンであるものの気が小さく、鉄也の後ろに隠れがちな最年少属性。

自身が母体となって誕生したベガベビーとの出会いと別れから、生命を守る戦士となることに強い決意を抱くことになる。

変身後は持ち前のパワーと、サイカッターというブーメランを使用して悪に立ち向かう。

 

科学アカデミア関係者

矢野卓二

勇介たち3人の学友であり、心優しい青年。

スペースアカデミア号に乗るため宇宙空間でも活動できるスーツを作成していたが、ボルトに魂を売った剣史たちの凶弾に倒れる。

開発中のスーツは勇介たちに受け継がれ、後のライブスーツの基となった。

生前に構想していたライブクーガーやバイソンライナーの設計図を遺しており、生命を落としてもなおライブマンを支えていた。

 

相川麻理

剣史たちの凶弾から勇介たちを庇い倒れたもう一人の学友であり、女性同士ということでめぐみと特に仲が良かった。

卓二と共にスーツの作成に尽力していた。

穏やかな性格であり、その人柄は弟の純一に色濃く受け継がれている。

卓二に比べてエピソードが少なく、若干不遇な扱い。

 

星博士

科学アカデミアの教授。

ボルトによるアカデミア島襲撃の際に、妊婦を庇い瓦礫の下敷きになり絶命。

しかし2年前、卓二と麻理が倒れた瞬間を目撃していたことから勇介たちの2年間を陰から支え、彼らにグラントータスとコロン、ライブロボへの合体プログラムを託した。

 

コロン

星博士が勇介たちをサポートするために制作していた女性型ロボット。

グラントータスに常駐しデータ解析などを行う傍ら、ライブマンのピンチにバイクやらライブクーガーやら時にはライブロボにも乗って助っ人に来るアグレッシブさを持つ。

自身がロボットであり、人間の気持ちを理解できない時があることに戸惑いを覚えたりもするが、生命を守る戦士の一人として勇介たちと共に悪に立ち向かう。

 

武装頭脳軍ボルト

大教授ビアス

天才的な頭脳による支配を目論むボルトの首領にして、これまでに多くの天才を従えてきた至高の天才。

失敗や敗北には厳しい姿勢を取るが、自身に強い忠誠を誓い他者を蹴落としてまで這い上がろうとする部下に優しい声を掛けて励ますなど、底知れぬカリスマ性を秘めている。

物語が進むにつれ、ケンプたちを最強の天才に育てようとしていた目的は、"千点頭脳"を欲していたことだと明らかになっていく。

 

ドクターケンプ/月形剣史

かつての学友であった卓二と麻理を手にかけ、ボルトに寝返った3人組のリーダー格。

科学アカデミア時代からトップクラスの成績を修める天才であったが、少年時代からプライドが高く他者を見下す態度が際立っていた。

3人の中で最もビアスに心酔している。

勇介とはアカデミア時代から夢を語り合うライバルのような存在であり、敵同士になってからも剣を交えることが多い。

自らを美獣ケンプという人外の姿に改造しており、後にパワーアップして恐獣ケンプとなる。

 

ドクターマゼンダ/仙田ルイ

ボルトに寝返った天才3人組の紅一点。

ケンプ同様、天才であることで他人を見下しており、特に自分に言いよる男に対しては厳しい態度を見せる。

アカデミア時代からめぐみをライバル視していた。

自身を機械で改造しており、身体のあちこちから銃火器を出して戦う。

ボルトに魂を売ったものの、人間を捨てることに躊躇いがあったり、ビアスの行動に不信感を覚えたりするなど、ケンプとの違いが明確に描かれていく。

 

ドクターオブラー/尾村豪

ボルトに寝返った3人組の一人。

他2人に比べ成績も芳しくなく、病弱な身体であったが、オブラーとして人間の姿を捨てることで強靭な肉体を得る。

人間だった時の弱く優しすぎる姿を知っている丈に対し、強い敵対心を抱いている。

中盤ビアスに見限られ、生命を狙われるが勇介たちの手助けと母親の声によって人間の姿に戻り、終盤は勇介たちのサポーターとして尽力することに。

3人の中で唯一ビアスの秘密を目撃していた。

 

ドクターアシュラ/毒島嵐

暗黒街でトップになることを目指す、暴力集団のボス。

足し算ができないレベルに学が無く、科学アカデミア出身の勇介たちの学歴に強いコンプレックスを抱いている。

頭脳獣に噛みつくなどの強靭な肉体と野性味をビアスに見出され、個別指導によってドクターアシュラとなった。

ボルトに加入してからも人間味が強く、突飛な発想がどこか憎めない。

 

ギルドス、ブッチー

ビアスの名を聞き、弟子入りしようと宇宙からやってきた2人の宇宙人。

出自・加入タイミングが別なものの、一緒くたにされることが多い不遇な幹部。

…と思いきや、彼らにはビアスの計画に欠かせない重要な使命が秘められていた。

 

ガードノイド・ガッシュ

ビアスに仕える鋼鉄の戦士。

頭脳獣を巨大化させる役割の他、ビアスから直接指示を受け隠密活動することもある。

幹部勢の中で唯一ビアスからの信頼を得ており、また戦闘力も非常に高いことからボルトの最終防衛ラインのような存在になっている。

 

ポイント:

当時の「バトルフィーバーJ」を初代とするスーパー戦隊シリーズの第10作目にあたる本作。

(当時視点として)長く続いたシリーズにおけるマンネリ化を避けるために、本作にもたらされたテーマは「生命を守るヒーロー」「青春」という普遍的なものだけに留まらず、「他者を蹴落とすことで人の上に立つ"学歴社会への警鐘"」「使い方次第で正義にも悪にもなる"科学の是非"」といった非常に刺激的なものでした。

そのため、本作にはこれまでに試験的に導入されていた異色な要素が、ごく平然と顔を並べるかつてない意欲作となっております。

 

まず始めに、基本設定がこれまでと大きく異なります。

ボルトとライブマンの対立構造は、定番プロットといえる「世界の支配を企む侵略者にヒーローが立ち向かう」という構図こそ保っているものの、そこに"かつての学友たちの対決"という要素が放り込まれ、学び舎を共にした者同士が衝突することで"自分が学んだことをどのように活かすか"という問いを炙り出すことに成功しております。

 

ライブマンは戦いに向かうきっかけこそ復讐心から来ているものの、正義と平和を守るために自らの頭脳を使っている反面、ボルトに寝返った3人は自身が一番の天才だと他者を見下し、優れた頭脳を見せつけるために人々を苦しめているという構図が、ヒーローと悪役が戦う動機として、これ以上ない説得力を生み出しているのです。

 

更に「太陽戦隊サンバルカン」以来のスタートが3人戦隊となったことで、対立構造を3対3と分かりやすくプッシュでき、個々の関係性も掘り下げられたことも作劇にプラスに作用しました。

中盤から双方に追加メンバーが発生してはいるものの、科学を下地にした正義と悪の対立構造は揺らぐことなく本作を支えています。

 

その悪役である武装頭脳軍ボルトも、大変魅力に溢れかえっております。

「地球の支配を企み襲来してきた侵略者」という部分はありふれたものでありながら、そこに「優れた天才による支配」「幹部たちは大教授ビアスの教えの下、競い合いながら自身を高める」というオンリーワンの要素を掛け合わせ、後のシリーズにも滅多に見られないオリジナリティを形成。

 

そしてその最終到達地点は掲げているものとはまた別のところにあるのも見どころ。

シリーズにおいて「ヒーローに敗れ、次第に戦力を削られ終盤には幹部が次々に脱落していく」という悪役像は不動のものであり、他者を傷つける"悪の悪たる所以"という面における因果応報として、一つのお約束となっていました。

しかしボルト=ビアスにとってそれは計画通りでしかなく、組織の崩壊が悪の親玉の野望成就に繋がるという不思議な完成度を発揮します。

どういうことかというと、それは物語のとても重要なネタバレになるので是非とも本作を見ていただきたいところ。

 

他にも本作の特徴といえば、やはり追加戦士と2号ロボとのスーパー合体の存在にも触れなければなりません。

当初は3人体制でスタートしたライブマンですが、中盤に卓二と麻理それぞれの弟である鉄也と純一が登場し、彼らを新しい仲間として受け入れます。

そして彼らが所持していた2号ロボ・ライブボクサーが1号ロボ・ライブロボと合体し、スーパーライブロボになるというシリーズ初の試みが見られました。

2人の加入には諸々の製作の事情があったのかと思われますが、結果的に「完全同フォーマットの追加戦士」という、今後のシリーズにおいても類を見ないオンリーワン要素に繋がったと思います。

 

演出面でも、今までに見られない試みが展開されました。

この時期の戦隊シリーズは25分枠の番組であり、正味20分の時間でストーリーを組み立てドラマも充実させるという厳しいオーダーがありました。

そこで演出陣が考えたことは、変身バンクの廃止。

変身バンクを無くすことで時間短縮に繋がり、また単独変身がそのまま個人名乗りに変わるという転身っぷりを発揮しました。

そしてバンク廃止の代わりに「変身ポーズを決めた直後、光の球となって相手に向かいながらそのまま戦闘が始まる」というシームレスさを生み出し、物語のテンポを削がない工夫も見られました。

 

もう一つ演出面として、十字架や磔といったキリストを意識したような映像が目立った点。

東映作品の十八番ともいえる「十字架に磔にされる」という行為に、物語が応えたといったような最終回は鳥肌が立たずにはいられませんでした。

というのも、前作「光戦隊マスクマン」同様、演出のほとんどは長石多可男・東條昭平の両監督が担っており、非常に統制の取れた演出プランがあったことも大きかったと思われます。

 

そんな作品を彩ったキャラ描写についてですが、前述の対立構造により各キャラの因縁付けは鮮やかに進むことになります。

かつて夢を語り合った勇介とケンプ、成績優秀な紅一点めぐみとマゼンダ、過去に交流を持っていた丈とオブラー。

またキャラの接続を特定の個人に限定せず、剣史とめぐみ、ルイと丈、豪と勇介といったあらゆる組み合わせで掘り下げを行っていき、キャラクターの視野を広げることができました。

敵味方双方において追加メンバーがあった本作ですが、短い出番ながら印象的な姿を見せており、その中でギルドスとブッチーは割りを食ったようなものの、最期に特大の爆弾を放って散っていったことから、決して無駄なキャラでは無かったのが良かった点です。

 

そんなキャラにおいて最も良かったのは、やはりドクターケンプ!!

演じる広瀬匠氏の2枚目ぶりもさることながら、他者を見下し自分こそが一番の天才だと嘯くエリートと追い詰められて狼狽する小物っぷりを行き来するジェットコースターのようなキャラクターは、魅力たっぷり。

序盤から全開するセリフ回しの面白さは、本作の特色と言っても過言ではありません。

「こんな下品な言葉は使いたくないが、バカは死ななきゃ治らんようだな!!」

「改めて挨拶しよう、仇に会った気分はどうかな?」

「こういう知性を感じさせない言葉は言いたくないが……くたばれ!

 

 

おすすめエピソード:

第23話「コンマ1秒に賭けた命」

(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)

剣技を得意とする勇介に立ちはだかるケンヅノー。

レッドを超えるスピードを持つ頭脳獣に対し、コロンは計算で超えることを提案するが、完膚なきまでに叩きのめされた勇介は反発。

またも出現したケンヅノーに勇介、そしてコロンが取った行動とは…。

ガオレンジャーVSスーパー戦隊」でピックアップされたエピソードであり、勇介たちとコロンの関係を掘り下げた名作回。

前述のケンプの立ち回りも見どころになります。

「捨て身でぶつかることだ…あの剣を恐れぬことだ……!!」

 

第28話「巨大ギガボルトの挑戦」

第29話「復讐のライブボクサー」

第30話「今ここに5人の戦士が」

(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)

ビアスが密かに進めてきた"ギガボルト計画"によって誕生したギガボルトロボに敗北し、空中磔の刑にされてしまうライブロボ。

バイソンの鉄=矢野鉄也とその弟分である相川純一が現れ、ライブボクサーを駆りボルトに挑む。

復讐に逸る鉄也と純一であったが勇介たちの想いに触れ、生命を守るための戦士・ライブマンになることを選ぶ。

追加戦士・スーパー合体の初登場にして、本作のテーマを光らせた名エピソード。

5人に増えた強敵に対するケンプの反応も面白かったですが、今回は純一の印象的だったこのセリフを。

「頑張るよ、もう決して弱音を吐かない!」

 

第37話「16歳ケンプ恐獣変身!!」

(監督:長石多可男 脚本:曽田博久)

"千点頭脳"を求めるビアスの採点により、350点の最下位とされてしまったケンプ。

追い詰められたケンプはかねてより計画していた恐獣変身計画を実行に移すが、邪魔が入り途中で強化作戦が止まり、なんと"16歳の月形剣史"へと転生してしまう。

「若い頃の彼なら、まだ人間の心を取り戻せるかもしれない」そう考えためぐみは同級生のフリをして剣史と交流を持とうとするが…。

ライブマンとケンプの決定的な違いが明らかになると同時に、悪の心を持った者にも救済が与えられるかもしれないというメッセージが、終盤の展開においてとても重要になる回。

真冬の海で全裸の剣史、とうとうセーラー服を着ためぐみ、めぐみに心を開いたと思った剣史の目に入ったものは…など映像・脚本ともに最高クオリティと呼べるエピソードです。

「どうして?どうして素直にありがとうって言えないの?」

 

 

5段階評価:

☆☆☆☆☆ 5/5

80年代後半の作品にして、多くの新機軸を生み出した意欲作。

前述の通り、45年続いているシリーズの初期に当たる作品でありながら他に類を見ない異色な要素がてんこ盛りであり、30年後の「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」に近いものを感じ取れます。

余談ですが「ルパパト」メインライターの香村純子氏は「海賊戦隊ゴーカイジャー」で書きたいレジェンド回を本作と言っていた程のファンであり(しかも実現してる)、VSという構造において本作を意識してる部分はあったかと思われます。

 

長石・東條両監督の安定かつ連携の取れた好演出の数々、そしてメインライター曽田博久氏の切れ味鋭いシナリオが交わり傑作と化した本作。

是非とも見ていただきたい作品です。

 

また、戦隊シリーズの演出を支えてきた山田稔監督が最後に携わった作品になります。

超電子バイオマン」「電撃戦隊チェンジマン」では最多演出を務め、本作でも安定した活躍ぶりを見せて大変面白かったです。

 

 

以上、長くなりましたがライブマン感想でした。

 

「俺たちはな、生きとし生けるものを守る戦士ッ!!」

 

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